1086.鍛錬篇:執筆ペースを見つける

 今回は「執筆ペース」と「準備運動」についてです。

「執筆ペース」を守ろうとすれば「準備運動・ストレッチ」が欠かせません。

 連載を途切れさせないためには、毎日の「準備運動・ストレッチ」をきちんと行ないましょう。





執筆ペースを見つける


 自分の「執筆ペース」を知っている方は少ないと思います。

 執筆を開始する時間が日によってまちまちな方は多いからでしょう。

 そうなると、どの時間からなら何時間かけて千五百字〜二千字前後が書けるのかわかりにくくなります。

 できることなら、いつも同じ時間に執筆を開始していただきたいのですが、お仕事の都合上そううまくはいかない方もおられるはずです。




いつ書けますか

 仕事や勉強などで日中に執筆するのは難しい。

 そんな方は夜に書くことになりますが、何時から何時間書くペースでいけるか把握しているでしょうか。

 月曜日から金曜日までは二十一時から一時間半ほど書く時間がある。

 平日は忙しすぎて執筆できないので、土日にまとめて執筆している。

 そんなペースをまず確認してください。

 小説投稿サイトでの連載小説は、できれば毎日更新していただきたいのですが、毎日書いて推敲して投稿するのはなかなかたいへんな作業です。

 私も本コラムを毎日執筆していてたいへんな思いを味わっています。

 コラムはまだよいのです。「お題」さえ見つかれば、話を展開してひとつの結論へたどり着けばよいのですから。

 小説は、全体の物語の流れつまり構成・展開で、今日起こる「出来事」に登場人物たちはいかに立ち回るか。それを決めなければなりません。


 私の提案どおり「企画書」「あらすじ」「箱書き」「プロット」を決めてから執筆している方は、今日の投稿ぶんはすでに「プロット」で流れが定まっています。あとは毎日「プロット」をもとに本日の投稿ぶんを執筆して推敲、投稿すればよいだけです。

 しかし、執筆する時間がまちまちだと、どうしてもキーボードを叩く手が止まりやすくなります。執筆するリズムをなかなかつかめないからです。

 もし毎日または隔日で同じ時間に執筆をしていれば、いつもその時間から何時間打ち込めるかというリズムが作りやすくなります。

 同じ時間から執筆を始めるとよい理由は、それまでに無意識の間心で準備ができるからです。

 つまり決まった時間が近づくと「そろそろ執筆を始めないとな。今日はどんな場面を書くんだったっけ。主人公が雑魚の大群に囲まれてピンチに陥るんだったかな。どう表現すれば緊迫感が伝わるだろう」と心が準備運動・ストレッチを始めます。

 執筆する前に、じゅうぶんな準備運動・ストレッチができていれば、いざ執筆を始めてもケガはしません。「書けない」という事態に陥らないのです。

 これが「時間に余裕ができたときに書く」というペースだと、準備運動・ストレッチが行なわれていないですからケガをしやすい。つまり「書こうと思っているのに書けない」事態に陥ります。

 あなたが「小説を書きたいのに書けない」理由は、「時間に余裕ができたから、ひとつ小説でも書いてみよう」と思い立ったからかもしれません。

 いつも「こんな物語の小説を書こう」と構想していれば「企画書」「あらすじ」だけは確定していますので、あとは「箱書き」を書いて場面シーン分けするだけです。心をつねに準備運動・ストレッチしていますのでスラスラと書けます。




なにごとも準備がたいせつ

「小説を書きたい」と思ったら、まず「企画書」を書いてください。「企画書」もなしで物語は作れません。

 執筆する時間がとれなくても「企画書」を作るくらいなら誰にでもできます。

 どんな主人公がどんな舞台でどんな人たちとどんな物語を繰り広げるのか。

 そんな「企画書」の内容自体は鉄板でもかまいません。「剣と魔法のファンタジー」で勇者が魔王を倒す物語でも、超常的な能力を持つ青年が巨悪に立ち向かう物語でもよいのです。「主人公最強」だろうと「ざまぁ」だろうと「悪役令嬢」だろうと。

