1120.鍛錬篇:器用貧乏でなく一芸名人になれ
今回は「一芸名人」についてです。
「器用貧乏」な書き手が多いのですが、専門分野を持った「一芸名人」の作品はとても強い。
ぜひ「一芸名人」を目指しましょう。
器用貧乏でなく一芸名人になれ
昭和世代は、画一化された教育を受けて、ある程度の知識をまんべんなく持っている「器用貧乏」な方が多い。しかし、偉業を成し遂げた「名人」はたいていなにかが不得意か、ある方面だけ得意かしています。
ゆとり世代が現代社会で「好き嫌いが激しい」「応用がきかない」と批判されるのは、彼らが興味を持つ分野に特化した教育を受けてきたからです。だから昭和世代のような「器用貧乏」な方は少なくなりました。その代わり「名人」が増えたのです。
羽生善治と藤井聡太と大谷翔平
「器用貧乏」のままで、多様な分野で「名人」となった方が歴史を見ると存在します。
たとえばレオナルド・ダ・ヴィンチ氏。数学者であり画家であり発明家でもありました。ここまで多才な人物は数少ないのですが、日本には羽生善治氏という異才がいます。
彼は将棋で中学在学中にプロ棋士としてデビューしました。若くして七大タイトルを同時に制覇した「七冠」となります。そしてそのすべてで永世称号を獲得するという偉業を成し遂げたのです。
しかも彼はチェスにおいても才能を発揮しています。日本ランキング二位にまで登りつめるほどの実力です。
羽生善治氏は「器用貧乏」を極めればどうなるか、現代で体現した数少ない「器用名人」となりました。
ゆとり世代の藤井聡太氏も羽生善治氏同様、中学在学中にプロ棋士としてデビューし、以来公式戦二十九連勝の偉業を成し遂げました。彼は「詰将棋」の日本チャンピオンであり、「将棋」という競技においては「名人」級の実力を持っています。しかし他のことには無頓着らしく、羽生善治氏のような多才さは見られません。
ゆとり世代はひとつのことを極めるための教育を受けてきました。だからこそ、将棋を極められたのです。
その点、野球の大谷翔平氏は羽生善治氏のような「器用名人」型です。投げては二桁勝利、打っては二桁本塁打。彼は「二刀流」として日本球界で輝きを放ち、メジャーリーグでも見事に才能を証明してみせました。彼の活躍によりメジャーリーグの選手区分に「二刀流(Two−way Player)」が加わったのです。
現実を見ると、羽生善治氏や大谷翔平氏は「例外中の例外」に映ります。
ひとつさえ極めていない方のほうが圧倒的に多いのです。
であれば、私たちは藤井聡太氏を目指したほうがよいでしょう。
つまり一芸に秀でた「名人」になるのです。
一芸名人へ一意専心
もし一芸に秀でた「名人」を目指すのなら「一意専心」するべきです。
他のことを考えずそのことだけに心を集中してください。
あなたは「小説の名人」を目指していますか?
