1107.鍛錬篇:失敗から教訓を得る
今回は「失敗」を糧にする方法についてです。
人間であれば誰でも「失敗」します。
努力次第で「失敗」する確率は減らせます。
あるドラマに「私、失敗しないので」というセリフがありますよね。
あれも事前にリスクを回避しているから言える言葉なのです。
失敗から教訓を得る
コンピュータは、プログラムが完璧ならばまず失敗しません。予期せぬ停電や割り込みが発生しないかぎりは。
しかしプログラムを組むのはあくまでも人間です。
人間だから失敗します。
問題は、失敗が発生していかに素早く対処できるかです。
失敗の積み重ねが、対処を素早くします。どのようなことをしたから失敗したのかが、頭の中で体系化されているからです。
トライ・アンド・エラー
「小説を書く」のも「プログラムを組む」のと同じです。
伝えたいことが読み手に正しく伝わっているか。
正しく伝わっていなければ、その小説は失敗しています。
小説は読む人それぞれで解釈が異なるものです。
だからといって、書き手に明確な「伝えたいこと」がなければ、読み手は解釈のしようがありません。
「小説を書く」「読み手が読む」「読み手がどう受け取るか」「書き手が伝えたいことが正しく伝わったか」
ここまでが「執筆の流れ」です。
「小説を書く」スキルを高めたければ、「書き手が伝えたかったことが正しく伝わったか」を検証しなければなりません。検証の末、反省点を見つけ出してください。
しかし検証も反省もなく、書きっぱなしの方が存外と多い。
それでは「書き手が伝えたかったことが正しく伝わったか」はわかりません。
そんな作品が「小説賞・新人賞」の大賞なんて獲れるはずがないのです。大賞どころか佳作にすら残れない。
もしあなたが「小説賞・新人賞」へ応募して一次選考すら通過できなかったとしたら。
なにかが足りていない、及んでいないのです。
それがなにかを突き止めて改善しなければ、小説は上達しません。
これは小説だけでなくスポーツにも当てはまります。野球で投手の球をバットで打ち返そうとして空振りした。明らかに失敗です。
ではなぜ失敗したのでしょうか。
もし球にタイミングが合わなかったのなら、バットスイングの速度を調整すれば済みます。もしタイミングは合っていたのにかすりもしなかったのなら、変化球だったのかもしれません。であればバットコントロールで変化球を捉えるよう調整するのです。
しかし投手はつねに先を考えています。あなたが空振りした球をもう一度投げるものでしょうか。
マンガの車田正美氏『聖闘士星矢』では「聖闘士に同じ技は二度と通用しない」とされています。野球も同様です。まったく同じ球が二つ続いたら、打者はきっちりと合わせてきます。だから投手は速度やコースや球種を変えるのです。いつも変えていれば、もし同じ球を二つ続けても打者は意表を突かれて見逃してしまうかもしれません。こんな意表はひと試合に一回使えればよいほうでしょう。
野球では投手が速度やコースや球種を変え、打者はタイミングやバットコントロールで修正してきます。
小説に置き換えれば、書き手は緩急や見せ方や種類を変えるのです。文の長短で緩急をつけ、文章の表現で見せ方を変え、比喩の用い方で種類を変えます。
今「□□の○○で××を△△」の形を一文に三回用いました。これなどは文章の表現で見せ方を変えた例です。定型の韻を踏んで読み手の印象に残るようにしてみました。
この三つを駆使して「書き手が伝えたかったことが正しく伝わったか」を検証するのです。
もし伝わっていなければ「失敗」です。もっと読み手に伝わるように書き直してください。しかし小説は一度投稿すると容易に訂正できません。訂正できるのは誤字脱字の類いのみです。
比喩の用い方を変えることで伝わりやすさは変わってきます。一度掲載してしまうと「緩急のつけ方」「表現の見せ方」「比喩の用い方」はなかなかやり直せないのです。
だからこそ「小説賞・新人賞」への応募には、周到な準備が欠かせません。
もしやり直したくても、一度応募してしまうともうやり直せないのです。
そのため「推敲」がとても重要になります。
応募する前にじゅうぶんな「推敲」を行なってください。
大げさに言えば、執筆時間は二割あればよい。残り八割は「推敲」に充てましょう。
どれだけ手直ししても、直し足りないはずです。
なにせ「書き手が伝えたかったことが正しく伝わったか」は、書き手の視点ではわかりません。どうしても「これで百パーセント伝わるはず」と思い込んで、冷静に「推敲」できないからです。
もしあなたに時間があるのなら、「推敲」をあまりしていない原稿を「小説賞・新人賞」へ応募して見事に撃沈されてください。撃沈されれば「なにかがおかしくて正しく伝わらなかったのか」と気づけます。そうなってから冷静に「推敲」できるようになれば、「推敲」スキルは確実に上がるのです。
しかしできるだけ撃沈されたくないと思います。避けられるはずなのに、あえて撃沈されにいく馬鹿はいません。
しかし「推敲」の重要性を実感するには、一度大負けしたほうがより効果的です。
大負けした際に「なぜこの作品が一次選考すら通過しないんだ! 選考は見る目がなさすぎる!」と選考さんのせいにしたら、自ら成長の芽を摘んでいます。
大負けしたのはすべて自分の「推敲」が甘かったから。
そう思えば「推敲」のたいせつさが嫌でも身につきます。
処女作で「小説賞・新人賞」を獲る方は、実は運が悪いのです。
「推敲」のたいせつさが身についていないため、次回作で相当苦労します。たいていは担当編集さんを納得させられる原稿が書けず、そのまま文壇を去っていくのです。
ときに執筆時間よりも多く「推敲」時間をとりましょう。「推敲」のうまい書き手は、安定した面白さを巧みに表現できます。「職業作家」には必須のテクニックです。
「小説賞・新人賞」は「必ず落選するもの」だと割り切ってください。
小説投稿サイトへ掲載して反応が薄かった。これも理由を分析するのです。
書き手なら「なぜ落選したのか」「なぜ反応が薄かったのか」を見抜く目をつねに養いましょう。
眼力を持てば、自然に成長へと踏み出せます。
「書きっぱなしで反省なし」だけはやめてくださいね。
最後に
今回は「失敗から教訓を得る」ことについて述べました。
失敗には必ず原因があります。原因を見つけ出す眼力を持てば、次回の執筆で同じ轍は踏まないでしょう。日々執筆スキルが向上するのです。
そのためには「書きっぱなしで反省なし」に陥らないようにしてください。
書いたら必ず「推敲」し、結果が出たら「反省」しましょう。
プログラミングと同様「トライ・アンド・エラー」の積み重ねがあなたを成長させ、完成度を高めるのです。
失敗を繰り返さないと教訓を得られない方もいます。
そういう方は短編小説を連投して、「閲覧数(PV)ゼロ、ブックマーク・ゼロ、評価ゼロ」の「トリプル・ゼロ」を何度も経験するべきです。
長編小説で「トリプル・ゼロ」を味わうと、なにが悪いのかがわかりにくい。短編小説ならなにが悪かったのかが見えやすいのです。
小説を書くなら、処女作に短編をオススメするのは、そういう意味合いもあります。
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