1136.鍛錬篇:得意を見つける
今回は「得意」を見つけることについてです。
小説投稿サイトで人気があるから「剣と魔法のファンタジー」を書こう。
それであなたの強みは出せるでしょうか。
あなたが得意とするのは「剣と魔法のファンタジー」ですか。
得意を見つける
小説投稿サイトの多くは「剣と魔法のファンタジー」で成り立っています。
だから掲載するなら「剣と魔法のファンタジー」だ。というのは短絡的です。
そもそも「剣と魔法のファンタジー」を書くあなたの適性がわかりません。
苦労して書いた「剣と魔法のファンタジー」がまったくブックマークされない事態も発生します。
好きで書いていますか
せっかく苦労して書いた、小説投稿サイトで一番人気の「剣と魔法のファンタジー」なのに、読み手がブックマークしてくれない。よくあることです。
身もふたもない言い方をします。「あなたに剣と魔法のファンタジーを書く適性がなかった」のです。
そもそもあなたは「剣と魔法のファンタジー」を心の底から好きなのでしょうか。
小説投稿サイトで人気があるから、「小説賞・新人賞」を獲りやすいから、「紙の書籍」化されやすいから。そんな理由で「剣と魔法のファンタジー」を選んでいませんか。
残念ですが、そのような方はいくら頑張っても、小説投稿サイトでトップランカーになれないし、大賞も獲れないし、「紙の書籍」化にかすりもしないのです。
小説投稿サイトで「剣と魔法のファンタジー」を数多く読んでいる方から見ても、あなたの作品にワクワク・ハラハラ・ドキドキを感じない。これでは適性がないと言わざるをえません。
「剣と魔法のファンタジー」を心の底から好きで、読み手に伝えたくて仕方ない物語がある。だから「剣と魔法のファンタジー」を書く。というのが適性のある書き手です。
小説投稿サイトで人気があるから、ではなく、あなたが書きたいから書くのでなければけっして面白い物語にはなりません。
読み手が楽しんでくれる作品なんて、「プロ」でもなかなか書けないのです。
「プロ」は自分の書きたい物語を書かせてもらえない。所属する出版社レーベルから「こういうものを書いて」と言われて、思い入れがなくてもより多く売れる作品に仕上げる、いわば「職工」です。
「剣と魔法のファンタジー」で大賞を授かったのなら、出版社レーベルから求められるのは「剣と魔法のファンタジー」になります。もしあなたが「剣と魔法のファンタジー」なんて好きじゃないのに、なんて思っていたらどうなるか。いつまで経っても出版社レーベルが求めるレベルの作品は書けません。だって適性がないのですから。たまさか受賞してしまっただけで、本当に書きたいものではなかった。そんな調子で「プロ」をやれると思いますか。
知識のあるものを書く
「小説賞・新人賞」を獲りたくて「剣と魔法のファンタジー」を書いているけど、本当に書きたいのは「歴史」ものなんだ。そういう方は意外と多いのではないでしょうか。
それなら断然「歴史」ものを書くべきです。
まず書いていて楽しい。書きたくて仕方なかったものを書けるわけですから、楽しくないはずがありません。賞を獲るために書きたくもない「剣と魔法のファンタジー」を書くくらいなら、需要が少なくても「歴史」ものを書くべきです。
応募できる賞の数は少なくなるでしょう。しかしあなたが好きなものを書けるのですから、嫌々書いた「剣と魔法のファンタジー」よりも断然面白い作品になるはずです。
さらに限られた「小説賞・新人賞」で応募者も少ないのですから、大賞を獲りやすい。少なくとも入賞するのは「剣と魔法のファンタジー」よりも簡単でしょう。
そこで揉まれれば必然的に筆力もつきます。より面白い「歴史」ものが書けるようになるのです。
今のライトノベルは「剣と魔法のファンタジー」が大半なのは事実です。
小説投稿サイトで人気があるのも「剣と魔法のファンタジー」、開催されている「小説賞・新人賞」も「剣と魔法のファンタジー」の応募できる賞がたくさん、「紙の書籍」化される作品も多くは「剣と魔法のファンタジー」。
冷静に眺めると「剣と魔法のファンタジー」が書けなければ「プロ」になれないと錯覚します。冷静になればなるほど錯覚するのです。
