1058.鍛錬篇:書きたくなくても毎日書け

 今回は「やる気」についてです。

「やる気」があるからやるのではありません。

 やってみたら「やる気」が湧いてくるものなのです。

「やる気」が湧かないから「あなたの素の思考」を紙のノートに書き出さないのは、小説を書きたくない本心が表れています。





書きたくなくても毎日書け


 小説や文章を書くのは、アスリートが本番に挑むのと同じです。

 じゅうぶんな準備を行なわなければ、満足のいく成果は得られません。

 前回皆様にお教えした「あなたの素の思考」を紙のノートに書き出すトレーニングは毎日行なってください。




やる気はやらないと湧いてこない

 よく「やる気が湧かないから今日はやめておきます」という方がいらっしゃいます。

 しかしこれ、実は脳科学の観点からも誤った認識なのです。

「やる気が湧いてこない」のではなく、「無理にでもやってみたらやる気が湧いてきた」が正しい。

 本物のアスリートは毎日のトレーニングを欠かしません。

 野球のイチロー選手や大谷翔平選手、サッカーの三浦知良選手や久保建英選手、卓球の張本智和選手や伊藤美誠選手、フィギュアスケートの羽生結弦選手や宇野昌磨選手。いずれも毎日トレーニングを続けた結果、世界で通用しているのです。

 もし彼らが「今日はやる気が湧かないのでトレーニングしません」と言い始めたら。おそらく世界を相手に戦えなくなるでしょう。

 毎日同じ内容のトレーニングを繰り返し続けてきたことにより、自信が手に入ります。その結果として世界で通用したら、その自信は揺るぎないものとなるのです。

 一流のアスリートは「やる気が湧かなくてもトレーニングを欠かしません」。そして「トレーニングを始めるとやる気に火が着き」ます。

 あなたは小説や文章を書くトレーニングを「やる気が湧かない」だけで終わらせていませんか。

「やる気が湧いてくる」のではなく「無理にでもやってみたらやる気が湧いてくる」ものなのです。

 そのきっかけを持っているかどうか。

 それでトレーニングが長続きするかどうかは決まります。


 たとえば毎日、腕立て伏せを千回、スクワットを千回するトレーニングを行なうとします。しかしただツラいだけのトレーニングでは、それこそ「三日坊主」にすらなりません。

 もし体重を毎日測っていて、トレーニングの翌日に体重が〇.一キログラム減っていたらどうでしょうか。「今日もトレーニングして体重を落とすぞ!」と「やる気が湧いてくる」はずです。

 しかしある程度体重が減ってくると、そう簡単には体重が落ちなくなります。

 このときに「もう体重は落ちないのかな」と思って元の生活に戻ると途端に体重が増えてしまいます。体重計にも載らないでしょう。そして気づいたら、トレーニング前よりも体重が増えていた。皆様も経験がありませんか。

 体重が落ちづらくなったら、なにをモチベーションにして「やる気を湧かせる」べきか。

 それこそ「無理にでもやってみたらやる気が湧いてきた」です。

 日常生活にトレーニングを組み込んでしまい、必ずトレーニングしなければならないように決めてしまいましょう。

 そうすればつらくても毎日トレーニングを始められ、動いているうちに「やる気が湧いてくる」のです。




書きたくなくても毎日書け

 小説や文章のトレーニングも理屈は同じです。人間の身体の一部を利用している点で、筋肉のトレーニングも、小説や文章のトレーニングも差はありません。

 小説や文章は、頭の中、心の中に明確なイメージがなければ書けない。

 だから「無理にでもやってみたらやる気が湧いてきた」が難しいと思い込んでしまいます。

 そう思い込みなのです。

 前回お話しした「あなたの素の思考」を紙のノートへ書き出すトレーニングであれば、頭の中、心の中に明確なイメージがなくても始められます。

 なにも思い浮かばなくても、今日が何年何月何日か、天気や気温はどうか。朝はなにを食べたのか。それくらいなら思い浮かびますよね。それをとっかかりにして、連想ゲームの要領でどんどん話を膨らませていくのです。

 ある程度書き出していると「やる気が湧いて」きます。どんどん書こうと思えますし、トレーニングに没入できるのです。

 だから「書きたくなくても毎日書け」と言っています。


 将来「プロの小説書き」にならなければ暮らしていけない。

 本コラムをお読みで、切羽詰まった方もいらっしゃるはずです。

 それだけ差し迫った状況であれば、小説や文章のトレーニングをサボってはなりません。毎日「あなたの素の思考」を紙のノートへ書き出すのです。プロのアスリートのように、毎日のトレーニングを欠かさないようにしてください。

 たったそれだけのこともできずに「プロの小説書き」は目指せません。

 ある程度小説や文章が書ける方は、毎日小説やエッセイを書きましょう。ただし読み返しも書き直しもしないように。前回書きましたが、これらは編集作業・推敲作業であって、執筆作業ではありません。


 小説が書けないのに「プロの小説書き」を目指すのは無謀もよいところです。

 ですが「お題」がなければ小説が書けない方もいらっしゃいますよね。

 その場合は、適当に選んだ小説投稿サイトで、日間ランキング上位の作品の「キーワード」「タグ」を「お題」に選びましょう。そのとき流行っている「キーワード」「タグ」を仕入れられるので、流行にも敏感になります。

 とにかく毎日なにかを書くようにしましょう。

「書く」習慣を身につけられるかどうか。「書く」習慣のない方が「小説賞・新人賞」を狙っても獲れるはずはないのです。


 なにがあっても毎日ノートに「あなたの素の思考」を書き出すトレーニングは続けましょう。たとえ「プロの書き手」になっても、このトレーニングは続けてください。

 日頃の努力はあなたを裏切りません。

 必ずや小説が書ける技能スキルを手に入れられますよ。





最後に

 今回は「書きたくなくても毎日書け」について述べました。

 毎日書く習慣が手に入らなければ、小説を書いて生活していくことなどできはしません。

 書くことがなくても、毎日ノートを埋めていくのです。

 小説投稿サイトで連載を始めたら、毎日書いて投稿する義務が生じます。

「任意でしょ」と思われるかもしれません。しかし連載小説は一定のペースで更新し続けないかぎり、誰も連載を追ってくれなくなるのです。

 それでは連載を始めるだけムダ。

 毎日小説を書いて投稿できるよう、毎日ノートを埋めるトレーニングを継続してください。これは将来の収穫のために種を植える行為なのです。



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