1125.鍛錬篇:二、三度駄目でもあきらめない

 今回は「あきらめない」ことについてです。

「私が筆を執れば大賞間違いなし」と意気込んだ作品が、たとえ大賞が獲れなくても気落ちしてはなりません。

 あなたは「自分には大賞が獲れて当たり前」という自負があったはずです。

 であれば、それを完遂してみませんか。





二、三度駄目でもあきらめない


「私が筆を執れば大賞間違いなし」と意気込んで作品を書き上げ、「小説賞・新人賞」へ応募したとします。

 たいていは落選するのです。それは当たり前。同じ賞に何百、何千、何万もの書き手が作品を応募しているのですから。

 一度挫折すると「おかしいな。こんなはずはないのに」と開き直るか、「私には小説を書く才能がないのでは」と急に現実を見つめるかします。




この世に絶対も間違いなしもありえない

 まず皆様にご認識いただきたい。

「絶対」「一〇〇パーセント」「間違いなし」なんてことはありえないのです。

「私が筆を執れば大賞間違いなし」「絶対賞金がもらえる」「一〇〇パーセント紙の書籍化される」なんてことがあると思いますか。

 これは「宝くじ」を買う人の心理と似ています。

「私が買う宝くじは必ず一等前後賞合わせて十億円に当たる」と思い込んでいるのです。

 しかし実際には三千万分の一の確率しかありません。それでも「必ず当たる」と思い込む。だから今日も「宝くじ」は売れていくのです。

 実際に「一等前後賞合わせて十億円」が当たるのは三千万分の一の確率であり、「必ず」なんてありえない。当たったほうが怖いくらいです。


 だから「絶対」「一〇〇パーセント」「間違いなし」なんてありえません。

 あなたがいくら「売れる作品」を書いたとしても、それより上の作品が応募されていれば、大賞はそちらが持っていきます。

「小説賞・新人賞」に上限や天井はありません。どんなに素晴らしい作品を書いても、他の書き手がその上を行けば、あなたは大賞にはなれないのです。

「大賞間違いなし」な作品はどんな「プロ」や「文豪」にも書けません。

 大賞は絶対値ではなく、相対値で決まるからです。

 仮に一〇〇点の作品が書けたとします。それよりわずかでも相対値の高い作品があればそちらの勝ちです。

「一〇〇点」が満点だと誰が決めたのでしょうか。「小説賞・新人賞」ではより相対値の高いほうがよいのです。

 だから「これで完璧。大賞間違いなし」な作品などこの世には存在しません。

 ある人にとって「大賞間違いなし」でも、別の人にとっては「こんな凡百な作品に賞はやれん」と判断されます。

「小説賞・新人賞」に上限や天井はないのです。

 よくよく考えてみればすぐにわかります。

 この世に絶対も間違いなしもありはしないのだと。




二、三度駄目でも当たり前

「小説賞・新人賞」へ最初に応募した作品が、見事に大賞や各賞を逃した。

 これで小説を書かなくなる方がひじょうに多いのです。

 しかし小説は「相対値の芸術」といえます。他人の作品を一点でも上回れば勝ちです。十倍よくても結果は同じ。とにかく上回りさえすればよいのです。

 そのためには経験を積みましょう。

 一度「小説賞・新人賞」に落選したからと、あきらめてどうしますか。

 結果が出るまであんなに「私が筆を執れば大賞間違いなし」と意気込んでいたではありませんか。

 それを、たった一度で挫折してしまうのですか。「私が筆を執れば大賞間違いなし」なんですよね。であるなら、一度の挫折くらいバネにして次作で工夫を凝らせばよい。

 とにかく「なにかを変えるべく考えて」ください。

 試行錯誤できるのが人間のよいところです。

 しかし二度目も駄目だった。これもよくあることです。先ほども書きましたが、同じ「小説賞・新人賞」には何百も何万も作品が応募されています。だから二度目が駄目でも当たり前。

 また「なにかをが変えるべく考えて」ください。

 そして三度目の応募をするのです。

 しかしこれも駄目。さすがに三度目ともなると失望を禁じえません。

 では最初と二度目と三度目の作品を比べてみてください。相対値でよいので、どの作品の評価がいちばん高いかを比べるのです。

 もし最初の作品の評価が最も高いのなら、あなたの努力は間違えています。本来「最初の作品<二度目の作品<三度目の作品」となるべきだからです。

 小説を絶対値で捉えようとするのがそもそもの間違い。必ず相対値で捉えてください。

 最初の作品は六十点だった。二度目の作品は八十点だった。なんて誰が決めるのでしょうか。あなたの思い込みでしかありません。あるいは相対値をあえて絶対値として捉えようとしているのです。

 しかし小説は「相対値の芸術」。上限も天井もないのです。

 落選した今作が頭の真上だとして、次作は五センチメートル上か、一メートル上か、一〇〇メートル上か、一万メートル上か、大気圏を突破するか、月まで届くか、太陽まで届くか、太陽系の外まで出るか。上限も天井もありませんから、どんなに上までもたどり着けるのです。




何度でもあきらめずに高みを目指す

 だから一度落選したくらいであきらめるなんて、あきらめがよすぎます。

「私が筆を執れば大賞間違いなし」の自信はどこへ行ったのでしょうか。

 有言実行できなかった。だから恥ずかしくて次作なんて書けない。

 そんな程度の覚悟で大賞を獲ろうだなんて、小説を舐めていると言われても仕方がありません。

「私が筆を執れば大賞間違いなし」と自信があったのなら、実際に大賞が獲れるまで何度でも「小説賞・新人賞」へ応募しまくってください。

 有言実行には、一度で成功させなければならないというルールはありません。最終的に目標を達成していたら、それは有言実行なのです。

 何度でも書きます。小説は「相対値の芸術」です。

 他の書き手がどんぐりの背比べをしている間に、はるか宇宙の高みまで小説の質を高められたら。あなたが大賞を確実に獲れます。

 小説は、いくらでも洗練できるのです。

 考えるのをやめないで、試行錯誤して自身の向き不向きを把握する。

「剣と魔法のファンタジー」が好きでも、書いた作品の評価は別の話です。

 意外と「推理」に向いていたり「恋愛」に強かったり。なんでも自分で評価せず、読み手に判断を委ねてみましょう。

「プロ」になりたければ、絶対にあきらめない。「小説賞・新人賞」で大賞が獲れるまで、応募し続けてください。

 もちろん反省会を開いて、どこが悪かったから落選したのか、確認して把握しましょう。

 絶対にあきらめない。少しずつでも改善する。

 このふたつの心があれば、「小説賞・新人賞」へと到達できます。





最後に

 今回は「二、三度駄目でもあきらめない」について述べました。

 世の中案外と「あきらめのよい」方が多いものです。

 しかしあなたの「プロ」になりたい思いは、たった一度の失敗で挫折するものでしょうか。

 そんな甘い考えでは、とても「プロ」で食べていけません。

「プロ」は自分の好きでもない物語を書かなければならないのです。

 熱量がなくても読ませるだけの力、筆力を身につけましょう。



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