もし「小説の名人」を目指しているのなら、小説を書くために意識を集中するのです。
小説は手慰みでいいや、というのであれば、貴重な人生をそんなに割く必要はありません。
どんな人でも一万時間を費やせば「一人前」になれると言われています。
一万時間とはなんとも途方もない時間に感じられるでしょう。
しかし三百六十五日で割ると二十七時間二十二分余りとなります。
ということは、一日一時間だと二十七年かかるのです。これだと遅すぎませんか。
「小説の名人」になりたいと思っている方が、一日に一時間しか小説を書かないなんてことがあるのでしょうか。そこを疑ってください。
たとえば月曜から金曜までは二時間とり、土曜日曜で計十七時間とれれば、たった一年で「一人前」になれます。
さすがにこれは難しいと思いますので、「一年半で一人前になろう」と考えましょう。
月曜から金曜までは一時間とり、土曜日曜で計十時間とれば、一年半ほどで一万時間に到達するのです。
どうですか。これなら達成できそうな気がしませんか。
私は本コラムを連載してきて早千日余。『小説家になろう』様での総文字数は四百万字に迫るほどまできています。(『カクヨム』様では「まえがき」を地の文に含めているので、すでに四百万字を超えています)。
ここまで毎日文章を書き続けていると、コラムの書き方をわかってきたような気がするのです。あくまでも「気がする」だけですよ。
小説も本コラムと同様。毎日継続していれば、いつか必ず「小説の書き方をわかったような気がする」ところまでやってこれます。
書いただけで満足しないでください。すべての作品を小説投稿サイトへ掲載していけば、モチベーションも高まります。反響があれば「次はもっとよくしよう」と工夫するようになるのです。
一芸名人でも多趣味になろう
「一芸名人」を目指して一万時間書き続けたら「小説の名人」になれるほど甘くはありません。
それは「小説」というものに要求される知識が広範に渡るからです。
「正しい日本語」で書けても、万人が満足する作品は書けません。
物語に登場する物事について、読み手よりも深い知識が要求されます。
たとえば「剣と魔法のファンタジー」であれば、物語世界の深い知識が欠かせません。
その世界ではどれだけ魔法が普及しているのか。一般家庭でも火の魔法を使って料理しているかもしれません。ごく一部の達人だけが魔法を扱えるだけかもしれません。魔法が存在するとしてもその普及度合いは必ず決めておかなければならないのです。
それだけでなく、剣と魔法が交錯する戦闘シーンについても詳しくなければなりません。
物理攻撃である剣や斧や槍などでの戦闘に、どのような魔法をどのタイミングで用いるのか。それにも気を配らなければなりません。
また魔法といっても、自然に関する魔法や精神に影響する魔法、物理攻撃する魔法など、種類はさまざまです。
こういった知識を余さず身につけなければ、読み手の誰もが納得する「剣と魔法のファンタジー」は書けません。
知識を最も手っ取り早く身につけるには「剣と魔法のファンタジー」のアニメをたくさん観ることです。
アニメは派手なので、剣と魔法が交錯する戦闘シーンをダイナミックに感じ取れます。
もちろんマンガでも小説でも映画でもかまいません。
J.R.R.トールキン氏が『ホビットの冒険』『指輪物語』を書いた頃のような、まったく存在しない物事を一から築き上げる必要なんて、今はないのです。
先駆者のおこぼれにあずかって、知識を吸収すれば事足ります。
そのためには、できるかぎり多趣味になるべきです。
「剣と魔法のファンタジー」であればライトノベルをたくさん読むだけでなく、ゲームをたくさんプレイしたり歌曲に親しんだりしてください。
盆栽が趣味なら「スローライフ」ものが書けるでしょう。
科学に詳しければ「SF」ものや「推理」ものが書けるはずです。「剣と魔法のファンタジー」にさえ科学を持ち込めます。たとえば「剣と魔法のファンタジー」に銃火器を取り込む。ゲームのスクウェア(現スクウェア・エニックス)『FINAL FANTASY』のようにスチームパンクを組み入れる。宇宙に飛び出してもかまわないのです。
幅広い知識を得るために、できるだけ多趣味になりましょう。
幅が広くなればなるほど、よりバラエティーに富んだ作品に仕上がりますよ。
最後に
今回は「器用貧乏でなく一芸名人になれ」について述べました。
「なんでもできる」は往々にして「なにも成し遂げられない」につながります。
本コラムをお読みの方は「小説の名人」を目指してください。
そのうえで、趣味を多く持ちましょう。
小説は「正しい日本語」が書けるだけでは魅力的になりません。幅広い知識が詰め込まれているから魅力があるのです。
知識を苦もなく手に入れるなら、趣味にしてしまうのが手っ取り早い。
ぜひさまざまなことに挑戦してください。
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