1079.鍛錬篇:職業作家への道

 今回は「プロ」への道についてです。

「賞金稼ぎ」「セミプロ」になりましょう。

 その意識を持てば、いずれ「プロ」へと続いていきます。

「思い入れの深い」物語で「小説賞・新人賞」を獲りたいなどとは考えないことです。





職業作家への道


 前回「小説家になりたい」とお答えいただいた皆様へ、プロの方が書いた数多の小説読本や小説の書き方の書籍から得た「プロのなり方」について見解を述べたいと思います。

 現役の「プロ」がいかにして「プロ」となったのか。

 少し前まで多かったのが小説投稿サイト『小説家になろう』で注目を浴びてデビューする方法です。しかし今はその頃から環境が変わっています。『小説家になろう』でいくら注目を浴びてもデビューできない状況になっているのです。




短編小説で職業作家を目指すには

 あなたは長編小説が書けず、短編小説ばかり書いていませんか。

「プロ」になるためには長編小説が書けると圧倒的に有利です。とくにその長編小説一本から二巻、三巻と連載できる可能性を持った作品が書ければ、「小説賞・新人賞」の選考でもたいへん有利に働きます。

 それでも短編小説で勝負したい方もいらっしゃるでしょう。

 道がないわけではありません。ただひじょうにわかりづらいのです。


 短編小説で「プロ」になるには、できるかぎり多くの小説投稿サイトでアカウントを取得してください。そしてそれらで開催されている「短編小説賞」へ投稿しまくるのです。

「短編小説賞」はどの小説投稿サイトでも開催しています。おそらく募集期間が重複することはあっても、途切れていないでしょう。

 なにせ「短編小説賞」は「紙の書籍」化のためではなく、企画・開催している出版社レーベルのイメージの向上と小説投稿サイトへの集客力アップのためにあるからです。また目のつけどころのよい「短編小説」を発掘できれば、その作家を鍛えて長編小説が書けるように指導もできます。

 出版社レーベルにとって「短編小説賞」のよい点は、とにかく懸ける賞金が手頃なことです。大賞でも十万円以下で済みます。書き手が手軽に書けるので、作品も多く集まるのです。そんな激戦を制する作品は当然レベルが高い。つまりこの「短編小説賞」を企画・開催した出版社レーベルのイメージが向上するのです。このお値段でイメージ向上が図れるのであれば、どこの出版社レーベルもこぞって「短編小説賞」を企画・開催するようになります。

 そのため「短編小説賞」はどこかの小説投稿サイトで必ず開催されているのです。


 では肝心の「短編小説でプロになる方法」ですが、とにかく数多くの「短編小説賞」を獲りまくってください。

 募集されている「短編小説賞」のお題は実にさまざまです。それでも数多くの「短編小説賞」で入賞して賞金をゲットしてください。そうすれば短編小説を書くだけでもじゅうぶん日銭が稼げます。いわゆる「賞金稼ぎ」「セミプロ」と呼ばれる状態です。

「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」と言います。

 苦手なお題でも果敢に挑戦して、読み手の目にとまるような作品を書いてください。多彩なお題で「短編小説賞」を獲りまくっていれば、そのうち出版社レーベルが放っておかなくなります。

