991.筆洗篇:あらすじやキーワード登録の注意点【回答】

 今回はご質問に対して回答致します。

 あらすじやキーワードでネタバレしてしまうことがありますよね。

 それはバレてはならないものだったのでしょうか。バレていたほうがよかったものでしょうか。

 そういう基準であらすじやキーワードを設定しましょう。





あらすじやキーワード登録の注意点【回答】


 今回はご質問に対して回答致します。

『小説家になろう』での「あらすじ」や「キーワード」、『ピクシブ文芸』での「キャプション」や「タグ」、『カクヨム』での「キャッチコピー」や「紹介文」や「タグ」は登録する際に気をつけてほしい点があります。

 なにを気にするべきなのでしょうか。




あらすじ・キャプション・紹介文

 長くなるのでこの三つをひとまとめに「紹介文」として説明致します。

「紹介文」は、タイトルで興味を持った読み手が最初に触れる物語の入り口です。

 この作品はどんな世界観・舞台で繰り広げられる、誰が主人公の話なのか。「紹介文」ではまずこれを明確にする必要があります。

『小説家になろう』で「異世界転生ファンタジー」を掲載するとき、「ハイファンタジー」ジャンルを選択し、必須キーワードとして「異世界転生」を付けなければなりません。『カクヨム』では「異世界ファンタジー」を選択します。必須タグは用意されていないので、タグに「異世界転生」と書くか、「紹介文」に異世界転生ファンタジーであることを書くかを選ぶべきです。

 一見すると『小説家になろう』のほうが「紹介文」の難易度は低く感じられます。それなら『カクヨム』でもタグに「異世界転生」と書けばよいのです。

 では「タグ」(キーワード・タグをまとめて「タグ」と表記します)に書いてあれば「紹介文」に書かなくてよいのか。疑問に思いますよね。

 結論から言えば「書かなければならない」のです。

 なにも「紹介文」の中に「異世界転生」という単語を書けと言っているわけではありません。

 どんな「異世界転生」なのかを書くのです。


 たとえば「交差点で信号待ちをしていると、子どもが横断歩道の信号を無視して道路へ出てしまう。連れ戻そうと俺も道路へ立ち入るとすでに大型ダンプカーがこちらに向かって突っ込んでくる。急ブレーキ音が鳴るのを聞きながら、俺は子どもを歩道へと突き飛ばした。それが精いっぱいだった。突っ込んでくる大型ダンプカーに撥ね飛ばされたと思ったら、意識が空中で舞っている。見下ろすと全身血だらけの俺の姿が見える。俺は死んだのか。そのとき目の前に何者かが現れた。「あなたは死にました」。振り向くと背中に翼の生えた天使の姿をした人物が飛んでいた。「あなたは選択できます。このまま天国へ行くか、この世界でもう一度同じ人生を歩むか。もしくは異世界で生まれ変わるかです」」と書いたらどうでしょうか。

 誰が読んでも「これは異世界転生ファンタジーだな」と明らかではないでしょうか。


 しかしさすがにこの例文は長い。もっと削って、どんな異世界へ転生するのかを記載しましょう。

「目の前で信号を無視した子どもが道路へ飛び出した。子どもを連れ戻そうとするが、そこへ大型ダンプカーが突っ込んできた。子どもを歩道へと突き飛ばした直後、大型ダンプカーに撥ねられた。強烈な痛みを感じたと思ったら、なぜか俺は宙に浮いていた。見下ろすと血まみれの俺の姿がみえる。「あなたは死にました」。その声に振り返ると天使がいた。「あなたは選択できます。このまま天国へ行くか、これ世界でもう一度同じ人生を歩むか。もしくは異世界で生まれ変わるかです」。天使の話では異世界には剣と魔法を用いた争いの絶えない地域があるらしい。俺はためらったのち異世界に賭けてみることにした。」

 これで「異世界転生」で異世界が「剣と魔法の世界」であることが読み手に伝わります。

 しかしまだじゅうぶんではありません。


 現在「異世界転生ファンタジー」は小説投稿サイトの中で一大ジャンルを築いています。そこに上記のような「異世界転生」の仕組みを説明しても、皆がすでに知っていることなのです。

 であれば「異世界転生」を説明するもっとスマートな方法があります。

「事故で異世界へ転生した。そこは剣と魔法と魔物が支配する乱世だった。農家の息子として育てられた俺は、魔物たちを根絶やしにする冒険の旅へ出立することにした。」

 とても短くなりました。「異世界転生」がすでに共通語となっているため、こう書いても読み手は「これは異世界転生ものだ」とわかるのです。

 前世がなんであったかも転生する過程も説明する必要はありません。すべて省略できます。


 ここで注目したいのは、「紹介文」ではネタバレにならない範囲のことしか書いていません。

「紹介文」はあくまでも読み手をあなたの作品へ導く効果があります。読み手を連れてこられなければ「紹介文」としては失敗です。




キーワード・タグ

 長くなるのでこのふたつをひとまとめに「タグ」として説明致します。

「タグ」には各小説投稿サイトで「必須」となっているものがあるのです。

 たとえば『小説家になろう』なら「R15」「残酷な描写あり」「ボーイズラブ」「ガールズラブ」「異世界転生」「異世界転移」、『カクヨム』なら「残酷描写有り」「暴力描写有り」「性描写有り」が「必須タグ」になっています。

 手酷い目に遭わせる表現があれば「残酷描写」です。暴力的な表現があれば「暴力描写」は必ず付けます。性的な表現があれば「R15」「性描写」ですが、完全に性行為そのものを書く場合は「成人指定」にして『小説家になろう』の外部サイトで閲覧することになるので注意してください。『カクヨム』は「性描写有り」としても『カクヨム』本サイト上から閲覧できるので、未成年が見るかもしれないと想定して本文を表現するように心がけましょう。

