1024.面白篇:思っていることと違えば面白くなる
今回は「予想を越える」ことについてです。
ここでは「テンプレート外し」と「予定調和外し」のふたつをご紹介致しました。
冒頭ではテンプレート臭くても、その後の展開でレールを外れてください。
それが面白さへとつながります。
思っていることと違えば面白くなる
読み手は百戦錬磨の達人揃いです。数多くの小説を読んで、あらゆる事項について、書き手よりも知識があります。
もし、そんな読み手が思っていることと違っていれば、その物語は「面白い」と判断されます。
「テンプレート外し」「予定調和外し」と言い換えてもよいかもしれません。
テンプレート外し
テンプレートのよいところは、新たな展開を考えなくてもある程度の読み手をつねに確保できる点にあります。
弱点はその裏返しで、読み手が思っている展開をそのままなぞらないと評価されないことです。
ということは、テンプレートを守っているかぎり、一定数の読み手は確保できます。
しかしランキングに載れるかまではわかりません。
なぜなら、すでに同じテンプレートの作品がランキングの上位を占めているからです。
あるときなどは、同じテンプレートの作品がランキングを独占してしまいました。
だからテンプレートに従っているかぎり、読み手は確保できてもブレイクするまでには至りません。
また「小説賞・新人賞」を狙うときも、テンプレートを守った作品は選考さんのウケが悪いのです。「また同じテンプレートなのか」と飽きられています。それでも選考するためには最後まで読まなければなりません。
ここでもし、テンプレートが導入部だけで、以後オリジナルな展開が待っていたらどうでしょう。
「また同じか」と思い込んでいた選考さんが違いに気づくと「これは今までにない展開だな」と注目してくれます。
テンプレートに従うと「またか」ですが、途中からテンプレートを外れていったら「この先どんな展開になるんだろう」と前のめりになってくれるのです。
となれば「小説賞・新人賞」で有利なのは「導入部だけテンプレート」で「以後オリジナル展開が待ち構えている」作品になりますよね。
実際「小説賞・新人賞」に選ばれるのは、テンプレートなタイトルが付いてはいるものの展開がテンプレートから外れている作品です。
つまり「テンプレートな導入部」でまずこのテンプレートが好きな読み手を惹きつけて、その後テンプレートから外れていってテンプレ好きを驚かされてついつい深みまでハマり込ませてしまうのです。
テンプレートは絶対ではありません。読み手を誘い込むための導入部フォーマットです。導入部を過ぎたら、どんな展開にしても書き手の自由。どんどんオリジナルな展開をしていきましょう。
テンプレート作品ならスタート地点はすべて一緒です。そこからどこへ行くのかは書き手の自由に選択できます。全員が東京駅に集合し、そこから北海道を目指す人、長野を目指す人、新大阪を目指す人など、ゴール地点は全員違っているべきなのです。もしゴール地点を同じにしたいのなら、経由地を変えましょう。横浜駅から川口駅まで行きたいとして、新宿駅経由か東京駅経由かでどんな経路になるのかは違ってきますよね。ここまで同じくしてしまうと、なにもあなたが書く必要がないのです。すでに誰かが書いています。
テンプレートは出発点でしかないのです。どこを経由してどこへ到着するのか。そこに書き手のオリジナリティーが表れます。
予定調和外し
テンプレートに似ているのが「予定調和」です。
予定調和は作品の構成自体を指しています。
たとえば過去に傷を持つ仲間たちが、それぞれどう克服していくのか。この過程がひとりひとりの予定調和になります。
そして物語の「
勇者が魔神に家族を殺されて復讐する話であれば、勇者が魔神を倒して復讐を果たすだろうというのが予定調和です。出発点が決まれば、読み手は到着点をある程度察します。
だから読み手が察した到着点つまり終わり方をするのが予定調和なのです。
予定調和で終われば、察したとおりの「
ただし満足度が最高になるわけではありません。
読み手は「よい意味で」察していた「
推理小説で考えればわかるのではないでしょうか。
冒頭を「死体を転がせ」で始めたとき、その殺害方法や状況で最も疑わしい人物の目星をつけます。そしてもし真犯人がその冒頭で目星をつけた人物の場合、「なんだ、最初の読みどおりじゃないか」となって、それほど満足してくれません。
冒頭で目星をつけた人物が、物語を進めると途中で死んでしまう。これだと「あれ? この人物が犯人じゃないの?」と読み手は裏切られてしまうのです。
ここから「真犯人は別にいる」パターンと「途中で死んでしまった最初の容疑者が真犯人だった」パターンが生じます。
「真犯人は別にいる」パターンが多いのも推理小説の特徴です。
しかし「途中で死んでしまった最初の容疑者が真犯人だった」パターンであっても、読み手は予定調和を外されたと感じます。最初からその人物が真犯人だと目星をつけていても、途中で死んでしまうと「予定調和ではないのか」となって「誰が真犯人なのか」わからなくなるのです。推理がいったんリセットされてしまいます。
単純な推理ものしか書けない方は、途中で犯人を死なせてしまうとよいでしょう。それだけで、複雑な推理ものに変わります。途中で死んでしまうと「真犯人は別にいる」のではないかと読み手が疑ってしまうからです。捜査を進めていくと他にも怪しい人物が何人か出てきます。すると「この中の誰かが真犯人だ」と読み手は改めて予定調和を考えるのです。しかし動機はあれどアリバイが完璧だったりまったくアリバイが証明できなかったりします。推理小説では通常アリバイが証明されない人物は犯人ではないのです。犯人はアリバイを立証した人物であることが多い。これは「アリバイトリック」を暴くことが、推理小説の醍醐味だからです。だからこそ途中で死んでしまった人物が真犯人なら、予定調和が外されます。
このように、予定調和は読み手の誰もが持っています。
逆手にとって予定調和を外されれば、たとえ物語の始めから「こうなるのではないか」がそのとおりになっても、読み手は大満足するのです。
一回も予定調和を外されずにそのとおりに終わるから感動が薄くなります。
わざと一度予定調和を外してみる。
このテクニックで読み手の満足度は大幅に高まります。わかっていても実践しようとするとなかなか難しい。どうやって予定調和を外せばよいのか。物語によって異なるからです。
「剣と魔法のファンタジー」であれば、主人公の勇者が途中で死んでしまうとか、「対になる存在」であるドラゴンが他の人物に倒されるとか。一般的なヒロイック・ファンタジーの予定調和をあえて崩してしまうのです。勇者パーティーの仲間が「追放」されて「ざまぁ」へ向かうのも、元をただせば「予定調和外し」と言えます。
「予定調和外し」にはまだまだ多くの可能性が残されているのです。意外なものを外せば、読み手が予想もしなかった「予定調和外し」が完成します。
読み手は「予定調和外し」を欲しているのです。ぜひ読み手を「よい意味で」裏切ってください。
最後に
今回は「思っていることと違えば面白くなる」ことについて述べました。
「テンプレート外し」は冒頭だけテンプレートを拝借し、そこからいかに脱線するかを指しています。
「予定調和外し」は物語の「
テンプレートで始まって予定調和で終わると、ガチガチの鉄板展開になります。つまり「王道」ですね。
ただ道のりを変えることで、一味違う作品にはできます。でもテンプレートから導き出された予定調和で完結すると「やっぱりな」と思われて満足度が低まります。
であれば「テンプレート外し」と「予定調和外し」はセットでやるべきです。そうすれば、物語の先読みはできなくなります。
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