1132.鍛錬篇:数字に自己満足しない
今回は「数字」についてです。
ランキングを狙うことばかり考えていては、よい作品は書けません。
ランキング狙いを引き起こすのが「数字」にこだわることです。
「数字」にこだわってしまうと、ウケ狙いのつまらない作品を書いてしまいます。
数字に自己満足しない
これは私への警鐘でもあるのですが、書き手はなにがしかの「数字」の記録をとても気にします。
本コラムなら「千日連続投稿」という数字がひとつの目安です。
他にも「千本目のコラム」だったり「一一一一回目のコラム」だったり。
書くモチベーションを高めるために、つい「数字」を意識して自己満足に陥ります。
閲覧数にこだわらない
小説投稿サイトで最もモチベーションが高まるのは「閲覧数」の多さです。
閲覧数がゼロだと完全にやる気をなくします。百人いれば「こんなにも読まれたのか」と感慨もひとしおです。
もちろん連載小説で第一話の閲覧数が百では少なくて、先行きが不安になります。
たとえば本コラムの第一回の閲覧数を、各小説投稿サイトで抜き書きしてみましょう。
『ピクシブ文芸』一八一二
『小説家になろう』※九万六七五七
こちらは集計が面倒なので、ユニーク数でカウントしています。ユニークユーザーはだいたい第一回を読むだろうと考えるからです。
『カクヨム』二一五六PV
元々『ピクシブ文芸』で始めた連載なのですが、現状最も閲覧数が少ないのも『ピクシブ文芸』です。
読み手の分母がそもそも桁違いですが、それでも『小説家になろう』様の食いつきはかなりよいと思います。登録ユーザー数の実に五.四%が閲覧してくれている計算です。
最後発で掲載を始めた『カクヨム』ですが、第一回は『ピクシブ文芸』よりも多くなりました。
こう見ていくと、『ピクシブ文芸』で連載する意義を見出だせなくなります。
これが「数字」の怖いところです。
絶対的な「数字」が示されると、どこが強くてどこが弱いのかが丸見えになります。
だから「より読まれるものを書こう」としがちなのです。
本来小説やコラムは「こういうものを読んでもらいたい」と書き手側が提案するべきでしょう。それを「数字」だけで判断して、「数字に踊らされて」しまうのです。
ときには「数字」をよく見せようとします。
企業の粉飾決算は話題になりますが、小説投稿サイトの閲覧数粉飾は捨てメールアドレスでアカウントを作って閲覧数を偽装する人もたまには出ます。これは完全に規約違反であり、アカウント停止の罰を受けるのです。
だから閲覧数の「数字」にこだわらないでください。
「数字に踊らされる」執筆は、なんら生産性がありません。
創作意欲よりも「期待に応える」意識が強くなってしまいます。
ブックマーク数にこだわる
連載小説の場合、第一回の閲覧数がいくら高くても、第二回以降で急激に閲覧数を落とすこともあります。
その原因は「ブックマーク」です。
第一回を読んで「この作品面白そうだから、第二回も読んでみたい」と思ったら、読み手は「ブックマーク」します。
つまり第一回を読んで「ブックマーク」しない読み手が多ければ、第二回以降は読まれないのです。
もし一回投稿の短編小説なら「何度でも読み返したくなる作品」を「ブックマーク」します。
分量も少ないから片手間で読めるのが短編小説のよいところです。しかし一回読んで満足したら「ブックマーク」はしません。なにせ後腐れなくすっきりと終わっていますからね。
短編小説で「ブックマーク」を増やしたいなら「謎」を作りましょう。
一回読んでみてじゅうぶん楽しめた。だけどわからない点がある。もう一回読めばわかるのだろうか。
「謎」があると「もう一回読んでみようかな」と感じるのです。
もし二回読んでもわからなかったら読み手はどうするか。
「ブックマーク」を剥がす人もいますが、多くは「これは短編連作かな?」と考えます。つまり次の短編小説で「謎解き」されるのではないかと思うわけですね。
