990.筆洗篇:投稿済み作品の修正やリメイク

 今回は「修正とリメイク」についてです。

 一度掲載してしまったら、誤字脱字以外の編集はしないでください。

 編集は今連載を追ってくれている読み手の方々を愚弄する行為です。





投稿済み作品の修正やリメイク


 小説投稿サイトで連載していると、投稿済みの部分を修正したくなるかもしれません。

 多くの書き手は「気づかれないうちに書き換えてしまえ」と思い、黙って書き換えているのではないでしょうか。

 しかし、一度投稿したものを後になって書き換えるのはオススメできません。




一度投稿したらやり直せない

「小説投稿サイトに作品を掲載する」という行為は、「紙の書籍で校了する」のと同じです。「紙の書籍」では一度校了してしまうと、基本的に誤字脱字以外の変更は許されません。

 どうしても書き換えたいのであれば「改訂版」を出す以外にないのです。

 小説投稿サイトに一度掲載した作品も、同じく誤字脱字以外の書き換えをしてはなりません。機能としては後からいくらでも編集や変更ができます。だからといって無節操にホイホイと編集・変更し続けると、読み手はあなたの作品から離れていくのです。

 読み手は「私がこれまで読んできた作品と違っている」と感じたら、そこで一気に興が醒めてしまいます。

 だから、よほどのことがないかぎり「一度投稿したらやり直せない」と覚悟を決めて投稿ボタンを押してください。

 たとえば「第一話で異世界転生するシーンを書いたけど、実はゲーム世界転生だったことにしたい」と書き直してしまったら、作品の方向性自体が異なってしまいます。これで読み手に「黙って読め」と言えるでしょうか。

「一度投稿したらやり直せない」と覚悟を決めてください。

 もし覚悟できないのであれば、投稿するべきではないのです。

 どうしても書き換えたいときは、以降の展開で大胆に軌道修正を図るしかありません。


 たとえば「剣と魔法のファンタジー」のつもりで書き出したが、宇宙にも行くから単純な「剣と魔法のファンタジー」とするのは無理がある。「SF」に変更したいとしても、作品はすでに「剣と魔法のファンタジー」で進めているから、投稿済みを書き換えて対応するしかない。だから書き換えざるをえない。

 そうではなく「剣と魔法のファンタジー」を続けながら、じょじょに「SF」要素を増やしていけばよいのです。日本のような島国を舞台にしているのなら、大陸などじょじょに規模を大きくし、やがて惑星を扱い、宇宙へと活躍する舞台を広げていきます。

 すると「剣と魔法のファンタジー」が「SF」へと方針転換していくのです。ただしやりすぎは禁物。ここまで大幅な方針転換は、それまでの読み手を置いてけぼりにしかねません。

 少しずつ変えていきましょう。たとえば「宇宙服」が発掘される、または敵が持っていた。「なにに使うのかわからない甲冑を手に入れた」ようなものです。重いし動きづらい。防御力だけは高いでしょうが、これを着て戦うのは明らかに不利です。ではなにに使えばよいのか。それを賢者に聞きに行く。という展開なら、じょじょに話を「宇宙」へ転じられます。

 これを「宇宙服」を手に入れた。「宇宙服」を着込んで転移魔法で宇宙空間へと飛び出した。という展開にしてしまえば。「なぜ主人公は宇宙の存在を知らないのに宇宙服を知っているのだろう」と疑問が湧きますよね。

「異世界転生ファンタジー」「異世界転移ファンタジー」なら、現代日本の知識をフラッシュバックして「これは宇宙服に違いない」と断定できるでしょう。多分にご都合主義ですが。

「一度投稿したらやり直せない」のですから、現状からあなたの理想とする展開に方針転換する場合は、過去の投稿を変えるのではなく、これからの展開でじょじょに変えていきましょう。


 ここまで大掛かりではなくても、軽微な描写を変更する必要が出てくるかもしれません。

 金髪の設定だけれど赤髪に変えたくなった。軍服は黒だけれど緑のほうが合いそうだ。ありえない話ではありません。

 このような場合、そんなに目くじらを立てる人はいないだろうと思ってしまうものなのです。しかし読み手は裏切られたと感じます。読み手の脳内イメージではすでに金髪に黒の軍服を着た主人公で固まっています。それを嘲笑うかのごとく赤髪に緑の軍服に差し替えられるのですよ。怒らないほうがどうかしています。


 では読み手に不快感を与えずに書き直す方法はないものでしょうか。

 ひとつだけあります。

「リメイク」するのです。




リメイクで展開を変える

 気軽に編集できる小説投稿サイトであっても、一度投稿したら書き直さないほうがよい。

 大幅な変更を予定しているのなら「リメイク」をオススメします。

「リメイク」とは、過去に制作された著作物を新たに作り直すことを指す言葉です。

 直近ではスクウェア・エニックス『FINAL FANTASY VII』のリメイクが2020年3月3日に発売されるとアナウンスされています。

 あなたが今連載している小説でどうしても書き直したい部分があるのなら、いったんその連載を終了し、一から作り直しましょう。

 あなたの作品を、あなたがいつ「リメイク」しようと誰の著作権も侵害しません。

 ただし気をつけておきたい点があります。

 固有名詞の「名称を変えて」ください。

 登場人物の名前を変える。都市や町村の名称を変える。通っている施設の名称を変える。国や大陸の名称を変える。

 ここまでやれば、同じ展開をしていても「前作のリメイクじゃん」と思われずに済みます。

 固有名詞が同じままで「リメイク」すると、どうしても前作に引っ張られて、読み手に強い違和感を抱かせてしまうのです。

 どうしても「愛着のある名前」だから名前を変えたくないのであれば、投稿する小説投稿サイトを変えてください。

『小説家になろう』で連載していたのだけど、「愛着のある名前を変えたくない」のなら『カクヨム』で「リメイク」を連載すればよいのです。

 小説投稿サイトをまたいで読んでいる方は多いのですが、掲載するサイトを変えてしまえば「別の展開でもかまわない」と思う方が大半だと思います。

 不安でしたら「あらすじ・キャプション」欄に「本作品は『小説家になろう』様で連載している同名タイトルをリメイクしたものです。固有名詞は同じですが、展開が異なります。アナザーストーリーをお読みになりたい方は『小説家になろう』様でご覧いただければと存じます。」とでも書いておけばよいでしょう。

 つまり同じ小説投稿サイトで「リメイク」する場合は、固有名詞をすべて変えるつもりでいてください。異なる小説投稿サイトで「リメイク」を連載するときは、固有名詞はそのままでもかまいません。馴染みのある小説投稿サイトでのみ活動するもよし。異なる小説投稿サイトでも活動してもよし。底本となる作品をあなたが書いたのなら、著作権など気にせず「リメイク」しましょう。





最後に

 今回は「投稿済み作品の修正やリメイク」について述べました。

 編集が気軽に行える小説投稿サイトであろうと、過去投稿回に手を加えてはなりません。加えていいのは誤字脱字の類いのみです。(どうしても第二話の閲覧数が少ない場合は、第一話を何度も手直ししてかまいません。でもこれは例外です。原則は過去投稿回に手を加えないでください)。

 どうしても作品を修正したくなったら潔く連載を畳み、本作の「リメイク」をしましょう。

 同じ小説投稿サイトに掲載するときは固有名詞を全取っ換えで。異なる小説投稿サイトに掲載するときは今の固有名詞のままでも問題はありません。



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