そもそも「歴史」ものの「小説賞・新人賞」は年に一回開かれればよいほうでしょう。それに比べて「剣と魔法のファンタジー」はひとつの小説投稿サイトでも年に二、三回は開かれますし、ほとんどの小説投稿サイトで開催されています。つまりチャンスは何十倍もある。ように見えます。しかし「歴史」ものの何十倍もの作品が応募しているのですから、たとえ上位一割に残れたとしても、入賞できるかわかりません。「歴史」ものなら上位一割に残れればほぼ入賞できます。
どうですか。機会は多いけれど、上位一割に残れても入賞できないよりも、入賞できるほうがよさそうではありませんか。
しかも入賞するためにあまり好きではない「剣と魔法のファンタジー」を書くストレスがない。好きな「歴史」ものが書けるだけでワクワクしてしまう。メンタル的にも優位ですよね。
「小説賞・新人賞」へ「剣と魔法のファンタジー」が殺到するのは、「歴史」ものを書くだけの「知識」がないからです。
「剣と魔法のファンタジー」は世界観そのものを書き手が好きなように設定できます。だから書き手は「神」であり、その作品のすべてを定める「決定権者」なのです。これならなにかの「知識」がなくても小説が書けます。
「推理」ものは奇抜なトリックを思いつくだけの「知識」が問われますし、「歴史」ものなら何年にどんな事件が起こったのかの「知識」を求められるのです。
一見書きやすそうな「日常」ものは現実世界を生きる者たちの価値観を知らなければ浮いてしまいます。「コメディ」も「お笑い」の仕組みに詳しくなければ書きようがないのです。「SF」だって科学技術の先端に詳しくなければ、ありきたりな世界観にしかなりません。
つまり「剣と魔法のファンタジー」以外は、なにがしかの「知識」を要求されるのです。
それだけの「知識」を持っているのなら、そのジャンルを書きましょう。
「知識」もなくて小説を書けない人たちが数多く応募する「剣と魔法のファンタジー」では、どんぐりの背比べにしかなりません。
「知識」があるのならそれを有効利用しない手はないのです。
「歴史」ものを書けるだけの「知識」があるのでしたら、勝負するのは断然「歴史」ものにしましょう。
吉川英治氏だって「歴史」ものの「知識」があったから、「歴史」ものを書いたのです。「知識」を有効活用しました。
芥川龍之介氏は「歴史」の「知識」はほとんどなかったのでしょう。彼の書く短編・中編の多くは、今で言う「ファンタジー」です。「剣と魔法のファンタジー」ではなく、「現実ではない」という意味での「ファンタジー」。『羅生門』だって京都を舞台にしていますが、「歴史」の「知識」が存分に活かされた作品ではありません。
教師をしていて「知識」が豊富だった夏目漱石氏は「日常」ものや「ファンタジー」を数多く書いています。『坊っちゃん』『三四郎』は「日常」、『吾輩は猫である』『夢十夜』は「ファンタジー」です。それでも作品の中に散りばめられている「知識」の量には圧倒されます。
私が「参考にするなら夏目漱石氏」というのも、「知識」を存分に書いていただきたいからです。
やはり「教師」という職業は、教科に詳しいというだけでなく、人間関係の機微にも精通している意味で、小説を書くうえでは最強だと言えます。
あなたは誰かに教えられるだけの「知識」を有していますか。
あるのなら、その分野の小説を書きましょう。
コンピュータに詳しいならエンジニアの話にしてもよいですし、無類のゲーム好きならゲームを活かした作品を書けばよい。現に川原礫氏は「ゲーム」を活かした『ソードアート・オンライン』『アクセル・ワールド』という大ヒット作を抱えています。
趣味は「知識」を呼び寄せます。職業ならより深い「知識」が手に入るのです。
今本職に就いている方は、その分野の小説ならすらすらと書けるでしょう。銀行勤めなら金融機関が舞台の作品が書けます。これはなかなか類を見ない題材なので、「小説賞・新人賞」でも有利に働くのです。
最後に
今回は「得意を見つける」について述べました。
あなたは本当に「剣と魔法のファンタジー」が好きで作品を書いていますか。
単に開催されている「小説賞・新人賞」の数が多い、「紙の書籍」化される数が多いというだけで書いていませんか。
あなたの趣味・職業を活かした作品は、差別化が図れます。
「知識」があるのなら、それを活かさない手はないのです。
好きでもない「剣と魔法のファンタジー」よりも、「知識」のある好きなジャンルを書いたほうが、結果的に成功します。
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