もちろん素直に「謎解き」をしてもよいですし、新たな「謎」を加えてもよい。
短編連作こそ、連載小説の基本形になります。
第一回の短編を読んで「これはどういうことだろうか」「この先どうなるのだろうか」と思ったら、読み手は「ブックマーク」して何度も読み直し、そののち第二回の短編を待つのです。
こうやって短編を何十回、何百回と続けることで「連載小説」は成り立っています。
「ブックマーク」を増やせなければ、その作品には魅力がなかったのです。
ここでいう魅力とは「謎」。
「謎」がなければ読み手を物語へ惹き込めません。
あなたが作品に込めた「謎」が読み手へ正しく伝わっているかどうか。
それを表すのが「ブックマーク」なのです。
だから閲覧数を気にする必要はありませんが、「ブックマーク」数には徹底的にこだわってください。
作品の面白さは「ブックマーク数」が教えてくれます。
『小説家になろう』のランキングポイントは、ブックマークひとつにつき2pt入るのです。「評価」の数だけでなく、ブックマーク数をランキングの基準にしたのは慧眼と呼ぶべきでしょう。
評価は後からついてくる
閲覧数、ブックマーク数について述べてきましたので、残る「評価」についても記しておきます。
「評価」には「面白かった」「ためになった」「味わい深かった」などさまざまな方向性がありますが、読み手の心が動かされたからこそ「評価」するのです。
「評価」はブックマークと比べて、積極的にポイントを入れなければならないため、案外とハードルが高い。
書き手としては「面白い作品」になるよう工夫します。しかしそれで読み手が確実に「評価」してくれるとはかぎりません。
だから「評価」はおまけだと思ってください。
「謎」を入れて「ブックマーク」を増やすことだけ考えましょう。
そうして物語が「面白く」なれば、積極的に「評価」してくれる方が何人か現れます。
一度「評価」が入った作品は、さらなる「評価」を呼び寄せるのです。
投資の世界に「売りが売りを呼ぶ」という言葉があります。
本心では金融商品を「売り」たいのですが、誰も動かないので、いつ「売れ」ばよいのか誰もタイミングがつかめないのです。
そんなときにある人が「売り」を入れます。
すると「あ、今売っていいんだ」とわかった人が相次いで「売り」始めるのです。
ひとつの「売り」がさらなる「売り」を呼び込む状態を「売りが売りを呼ぶ」と言います。
小説投稿サイトの「評価」もまさに「売りが売りを呼ぶ」ものです。
ひとりが「評価」を入れると「あ、この作品に評価を入れてもいいんだ」とわかった人が相次いで「評価」し始めます。
『小説家になろう』では「評価」は2〜10ptの五段階から選べるのです。ひとりの読み手が最大ブックマーク六人ぶん入れられる計算になります。かなり広い裁量が与えられているのです。
「評価」は狙っても獲れません。しかし「ブックマーク」は狙って獲れます。
王道はあくまでも「ブックマーク」稼ぎに邁進するべきです。「評価」は時局の流れ次第だと割り切りましょう。
入らないときは、どんなに「ブックマーク」が増えても「評価」されません。
しかし入るときは、どんなに「ブックマーク」が少なくても「評価」が高まるのです。
不確実な「評価」に頼るより、確実に獲れる「ブックマーク」を勝ち取りましょう。
最後に
今回は「数字に自己満足しない」ことについて述べました。
閲覧数がいくら高くてもブックマークされなければランキングには載れません。
ランキングには評価も反映されますが、評価は狙って獲れるものでもないのです。
それなら狙うはブックマークのみ。
閲覧数も評価も気にしないでください。
第一回の閲覧数が一万を超えたからと自己満足してはなりません。
第二回がどれだけ読まれるか。第三回以降までどれだけ読み手を惹きつけられるか。
それを計る指標が「ブックマーク」数なのです。
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