1007.面白篇:共感という面白さ

 今回は「共感」から面白さを考えてみます。

 読み手に「共感」してもらえる作品は、間違いなく「面白い」のです。

 なぜでしょうか。





共感という面白さ


 小説の評価にかかわる「共感」という面白さには二種類あります。

 他の読み手が「これは面白いからぜひ読んで」という同意を求める「共感」。

 そして読み手が主人公や他の登場人物のさまざまな感情に響き合う「共感」です。

 小説投稿サイトで読まれる小説とは、とくに前者の「共感」になります。




同意を求める共感

 小説投稿サイトで読みたい作品を探すとき、あなたはどんな手段を用いますか。

 ある方は「新着一覧」から「タイトル」「あらすじ」を読んで「これは面白そう」と、独特な嗅覚で良作を探り当てるのかもしれません。

 はっきり言って、こういう方はとても稀な存在です。最大手の『小説家になろう』で新着一覧に掲載される作品は一時間で五百作品以上あります。一時間でこの中からひとつを選ぼうとすれば、一分間で八作品以上を吟味しなければなりません。一作品につき「タイトル」「あらすじ」をチェックできるのは七秒ほど。まさに神業なのです。

 そこで新着の中から「読みたいジャンル」の作品だけに絞ってチェックしたいと考えますよね。「ハイファンタジー」「異世界ファンタジー」だけを読みたいなら、検索画面でジャンルを指定して新着順で検索するのです。

『小説家になろう』では「ハイファンタジー」が占める割合は全投稿の三割ほどと見られます。これはお昼の時間帯で確認したので、夜や朝では割合は変わるかもしれません。

 いちおう三割と見積もって以後お話しします。

 新着全体の三割であれば、一作品に二十秒ほどかけられるのです。これなら「タイトル」と「あらすじ」をチェックするにはギリギリですが、できない話でもありません。

 しかしより賢ければ「キーワード検索」も合わせて利用するはずです。

「異世界転生ファンタジー」が読みたければ「異世界転生」キーワードを、「異世界転移ファンタジー」が読みたければ「異世界転移」キーワードを付ければよい。このふたつのキーワードは登録必須なので、このキーワードが付いていれば確実に「異世界転生」「異世界転移」であるとわかります。

 読み手が男性主人公の小説が読みたいと思ったら「男主人公」キーワードで検索し、女性に囲まれた主人公を読みたいければ「ハーレム」キーワードを設定すればよい。

 こうして「キーワード」でどんどん絞っていけば、新着一覧の「タイトル」と「あらすじ」を読む作業から解放されます。つまり具体的に読みたい小説をひとつ選んで読み始められるのです。

 こうしてより多くの読み手が読みたい「キーワード」を付ければ、多少新着から離れていても、検索結果の三ページ以内に残れるかもしれません。

 実は、たいていの小説投稿サイトの検索では、必ずしも「タイトル」や「キーワード」に特定キーワードを書く必要がないのです。もちろんあったほうがわかりやすい。ですが「あらすじ」に書くだけでも検索には引っかかります。たとえば往年の「魔女っ子」ブームの再燃を狙って「魔女っ子」作品を投稿する際に、「タイトル」にも「キーワード」にも「魔女っ子」と入れる必要がないのです。「あらすじ」の文脈の中に「魔女っ子」という単語を織り込んでも、検索に引っかかります。

 だから「タイトル」「キーワード」で特段「チート」「転生したら」「ステータス」「スキル」「レベル」「スローライフ」と書かなくてもよいのです。それらは「あらすじ」に書けばすべて省ける単語となります。

「タイトル」と「キーワード」はもっと差別化できる要素を書きましょう。

 それだけで、そのジャンルの新着を待ち侘びている読み手へ的確に作品が届き、閲覧数(PV)が高まりますし、ブックマーク数もそれにつれて増えていくのです。

 すると気づかぬうちにランキングに入っていて、そこから人気が爆発することもあります。

「同意を求める共感」とは、詰まるところランキングに載った作品は多くの読み手に読まれるということです。「皆がよいと言っている作品を読めばハズレは引かない」「これだけ総合評価ポイントが高ければ、さぞ面白いに違いない」という根拠のもと、他の読み手と「共感」していきます。




キャラの感情に共感

 それらの他、主人公や登場人物の感情の動きに「共感」するのもありです。

「同意を求める共感」のような即効性はありません。読み手は実際に作品を読みます。主人公に感情移入して味わう感覚が「私も主人公と同じ反応をするかも」「ここで主人公が嘆きたくなる気持ちもわかるなぁ」と共通点が見つかれば、それが「共感」です。

 嬉しくなる、悲しくなる、寂しくなる、侘びしくなる、憤る、笑う、泣く、怒る、虚無感に苛まれるなど、感情は百人百様です。

 小説を読むとき人が主人公に入り込もうします。主人公の感情の動きを頼りに「この主人公はこんなときに怒るんだ」「こんなときに笑うんだ」「こんなときに悲嘆に暮れるんだ」と性根を心に沿わせるのです。こうやってひとつひとつの感情の動きで読み手は主人公へと感情移入していきます。

 この過程を丁寧に書けば、読み手は必ず主人公へと感情移入できるのです。

 主人公の一人称視点がほとんどであるライトノベルでは、主人公の感情の発露を読み手へ違和感なく読ませるよう専念してください。

 できれば喜怒哀楽などの感情はまんべんなくがよいのですが、意外と難しいかもしれません。笑ってばかりいる人に感情移入するのは難しい。泣いてばかりいる人に感情移入するのは難しい。しかしこんなときは笑って、こんなときに泣く。この基準が明確なら、読み手には主人公という器の形がはっきりと見えるのです。

 だから笑いっぱなしの主人公、泣きっぱなしの主人公、怒りっぱなしの主人公という人物設定にはしないほうがよいでしょう。平均的な人間の持っている感情の幅に収まるのが主人公の正しい書き方です。喜怒哀楽の明確な主人公は、それだけで読み手の心をつかみます。


 だからこそ小説投稿サイトでは、いずれかの作品で共感された登場人物の感情が、あっという間に他の書き手へ拡散し、同じような感情ばかりであふれてしまいます。

 たとえば憤っている感情が衆目を集めたら、他の書き手たちはこぞってキャラが憤っている展開を書くのです。

 注目を集めるためならなりふりかまわず流行りを追うのは一概に悪いとは言えません。ただ同じ感情だらけになってしまうと読み手が食傷ぎみになります。皆様も読んでいてつまらなく感じてしまいませんか。

 だから物語を流行りだけで展開させると、評価されづらくなります。

 あくまでも当初の「プロット」どおりに展開し、そのときどきでふさわしい感情の発露を読ませるべきなのです。

 そうであれば、キャラの感情の動きに「共感」を覚えてもらいやすくなります。つまり感情移入させやすくなるのです。

「感情移入」つまり読み手が主人公に「感情を移し入れら」れれば、その先がよほどおかしな展開でないかぎり親しみを覚えます。





最後に

 今回は「共感という面白さ」について述べました。

 読み手として小説を読むと、「こういうのわかるなぁ」とつい思ってしまうような表現を目にしませんか。

 それが「共感による面白さ」です。

 納得できる表現に出会うと、読み手は作品に惹き込まれていきます。あとは最後まで読み手が納得できる表現を書き続けられれば、多くの方から評価される作品になるのです。



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