1131.鍛錬篇:無理のない執筆を

 今回は「無理のない執筆」についてです。

 最初に勢いで「毎日連載」を始めてしまうと、毎日が途切れたときに読み手が離れていきやすくなります。

 余裕を持った「連載ペース」にしましょう。

 また書き手によって書きやすいジャンル、書きやすい主人公がいます。

 そういったものはすらすらと書けますので、無理のない執筆ができるのです。





無理のない執筆を


 たとえば毎日連載を続けているとします。

 それが突然土日だけの投稿になってしまったら、読み手はどうなるのでしょうか。

 毎日楽しみにしていた作品が更新されない日が続くと読み手はどんどん離れていきます。

 このような事態が発生しないために、執筆前から投稿ペースを決めておくべきです。

 毎日連載はキツいなと事前に見通せるのなら、隔日や土日だけの投稿にしましょう。

 毎日連載をすると読み手が加速度的に増える。だからできるなら毎日連載にしたい。と思うのは書き手のカンです。

 カンや勢いだけで連載を始めないようにしましょう。




始める前に見通しを立てる

 小説投稿サイトへ作品を掲載するペースは、第一話を投稿する前から決めておきましょう。

「読み手が増えるから」との理由から無理に毎日連載を始めてしまうと、途中でしんどくなって連載は継続できなくなります。

 すると更新されない日が生じてしまい、読み手が少しずつ作品から離れていくのです。

 連載するペースは、執筆するペースに合わせます。

 毎日余裕で執筆できるなら毎日連載でもよいでしょう。

 しかし週三日しか執筆できないようなら、週三ペースで連載していくのと無理がありません。

 では執筆するペースをつかむにはどうすればよいのでしょうか。

 ストックを溜めてください。

 たとえば十話ほどストックを溜めれば、その十話をどのくらいのペースで書きあげられたのかを客観的に知れます。

 そのうえで若干余裕を持ったペースで投稿しましょう。

 急事はいつ起こるともかぎりません。なにか起きてもストックと余裕を持っていれば、連載に穴をあけずに済みます。

 一日に二、三話書けるくらいのペースならストックがどんどん溜まりますから、毎日連載にも無理を生じません。

 週三ペースでしか書けないのに、毎日連載を始めてしまうから途中で投稿が追いつかなくなるのです。

 連載を始める前に見通しを立ててください。

 ご自身で無理なく連載できるペースを見つけ出さなければ、連載が途切れがちになって読み手が離れてしまう悲劇を防げます。




無理なく書けるジャンルや主人公を選ぶ

 小説を書くのはとてもたいへんです。

 なにせ文字だけで読み手にイメージしてもらわなければなりません。

 また文字だけで読み手へ正確に伝えられなければ、書き手として失格です。

 執筆が詰まる大きな理由として「無理なく書けるジャンル」なのかがかかわってきます。

 この小説投稿サイトでは「剣と魔法のファンタジー」が大人気だから、私もひとつ書いてみてたくさんの方に読まれたいな。

 そう考えて「剣と魔法のファンタジー」を書こうとしても、あなたが「剣と魔法のファンタジー」にどれほど親しんでいるかで執筆の難易度は変わってしまいます。

 もしいつも「SF」を読んでいるのに「剣と魔法のファンタジー」を書こうとしたら、相当苦労しそうですよね。なにせいつも読んでいる「SF」とは異なる知識が求められますから。

 だから「SF」好きな方は、無理せず「SF」を書いたほうがすらすら書けますし、評価もされやすいのです。

 それでも「剣と魔法のファンタジー」を書きたいのであれば、まずは勉強しましょう。「剣と魔法のファンタジー」にはどんな要素が求められるのか。それを知るのです。

 剣術について詳しくなければならないのか。と「SF」好きな方は思うかもしれませんが、「剣と魔法のファンタジー」では必ずしも「剣術」に詳しくなくともよいのです。もちろん詳しいほうがよりリアルに描写できます。しかしそもそも「ファンタジー」でありしょせん「フィクション」なのですから、それなりの雰囲気を持ち、矛盾を起こさないかぎりどんな剣術でも読み手は楽しめるものです。

 マンガの和月伸宏氏『るろうに剣心〜明治剣客浪漫譚〜』の主人公・緋村剣心が用いる剣術「飛天御剣流」は完全な「フィクション」で出来ています。それでも剣劇マンガとして楽しく読めましたよね。