「この書き手、よく短編小説賞を獲っているけど、どのくらい実力があるのだろう」

 そう思わせることで、短編小説でも職業作家への道が開けてきます。

 そうなるまでは、ひたすら「短編小説賞」を獲って日銭を稼ぎましょう。「賞金稼ぎ」「セミプロ」を続けていれば、いつか出版社レーベルが気にかけてくれるようになります。

 あきらめずに「短編小説賞」へ挑戦し続けましょう。そこから開ける未来もあります。




長編小説で職業作家を目指すには

 多くの「プロ」は「長編小説賞」で好成績を収めて「紙の書籍」化を果たしています。

 これは「小説賞・新人賞」が開催されるようになって以来続いているのです。

 おそらく九割以上の現役「プロ」は「小説賞・新人賞」で好成績を収めています。

「プロ」であれば「小説賞・新人賞」を獲っていて当たり前、という時代です。

 だからこそ「小説賞・新人賞」へ作品を応募しまくってください。

 ただし条件があります。

「ひとつの作品を何度も手直ししながら応募しない」ことです。

 書き手として「どうしてもこの物語で『小説賞・新人賞』を獲ってデビューしたい」くらい「思い入れの深い」物語をひとつは持っています。

 ただ、それだけで勝負していては、あなたの正しい実力がわかりません。

「この物語しか書けない、発想の貧困な書き手」と見られる場合も多いのです。

 とくに同じ「小説賞・新人賞」に同じ物語を手直ししながら投稿しまくっても、大賞は獲れません。

 その物語が魅力的であれば、最初の応募時に佳作くらいには残るものだからです。

 佳作にも残らなかった物語は、いくら手直ししたところで魅力がない。

 この事実を受け止められるかどうか。それが長編小説で「プロ」になれるかどうかを左右します。

 長編小説は短編小説ほどポンポンと物語が生まれてきません。だからどうしても、ひとつの物語に固執しがちです。しかし固執していると発想が柔軟性を失って、才能が伸びません。「プロ」になるための才能を自ら押し殺しているのです。

「そうは言われても、この物語を皆に読んでほしいから小説を書いているのだが」という方もいらっしゃいます。

 でもそれは「今」でなければならないのでしょうか。

「小説賞・新人賞」は別の物語で獲って「プロ」デビューし、その作品が「紙の書籍」化された後に「思い入れの深い物語」を出版してもよいのではありませんか。

 あえて「プロ」になりづらい物語で「今」勝負する必要はあるのでしょうか。

 私ならそういう物語はデビューしてからのためにとっておきます。

「今」は「どれだけ個性的な物語が書けるか」を追求した作品で勝負したいですね。そのほうがはるかにラク。


 あなたが書きたい物語と、選考さんから評価される物語とには大きな隔たりがあります。

 一作応募して、落選したら別の物語を執筆して別の「小説賞・新人賞」へ応募する。それも落ちたらまた別の物語で別の「小説賞・新人賞」を狙うのです。

 落選した物語の数が多い書き手ほど、「プロ」になってから大きな飛躍を遂げる傾向にあります。

 もちろん第一作(処女作)で「小説賞・新人賞」を獲る方も中にはいます。でもそれはほんのひと握りです。

 多くの「プロ」は、何作も応募してようやく大賞を獲っています。

 文学小説の新人賞である芥川龍之介賞へ三度も四度もノミネートされてようやく受賞するケースが多い。同じく文学小説の作品賞である直木三十五賞へ複数回ノミネートされてようやく受賞する「プロ」も多数存在します。

 著名な芥川龍之介賞や直木三十五賞ですらそうなのです。

 小説投稿サイトで開催されている「小説賞・新人賞」へ何度応募しても「プロ」になれない方のほうが圧倒的に多い。

 ただでさえ狭き門なのに、同じ物語を手直しし続けて「よい作品に仕上がっているか」わからないものを応募しても、受賞できるはずがありません。

 あなたは「プロ」になりたいんですよね。

 であれば「小説賞・新人賞」を獲る「プロ」になる必要があります。

「短編小説」で述べた「賞金稼ぎ」「セミプロ」の状態です。


 戦略的に「こういう作品を書けば佳作に残って三万円だ」と計算できるかどうか。計算できたら、そういう作品を実際に書けるかどうか。実際に書いた作品が狙いどおりに佳作に残って賞金を稼げるかどうか。

 自分はあくまでも「賞金稼ぎ」「セミプロ」なのだと自覚してください。

 小説投稿サイトで開催されている「小説賞・新人賞」はあくまでも「日銭稼ぎの場」なのだと割り切るのです。あなたの「思い入れの深さ」を試される場ではありません。「思い入れの深い」作品は「プロ」になってから書けばよいのです。

「プロ」になるまでは「賞金稼ぎ」「セミプロ」なのだと自分に言い聞かせましょう。

 単なる「賞金稼ぎ」「セミプロ」の段階で「思い入れの深い」作品を書く、なんていう「もったいない」ことはしないでください。

 順序があべこべになってはなりません。

 まずは「プロ」になること。そのためには「賞金稼ぎ」「セミプロ」になりましょう。

 あなたは「賞金稼ぎ」「セミプロ」です。今からそう認識を改めましょう。

「思い入れ」だけで勝負するのではなく、「賞金が稼げる」かどうかを判断基準にして執筆するのです。

 徹底的にクールでドライになってください。「賞金稼ぎ」「セミプロ」に徹するのです。

「プロ」になりたければ、それくらい割り切りましょう。





最後に

 今回は「職業作家への道」について述べました。

 短編小説で勝負したい方は、とにかく多くの「短編小説賞」へ応募して成績を残し続けてください。

 長編小説で勝負したい方は、自分が「賞金稼ぎ」「セミプロ」だと割り切って、確実に賞金が稼げる作品を書くのです。

 そうすれば、結果的に「プロ」へと近づけます。



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