1066.鍛錬篇:素材リストを作る

 今回は「お題」についてです。

 毎日「あなたの素の思考」を紙のノートへ書き出すトレーニングをするとき、どうしても書きたい内容が思い浮かばないこともあります。

 そのときに備えて「素材リスト」つまり「ネタ帳」を作っておきましょう。





素材リストを作る


「あなたの素の思考」を引き出すためのトレーニングですが、なにを書けばよいのか、とっかかりがなくて毎日同じことを書く人もいます。

 それではまったく話が広がりませんので、まずは「お題」を見つけては「素材リスト」に書き留めていきましょう。




素材リスト

「素材リスト」つまりネタ帳とは「あなたの素の思考」を引き出すための「お題」をまとめたものです。

「紙のノート」の一ページをあけておいて、日々の暮らしや読書、新聞やニュース、テレビ番組やCMなどで気になったものをすべてそこに書き留めます。

 毎日「あなたの素の思考」を引き出すトレーニングをするときに、ここを見て「今日はこの『お題』で書いてみよう」と選ぶのです。そうすれば、書き始めるのに悩まなくなります。

「素材リスト」作りには他にも効果があるのです。

 今までよりも「文章や物語へたくさん触れる」ようになります。

 毎日の「お題」を見つける作業は、実はとてもたいへんです。始めのうちは頭の中、心の中に「お題」がひらめいて、すらすらと書けます。しかし何十日と続けていれば「お題」なんて早々ひらめきません。たいていのものが出尽くしているからです。

 その場合は、以前書いた「お題」を再利用するのが手っ取り早いのですが、できれば多くのことに気づいてほしい。

 そこで日々「お題」になりそうなネタを見つけ出しては「素材リスト」に書き込んでいくのです。

 早々思いつかないのであれば、どこからか仕入れてくればよい。


 本コラムは、基本的に「私の素の思考」をそのまま書いています。

 しかしそれだけではどうしても発想に限界があるのです。

 そこで「小説の書き方」「文章の書き方」「物語の作り方」といった書籍を日々買い込んできました。

 しかしその中から、そのまま引き写していません。

 必ず「私」というフィルターを通して、私自身が納得できる情報にしてから「私の素の思考」として書いてきたのです。

 前篇である「対決篇」は、私が村上春樹氏の小説を生理的に受け付けないので、ナカムラクニオ氏の『47のルール』を引いて書きました。それでも嫌々な篇であったことは確かです。

「私の素の思考」から村上春樹氏の作品を見るとどうなるか。

 批判しかしなかったように記憶しています。

 それでも毎日連載が切れないよう、連載の「ネタ」になるからと『47のルール』を買って悪戦苦闘したのです。

 現在は「素材リスト」が空っぽなので、毎日連載がキツい新年を迎えています。

 毎日「今日はなにについて書けばよいのか」を四苦八苦しながらひねり出しているのです。

 皆様は私のように「小説の書き方」コラムを千日続けなければならないような状況ではないでしょう。

 それでも小説を毎日連載する必要に迫られることもあります。




連載小説はネタ勝負

 連載小説は定期的に読めるから人気が出るのです。

「今日次話が読めると思ったから楽しみに待っていたのに、なんの断りもなく次話が投稿されなかった」というだけで、多くの読み手があなたの連載小説から離れていきます。

 よほど魅力的な連載小説でなければ、あなたが投稿したいタイミングで掲載して高い人気を保ち続けるなんてできません。

 たとえば連載百話を超えていて、ブックマークが何千何万と付いていたとします。これほどなら、書き手のタイミングで掲載しても人気は保てます。

 しかし連載十話にも満たず、ブックマークもほとんどない状態では、定期的な連載が途切れたところで読み手のほとんどが離れていくのです。

「一日一エピソード」で書くと、すぐにネタが尽きます。早々ネタは思いつかないのです。

 しかし「一週間で一エピソード」で書くと、七日間はひとつのネタで執筆できます。その七日間に次のエピソードを思いつけばよいので、苦労は「一日一エピソード」のときよりも一/七になります。

 現実的には「月曜日から金曜日までの五日間で毎日連載する」方が多いのではないでしょうか。これなら平日だけチェックすればよいので、読み手も読みやすいですし、書き手も休息日を設けられて楽ができます。

 逆に「土曜日と日曜日だけ連載する」のもよいですね。週末連載であれば、仕事や学業が休みのときにまとめて読めます。


 ですが、平日連載と週末連載では書かなければならない分量に差が生じるのです。

 平日連載なら一日五分で読める程度が最も読まれます。だいたい千五百字〜二千字前後ですね。これなら読み手もSNSの返事待ちに五分でサクッと読めるため、時間つぶしにもってこい。小説投稿サイトのトップランカーはだいたい一回この字数幅で毎日連載しています。「総文字数÷投稿回」で調べてみるとすぐにわかるはずです。

 逆に週末連載なら一日八千字〜一万五千字程度あることが求められます。三十分ほどの暇をつぶせるのに適当な長さです。

 平日連載と週末連載では一回あたりに必要とされる文字数に大きな隔たりがあります。逆に言えば、一回何千字で書けるのかを知っていれば、平日連載にするべきか週末連載にするべきかがわかるのです。

 毎日コツコツと千五百字〜二千字前後で書けるのなら平日連載向き。

 まとまりがよいところまでを括って投稿したいのなら週末連載向きです。

 あなたがどちらのタイプかわかりませんが、これから小説を書きたい方は、まず毎日千五百字〜二千字前後を目標としましょう。そうすれば、小説を毎日書くトレーニングができるからです。毎日「あなたの素の思考」を紙のノートに書き出すトレーニングを終えたら、そのまま小説を書きましょう。

「あなたの素の思考」を紙のノートに毎日書き出すトレーニングで、毎日「文章を書く」ことに慣れてください。

 毎日「文章を書く」ことに慣れたら、毎日「小説を書く」トレーニングを始めるのです。そうすれば間違いなく執筆技能スキルは向上します。

 始めるのは早いほうが断然よい。

 このコラムを読み終えたら十分くらいで小説のワンシーンを書いてみませんか。





最後に

 今回は「素材リストを作る」ことについて述べました。

「素材リスト」があると、紙のノートに「あなたの素の思考」を書き出すトレーニングが継続しやすくなります。

「ネタ」が何十も何百もあれば、書くことに困りません。

 これは小説やマンガでも同じことが言えます。

「ネタ」があるから書き続けられるのです。

 四十年間連載を途切れさせなかった秋本治氏『こちら葛飾区亀有公園前派出所』も、「ネタ」がつねにストックしてあったから一週も連載を落とさない偉業を達成しました。

「ネタ」のストックの有り難みは、実際に小説を書くようになって初めて認識できるかもしれません。



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