「企画書」の段階から差異を出せる書き手はまずいません。おおかたの書き手は、いつかどこかで聞いたこと読んだことのある物語を「企画書」にしています。

「企画書」の段階は平凡でもかまわない。そう思えば準備はとても楽になります。

 テンプレートな主人公、ありきたりな脇役、いつもの「対になる存在」。そんなものでもよいのです。

 差異を出そうとすれば「あらすじ」からが適切でしょう。

「よくいる主人公を、どんな出来事に遭わせてやろうか」と考えるのです。この「どんな出来事」には無数のバリエーションがあります。ここに個性が現われると言ってよい。

 もしあなたが「剣と魔法のファンタジー」を書こうと選んだのに鉄板の「出来事」しか思い浮かばないのであれば、他のジャンルの小説を読んでください。きっと今まで思いつかなかった出来事に気づくはずです。

「剣と魔法のファンタジー」に恋愛イベントも組み込めます。突然死体が転がっていてそれを発見したがために自分が犯人と疑われて追われる身となり、真犯人を探し出す旅へ出ることもあるでしょう。

 こういった「出来事」をどれだけ事前に準備できるかで、「時間に余裕ができたから、ひとつ小説でも書いてみよう」と思い立ったときに「なにも思い浮かばない」「書けない」事態は防げるのです。

 なにか「出来事」が思い浮かんだり、他人の物語に触れて使えそうな「出来事」を見つけたりしたら、まずはノートに書き留めておきましょう。

「出来事」のストックが増えれば、小説を書きたくなったときのネタに使えます。

 ひとつの「出来事」だけを使って書けば短編小説。複数の「出来事」を関連づけたら長編小説が書けるのです。

 将来「小説を書こう」と思っている方は、まず「出来事」の準備を進めましょう。

 それが「プロ」へつながる準備運動・ストレッチとなるのです。




自分に合った執筆ペースを見つける

 どんな「プロ」でも持っているものが「自分のペース」です。

 囲碁で早指しが得意な「プロ」棋士、マラソンで一キロを三分きっちりで走る「プロ」ランナー、捕手からボールを受け取ってから投げるまでの間を作る「プロ」投手。

 なぜ彼らは「自分のペース」で物事を行なうのでしょうか。

 それが最も無理なく物事をこなせるからです。

「執筆ペース」も、あなたが無理なくこなせる速さがよいでしょう。

 毎日夜九時から十時までの一時間を積み重ねていく人、土日に各五時間かけて一週間ぶんの量を書き溜めておく人。最適は人それぞれです。

 いろいろ試してみて、自分に最もふさわしい「執筆ペース」を見つけ出してください。

 頭がまわっていない起き抜けや強い眠気が襲っている就寝前は、おかしな文章を書きがちです。たとえスラスラ書けたとしても、後日推敲すると修正箇所があまりにも多すぎてかえって効率が落ちます。

 たとえば夜十一時に寝るとすれば、午後八時から九時まで執筆してみましょう。その後に入浴してから眠れば脳の疲労も抜けますし、入浴中に「出来事」がひらめくかもしれません。

 最低限、毎日派か隔日派か週末派かくらいは把握してください。

 そうすれば連載が途切れる心配をしなくて済みます。

 小説の「プロ」の方々も「自分のペース」を持っているものです。

 新人の「プロ」は「小説賞・新人賞」の一次選考に駆り出されてなかなか執筆ペースを守りにくいと言われます。そんな新人も、一次選考の下読み後に「自分のペース」を見つけ出そうとしているのです。「自分のペース」を見つけるのに三年かかることもあります。出版社レーベルが大量に仕事を投げてこなければ、もっと早く「自分のペース」を見つけ出せるでしょう。しかし一次選考の下読みでも報酬は支払われますから、小説の「プロ」として選考を優先させる方が多いのです。

「プロ」になってから「自分のペース」を見つけ出すのはとても難しい。

 ですがアマチュアのうちに「自分のペース」を把握していれば、たとえ「プロ」になっても自分の小説は書き続けられます。

 大成するのはアマチュアのうちに「自分のペース」を把握した書き手だけです。

「プロ」になってから慌てても手後れだと思ってください。

 だから処女作で「小説賞・新人賞」を獲ってしまうと、後が続かないのです。





最後に

 今回は「執筆ペースを見つける」ことについて述べました。

 毎日派か隔日派か週末派か。または変則派か。

「自分のペース」を今すぐにでも見つけ出しましょう。

「プロ」になってから見つけ出そうとしても、そんな余裕はありません。

 アマチュアのうちにつかんでいれば、「プロ」になってからも原稿は途切れないのです。



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