 マンガは絵で技を見られるため、普通であれば「フィクション」がとても悪目立ちします。しかし「フィクション」前提で読ませて「飛天御剣流」が日本一の剣術なのだろうと読み手に思わせたのです。この時点で和月伸宏氏が一本とりました。

 小説はマンガとは異なり、技を画像で見せるわけではないのです。つまりマンガよりも無茶苦茶な技でも平気で使いこなせます。

 その最たるものは吉川英治氏『宮本武蔵』に出てくる佐々木小次郎です。彼は「物干し竿」と呼ばれる長刀「備前長船長光」を用いて、斬り下ろした刃を瞬時に返して斬り上げる「燕返し」と呼ばれる必殺技を編み出しました。実はこの技、実際にやろうとすると腕の筋肉が切れます。普通の太刀で真似るだけでも筋肉がそうとう悲鳴を上げるのです。身の丈はあろうかという長刀でこれをやるには尋常ならざる筋力が必要で、優男として描かれることの多い佐々木小次郎では到底使いこなせません。二の腕、前腕はいうに及ばず、大胸筋、僧帽筋、三角筋、広背筋が相当発達していないと瞬時に斬り上げられないのです。刀の重心を鍔側に寄せれば幾分楽に行なえますが、それでも鋼の刃は相当な重さがあります。マンガの北条司氏『CITY HUNTER』に登場する「海坊主」くらいの筋肉がなければまず実現できません。実写で考えれば『コナン・ザ・グレート』のアーノルド・シュワルツネッガー氏くらいの体格ですね。

 だから小説ではマンガやアニメよりもリアリティーが求められません。雰囲気を持ち、矛盾を起こさないかぎり、どんなに「フィクション」が強くても読み手は楽しめるのです。

 それを承知で「剣と魔法のファンタジー」を書きたいのでしたら、たとえ「SF」好きであっても挑戦する価値はあります。


 次に問題となるのは「主人公」です。

 現在「剣と魔法のファンタジー」では「主人公最強」が求められています。

 しかし「最強の主人公」が活躍する姿を楽しめない方に「主人公最強」ものは書けません。書こうとしても、どこか「苦労」や「努力」を盛り込みたくなるのです。

「主人公最強」は最初から強くなければ意味がありません。「苦労」を味わったり「努力」を積み重ねたりする姿を見せてしまうと、一番の売りである「爽快感」が薄れてしまいます。

 まぁどんな主人公であっても、たいていは「最強の敵」を倒してしまうのですから「いずれ主人公最強」と呼べなくもありません。実際わざわざキーワードに「いずれ主人公最強」と付けてある作品もあります。

 また「女好きの主人公」をおくてな男性の書き手が書けるとは思えません。同じおくてでも、女性の書き手なら書けてしまうのです。なにせ自分をナンパしてくるような男性を主人公にしてしまえばよい。男性の書き手で自分をナンパしてくるような男性を主人公にしてしまったら「ボーイズ・ラブ」(人によっては「おっさんずラブ」)になってしまいますよね。

 だから「主人公」もあなたが書きやすい人物像がよいでしょう。流行っているからと無理に「主人公最強」にする必要はありません。

「最強の主人公」が書きづらいと、主人公をどう動かそうかで頭を悩ませてしまいます。主人公を書こうとするたびに書く手が止まる。すらすらと展開を思い描けないのです。

 それなら「等身大の主人公」でよいではありませんか。書き手と同じ思考を持つ主人公なら、頭を悩ませない。状況に出くわしたら、書き手であるあなたはどんな行動をとりますか。それが主人公のとる行動なのです。こんな主人公ならよどみなくすらすらと書けますよね。


 ジャンルと主人公は、流行りを追うよりも自分が書きやすいように設定しましょう。

 それが毎日連載が途切れない秘訣です。





最後に

 今回は「無理のない執筆を」について述べました。

 無理のないペースで連載を続ける。すらすらと書けるジャンルや主人公を設定する。

 理性ではわかっていても、「そうすると読まれにくくなるなぁ」とつい欲をかいてしまいます。

 連載はあくまでも理性で行なうべきであり、カンや勢いに任せてはならないのです。



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