1117.鍛錬篇:できるだけ早期に本番を経験する

 今回は「訓練より実戦のほうが得られるものが多い」ことについてです。

 だからこそ、訓練しながら本番を経験しましょう。

 最初は誰だってへたなんです。そこから巻き返せば結果オーライ。

 どんどん投稿しまくりましょう。





できるだけ早期に本番を経験する


 訓練・練習を続けるだけで成長していける方は、なにをやらせても勝手に成長します。

 しかし凡人なら、できるだけ早期に本番を経験したほうが成長するものです。

 本番でしか得られないものが確かにあります。




いつまでも練習していては伸びない

 日本人は訓練・練習をとてもたいせつにします。

 しかし訓練・練習だけに固執しているようにも見えてしまうのです。

 いくら訓練・練習に明け暮れても、それを発揮する場がないのでは意味がありません。

 だからこそ、早いタイミングで本番を経験しておくべきです。

 本番では、訓練・練習にはない感覚が味わえます。


 株式投資について、いくら書籍を読んでも、いくら相場を眺めていても、本当にお金を動かすとさまざまな不安がつきまとってくるのです。

 今までは単なる数字でしかなかったものが、「自分の資産」が減ったり増えたりするさまを見て冷静に判断できる方はまずいません。少なからず動揺してしまうものです。

 実際に経験して「株式投資って怖い」と肌で感じれば、「株式投資」に対する考えがガラリと変わります。

 いくら書籍で「こんなに簡単に儲けられるんですよ」と書いてあっても、現実はそれほど甘くない。

 今なら「新型コロナウイルス肺炎」のパンデミックにより、相場が乱高下しています。そんな中で「株式証券を売買する」なんて、書籍には書かれていない局面です。お金をかけていない方は、たいへんそうだな、と感じる程度。ですが、お金を実際に運用している方は、全面安の展開を見て「いつ買い場が訪れるのか」「空売りをして買い戻せるのか」という不安に苛まれます。


「小説を書く」のも同じです。

 本番を経験しなければ得られないものが確かにあります。

 小説を一本書きあげて、それを他人に読んでもらう。これが「小説を書く」本番です。

「小説を書きあげる」のが本番ではありません。書きあげるだけでは、単なる訓練・練習の一環にすぎないのです。

 書いた作品の意図が読み手に正しく伝わるかどうか。これは実際に読んでもらう以外に判断できません。

 昔は、読んでくれる方が身近にいらっしゃらなかったら、書きっぱなしで反省したり修正したりできなかったのです。

 現在は小説投稿サイトがあります。何十万という数の読み手がいて、あなたの作品を読んでくれる方も一定数いるのです。

 とくに一話かぎりの短編小説であれば、「短編小説好き」の読み手が確実に読んでくれます。

 複数回の連載を行なう長編小説や連載小説は、第一話で見切られたら続きを書いても読まれません。しかし短編小説なら一本読むだけですから、多くの方が読んでくれます。

 本番を経験するのなら、まずは短編小説から始めましょう。

 短編小説はその都度読み手が生まれます。しかし長編小説は一本を複数回に分けて投稿するので、どうしても先細りが否めないのです。その先細りであなたの意欲がどこまで保てるか。先ほどの株式投資と同様、実際に経験しなければわからないのです。

 一度だけの勝負である短編小説なら、一本投稿すればあとは結果を眺めるだけ。でも長編小説・連載小説なら、初回を投稿してある程度の閲覧数(PV)を得られても、二話目以降でその閲覧数を保持できるかと言えばまずできません。次話を投稿するたびにどんどん閲覧数が先細りしていくのです。もうほとんど読んでもらえなくなった方もいらっしゃいます。

 本コラムはひじょうに好評を得ていますが、第一回のコラムの閲覧数と最新話の閲覧数を比べればうなだれるほかありません。まぁ千回以上も続いていれば、そのうち飽きちゃいますよね。もし本コラムをもっと読まれるものにしたいのなら、各篇ごとにシリーズを区切るべきでした。そう気づいたのも『小説家になろう』様に投稿を始めてからなので、すでに六百話くらい進んでおり今さらなんですよね。

 こんな気づきを得られるのも、本番だからでしょう。投稿せずに書き溜めていたとしても、そんな気づきは得られません。

 コラムですらそうなのです。小説で本番を経験するなら断然一話完結の短編小説で勝負しましょう。




あなたの納得のいくやり方で本番を経験する

 とはいえ、最初から長編小説・連載小説で勝負したい方もいらっしゃるでしょう。

 あなたが閲覧数の先細りを納得したうえでやりたいのなら、その方法で本番を経験するのもよいと思います。

 本番を経験するなら、あなたが納得のいくやり方で行なうのが一番です。

「長編小説しか書きたくない」のであれば、長編小説一本で練習してもよい。ただし閲覧数の先細りを実感して「もう書きたくない」と「エタる(エターナル:永遠に終わらない)」ようでは「本番を経験した」とは言えません。どんなに閲覧数が少なくてツラくても、必ず結末まで書いて物語を完結させてください。一度「エタる」書き手だと思われたら、以後どのような長編小説を書いても読まれなくなります。

 一度「長編小説で本番を経験したい」と思ったら、必ず完結させましょう。

 そんなツラさを感じたくない方は、おとなしく短編小説で本番を経験してください。

 一話投稿するだけで、伝わったか伝わらなかったかがすぐにわかります。

 短編小説がどうしても書けないという方は「短編連作」の形でやってみましょう。

 同じ世界感、同じ登場人物で、短編小説を書いていく。これが「短編連作」です。

 これなら「長編小説」の代わりとして活用できます。長編小説の一エピソードを一本の短編小説にしてしまえばよい。もちろん毎回人物紹介などはしなければなりませんが、長編小説のように数回も投稿しないと反響が来ないなんてありません。一エピソード一回の投稿で必ず評価されます。

「できるだけ早期に本番を経験する」なら、打てば響く状態が望ましい。


 反響は早ければ早いほど有意義です。直すべき点がいち早く明確になります。

 あなたの成長を考えれば、短編小説で本番を経験してほしいのですが、人には向き不向きがあるのです。

 短編小説では本気になれない方もいらっしゃいます。そんな方にまで短編小説を強要するつもりはありません。

 要はご自身が納得できるやり方で本番を経験しないかぎり、その人のためにならないのです。





最後に

 今回は「できるだけ早期に本番を経験する」ことについて述べました。

 いつまでも訓練・練習だけを行なっても、実力は身につきません。

 可能なかぎり早いタイミングで本番を経験してください。

 それまでの訓練・練習が正しかったのか判断できます。間違った訓練・練習はいくら続けても時間のムダです。

 ムダかどうかを知るためにも早期に本番を経験しましょう。

 そして本番は「あなたが納得のいく形」で経験してください。

 人は不本意な本番を経験しても、素直に結果を受け止められないものです。

 長編小説一本で行きたい方に、短編小説を無理強いはしません。

 ただし短編小説なら一回の投稿で、それまでの訓練・練習が正しかったのか、すぐに判断できます。効率がよいことだけは確かです。



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