『ピクシブ文芸』を避けたのにはわけがあります。ピクシブ文芸では投稿話がすべてバラけているため各投稿話ごとに別々の「タグ」を付けられるのです。だから暴力描写がある回だけ、性描写がある回だけに「必須タグ」を付けられます。とても便利ですが、読み手が未成年であればすべての回を読めなくなるので、話の整合性がつくように書くのが難しくなるはずです。


「必須タグ」以外の任意で付けられる「タグ」では、物語が最終的にバッドエンドになる可能性があれば「バッドエンド」と付ければよい……ほど単純にはいきません。

「バッドエンド」タグを最初から付けてしまうと、それだけで読まない方が増えます。連載が終わった後になってから「バッドエンド」タグを付けるべきです。

 似たようなものに「主人公死亡」が挙げられます。最終的に主人公が死んでしまうことが確定されている連載を追ってくれるほど心の広い読み手は少ない。こちらも連載が終わってから「主人公死亡」タグを付けましょう。まぁ「異世界転生」ものは必ず一回は死ぬんですけどね。

 主人公の最終的な状態としては「主人公最強」タグもあります。こちらは読み手が積極的に検索しているので、最初の投稿回から「主人公最強」タグを付けておくべきです。似た「タグ」である「チート」「俺TUEEE」はもはや古いタグなので、どうしても用いたい場合は「主人公最強」とセットで使うようにしてください。

 任意タグは、読み手が求めているものなら最初から付ける。読み手が最後まで知りたくないものなら終わってから付ける。これでなんの問題もありません。


 やってはいけないのがウソの「タグ」を付けることです。

 本当なら「バッドエンド」で締めくくるはずなのに、それでは読まれないだろうと見越して「ハッピーエンド」タグを付けて連載してはなりません。読み手は「ハッピーエンド」を期待して読み進めてきたのに「バッドエンド」になって終わられたときほど「裏切られた」意識が強まるのです。

 性描写がないにもかかわらず「性描写有り」の「タグ」を付けるのも同様。逆に性描写があるにもかかわらず「性描写有り」の「タグ」を付けないのもよくありません。

「タグ」は作品の属性を端的に表したものです。「タグ」の情報を利用して読み手は作品を探しています。そこでウソをつかれたら、あなたの小説は今後いっさい読まれなくなるのだと肝に銘じてください。

 とくにそれが「必須タグ」であるなら、最悪の場合アカウントの停止や削除につながりかねません。

 だから絶対にウソの「タグ」を用いてはならないのです。

「バッドエンド」になるのが既定の構想だったとして、連載開始から必ず「バッドエンド」タグを付けなければならないという規則はありません。読み手を減らすことにもなりますので、読み手を選んでしまう「タグ」はギリギリまで付けなくてよい。連載が終わって読み手が「バッドエンド」を読んだ後に「バッドエンド」タグを付けるべきなのです。

 これならウソはついていません。そしてこれから読もうとしている方には「バッドエンド」タグがあることで「この物語はバッドエンドです」と読む前に申告しています。まさに「看板に偽りなし」です。


 任意の「タグ」は、その状態が訪れてから付けてもよいものがあります。事前に付けることで読み手を減らしてしまう類いの「タグ」です。

 逆に事前に付けることで読み手を増やせる類いの「タグ」もあります。「主人公最強」や「男主人公」などですね。

 読み手になったときを考えてください。最初からこの「タグ」が付いていると読まないな、と思うものは付けない。付いていたら真っ先に読みたいな、と思う「タグ」は最初から付ける。そう決めるだけで「タグ」を正しく設定できますよ。




注意書きとネタバレ

「紹介文」「タグ」で、そこに書くと先々の展開がバレてしまうものもあります。それこそ「主人公最強」タグなんて、どんな逆境に陥っても「主人公が逆転勝ちするんでしょ」と読み手にバレているのです。だからどんなに主人公を窮地に追いやっても「どんな勝ち方をするんだろう」とワクワクしながら読みます。

 ある人物から見て幸福で、別の人物から見て不幸になる「メリーバッドエンド(メリバ)」を想定しているときも、最初から「メリバ」タグを付ける必要はありません。こちらは「バッドエンド」タグよりもさらにネタバレを気にするべきです。

 基本的に「ハッピーエンド」タグと「バッドエンド」タグは、連載が終了してから付けてください。「メリーバッドエンド(メリバ)」も同様です。

 連載が終了してから「この作品はバッドエンドです」「この作品はメリバです」と「タグ」で明示すればよいのです。


 連載小説を読む醍醐味は「この先どうなるかわからない」点にあります。

 読む前から「ハッピーエンド」「バッドエンド」がわかっていてはハラハラしてこないのです。

 主人公が無双するような物語なら、最初から「主人公最強」タグを付ければ、かえって「このピンチをどう逆転するのかな」とワクワクしてきます。「主人公最強」でも勝ち方までは提示していませんからね。





最後に

 今回は「あらすじやキーワード登録の注意点【回答】」について述べました。

 連載中の「紹介文」「タグ」では、絶対にネタバレしないように注意してください。ネタバレした途端にその先を読まれなくなります。

 逆に「主人公最強」のような「わかっていたほうが読まれる」情報というものもあるのです。こちらは積極的に付けていきましょう。

 付けるべきか付けないべきかで迷ったら、読み手になったつもりで考えてください。

 自分ならこの「紹介文」「タグ」を見たら読まないな、と思ったら付けない。逆にこの「紹介文」「タグ」を見たら積極的に読みたいな、と思ったら付けるのです。

 ネタバレになるのか煽りになるのかは、書き手側から見ただけでは見分けがつきません。



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