1078.鍛錬篇:なぜ小説を書くのか

 今回は「小説を書く理由」についてです。

 多くの方は「プロ」となるために書いていると思います。

 しかし小説はプロリーグが存在しません。所属チームというものがないのです。

 近しいものは小説投稿サイトになりますが、小説投稿サイトに掲載するだけでお金がもらえるわけでもありません。(『カクヨム』様がロイヤルティプログラムを始めましたので、状況は少しずつ変わってきていますが)。





なぜ小説を書くのか


 これから小説を書こうとしている方、そして現在小説を書いている方にお聞きします。

「なぜ小説を書くのですか?」

 この問いにはいくつもの答えが想定されます。

 あなたは「小説を書く」理由を明言できるでしょうか。

 理由がわからないまま小説を書き続けられるものではありません。




小説家になりたい

 最も多い答えが「プロの書き手になりたい」つまり「小説家になりたい」です。

 どんなに大それていても、ほとんどの書き手は「プロ」を目指します。

 これはなにも小説だけにとどまりません。

 野球をしている子どもは、将来「プロ野球選手になりたい」ですし、「メジャーリーガーになりたい」と思っています。

 サッカーをしている子どもは、将来「Jリーガーになりたい」ですし、「海外リーグの名門クラブで活躍したい」と思っているのです。

 将棋や囲碁にだって「プロ」はあります。

 しかし小説が「野球」「サッカー」「将棋」「囲碁」と決定的に異なるのは「プロリーグ」がないことです。「プロリーグ」がなければ「プロチーム」も存在しません。

「プロチーム」が存在しないということは、契約金も年俸も約束されないのです。

 たとえどこかの出版社と出版契約を結んだとしても、契約金はもらえません。もらえるのは原稿料と印税だけです。

 しかも小説を書けば必ず出版社と出版契約を結べるわけでもない。ほとんどの小説は「紙の書籍」になることもなく消え去っていきます。

 そこで、多くの書き手が出版社の目にとまるような場所として作られたのが小説投稿サイトです。

 小説投稿サイトは、書いた小説が評判を呼んで出版社と出版契約を結ぶために存在します。

 しかし単に長編小説を書いて掲載しているだけでは、まず出版社と契約できません。

 よほど話題となり、ランキング上位に居続ける必要があります。

 そんな書き手は数少ない。そもそも「紙の書籍」化された小説がランキング上位を独占するので、あなたはランキングにすら載らないでしょう。

 ではどうするか。

 出版社レーベルが企画する「小説賞・新人賞」に応募するのです。


「小説賞・新人賞」はランキングを競うものではありません。作品の質を競うものです。

 開催されている小説投稿サイトで無名の書き手であっても、応募作がよければ大賞を射止めて「紙の書籍」化されます。

 現在「紙の書籍」化される作品の多くは「小説賞・新人賞」を通過しているのです。

 単に小説投稿サイトへ掲載してランキングを競えばよかった時代は終わっています。

 小説投稿サイトを利用するのは、あくまでも「応募したい小説賞・新人賞があったから」にすぎません。

「プロ」になりたいのなら「小説賞・新人賞」を獲ることだけに集中してください。

 その小説投稿サイトでウケるかヒカれるか、なんて関係ないのです。


 ただし『カクヨム』では一次選考を読み手が担う賞があるので、ウケるかヒカれるかは大きな問題になります。『カクヨム』の利用者がどんな物語を好むのか。それを分析しなければ一次選考は通りません。

 しかし一次選考の通過だけを考えていると、いつまで経っても二次選考は突破できないのです。

 二次選考はプロの選考さんが担当します。どんなに『カクヨム』の読み手ウケしても、物語が平凡であれば落とされるのです。

 結局「物語が面白い」かどうか。それが重要です。

「物語が面白け」れば一次選考でも必ず読み手ウケします。二次選考も通過できるでしょう。最終選考まで残るかもしれません。


「プロ」になりたければ、小説投稿サイトで開催されている「小説賞・新人賞」を獲ること。

 手段は実にシンプルです。




トップランカーになりたい

 本業を辞めるつもりはなく、小説投稿サイトで「トップランカーになりたい」だけという方もいらっしゃるでしょう。

 これは承認欲求によるものです。

「トップランカーになれ」れば、多くの読み手から「あなた」の存在を認めてもらえます。

 ここでパラドックスが起こるのです。

 小説投稿サイトのランキング上位は過去の「小説賞・新人賞」応募作で占められています。

「小説賞・新人賞」に応募せずしてランキング上位へはなりづらいのです。

「トップランカーになりたい」のなら「小説賞・新人賞」へ応募してください。

 物語が面白ければ、たとえ各賞を獲らなくてもランキング上位に載れます。

 ただ片手間で小説を書いてトップランカーでいたいだけなのに、大賞を獲てしまい「紙の書籍」化へ話が進んでしまうのは好ましくない。

 そうお思いなら、受賞しても出版契約を結ばなければよいのです。

 出版契約付きの「小説賞・新人賞」であっても、必ず出版契約を結ばなければならない規則はありません。というより、たとえ大賞を獲っても必ず「紙の書籍」になるとは限らないのです。

 どうしても「紙の書籍」化されるのが嫌なら、出版契約のない、賞金だけの「小説賞・新人賞」へ応募しましょう。

 小説投稿サイトで開催されている「小説賞・新人賞」の多くは賞金だけが設定されていて、出版契約を含みません。

 どうしても「紙の書籍」化されたくなければ、募集要項をよく読んで「出版契約」のない「小説賞・新人賞」を選べばよいでしょう。

「小説賞・新人賞」で高い評価を得られれば、「トップランカーになれる」ものです。

「トップランカーになりたい」のなら、むやみに投稿するのではなく、「小説賞・新人賞」へ応募してください。

 それがトップランカーへの最短距離です。




多くの人に読んでもらいたい

 取り立てて「プロ」になりたいわけでもなく、トップランカーになれなくてもよい。

 ただ「多くの人に読んでもらいたい」方もいらっしゃるでしょう。

「多くの人に読んでもらう」には、多くの人の目に触れなければなりません。

 第一が「小説賞・新人賞」へ応募して注目を集めることです。

 ここでも「小説賞・新人賞」が出てきましたね。

 第二がトップランカーになることです。

 ランキングを参考とする読み手へアクセスできます。ですがトップランカーのなり方も「小説賞・新人賞」へ応募することでしたよね。


 現在の小説投稿サイトは開催される「小説賞・新人賞」を中心として動いています。

 多くの人に読まれたいなら「小説賞・新人賞」へ応募しなければ難しい。

 百人程度に読まれたいだけなら、投稿時間を慎重に選べば新着一覧から読んでもらえもします。

 しかしそれ以上に読まれたいのなら、トップランカーになるしかないのです。

 あなたは何人に読んでもらえれば納得できますか。

「ひとりに読んでもらえればじゅうぶんだ」

 それなら小説投稿サイトなどに掲載せず、あなたの友人に読んでもらえば済む話です。

「十人に読んでもらえたらいいな」

 それなら自分の好きなタイミングで小説投稿サイトへ掲載しましょう。たまたま新着一覧から読んでくれる方もいらっしゃるはずです。

「百人には読んでもらいたい」

 それなら多くの読み手が読んでくれるタイミングで小説投稿サイトへ掲載しましょう。

 小説投稿サイトには、それぞれ多くの方が読んでくれる「マジックアワー」が必ず存在します。

 現在のランキング上位から、最新の投稿時間が何時頃なのかを必ず確認してください。「マジックアワー」はたいていそこにあります。

 また百人に読まれたら、少なくともひとりは評価してくれるものです。となれば、日間ランキングに載る可能性も出てきます。日間ランキングに載れれば、ランキングで読みたい小説を決めている方にもアクセスでき、さらに多くの方に読んでもらえるようになります。

「マジックアワー」を見つけ出せれば、トップランカーもなれますし、『カクヨム』の読み手選考でも優位に立てるのです。

 ちょっとひと手間加えるだけで、あなたの小説は格段に読まれるようになります。

 ぜひ「マジックアワー」を見つけ出してください。





最後に

 今回は「なぜ小説を書くのか」について述べました。

 あなたが小説を書く理由を明らかにしてください。

 それに応じて最適な手段は異なります。

 共通しているのは小説投稿サイトで開催されている「小説賞・新人賞」へ応募することです。

 現在の小説投稿サイトは、開催されている「小説賞・新人賞」を中心に回っています。

 トップランカーになりたくても、より多くの方に読まれたくても、「小説賞・新人賞」への応募は最短距離なのです。



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