988.筆洗篇:連載の面白さと休載

 今回は「連載」についてです。

 たいへんだけど、乗り越えないかぎり「プロの書き手」にはなれません。

 毎日コツコツと投稿しているだけになっていませんか。

 毎回きちんと読み手を惹きつける構成になっているのでしょうか。





連載の面白さと休載


 小説投稿サイトで連載小説を投稿している方も多いと存じます。

 では、どのくらいの読み手に支持されているのでしょうか。

 最新話の閲覧数(PV)は第一話の何%くらいありますか。




オチと惹きがないと継続して読んでくれない

 連載小説で肝心なのは、一投稿回の中でも「オチ」と「惹き」をちゃんと作ることです。

「オチ」があるから「面白かった」と思われますし、「惹き」があるから「次も読んでみよう」と思われます。

 しかしあまりにも「オチ」と「惹き」を意識するあまり、つい文字数が多くなってしまうものです。

 小説投稿サイトの連載小説で適正な文字数は千五百字から二千字超といったあたり。五分で読める分量が最も読まれます。

「オチ」をつけようとすれば「オチに呼応する出だし」が必要です。つまり「オチ」のためだけに本文を削らなければならなくなります。「出だし」と「オチ」でそれぞれ文字数を食われてしまうからです。たとえば「オチに呼応する出だし」に百五十字を使い、「オチ」に百五十字を用いると、それだけで本文は千二百から千七百字超といったあたりになります。原稿用紙で三枚半から四枚半程度です。かなり短くなってしまいますよね。


 また「惹き」を作ろうとすれば「次回の展開を予期する結末」にしなければなりません。これまた分量を要してしまいます。「惹き」に二百字費やせば、本文は千百字から千五百字超です。これはかなり窮屈に感じませんか。

 では最も読まれる一投稿回あたり千五百字〜二千字超の中で、どのように「オチ」と「惹き」を設ければよいのでしょうか。




オチと惹きを含めて二千字という考え方

 全体を上限の二千字にして、うち「出だし」と「オチ」で合わせて三百字、「惹き」に二百字を使っても、残りは千五百字ですから連載の下限ギリギリを狙えます。だからトップランカーの連載小説は一回あたり二千字前後になることが多いのです。

 もしあなたが一回千五百字で書いているのだとしたら、「出だし」と「オチ」さらに「惹き」を入れて一回二千字を目指しましょう。

 先に二千字を書いてから「出だし」「オチ」「惹き」を入れて余った部分を削るのと、先に千五百字を書いてから「出だし」「オチ」「惹き」を当てはめるのとでは、後者のほうが効率はよいですよね。

 でもどう書いても一回の分量が二千字になってしまうこともあります。

 その場合はどうすればよいのでしょうか。




出だしと惹きを一体にする

 実は「出だし」と「惹き」はひとつにできます。

 具体的には、前の投稿回の「惹き」をそのまま次の投稿回の「出だし」にしてしまえばよいのです。そうすれば次の投稿回で「出だし」を書く必要がなくなります。

 この手法のよい点はもうひとつあります。

 それは「前の投稿回を読ませられる」点です。

 新しい投稿回で「出だし」を書かないため、面白い「オチ」がついても、今回から読み始めた読み手はなぜその「オチ」で締めくくれるのかがわかりません。気になって仕方がなくなるのです。

 だから前の投稿回を読んで確認します。確認して「だからこのオチになるのか」と納得するわけです。しかし今度はその回の「オチ」が気になってきます。するとさらに前の回を読み、気づくと「頭から読んだほうが効率がよいな」と気づいて第一回投稿から読み始めるのです。

 すると全体の閲覧数(PV)が高まりますから、ランキングポイントでも有利に働きます。

 初めのうちは「惹き」に次回の「出だし」を含めるのが難しいかもしれません。

 しかし、慣れてしまえばこれほど強力な展開は他に例を見ないのです。




次回投稿まで日が空くとき

 連載小説は基本的に毎日投稿するべきなのですが、それぞれ予定があったり急に用事が立て込んだりして毎日連載が途切れることもあります。

 そのとき前回きちんと「惹き」を入れてあれば、ある程度の間は読み手の興味を失わずに済むのです。これは長期連載をしているマンガがよい例だと思います。

『週刊少年サンデー』の青山剛昌氏『名探偵コナン』は、何週か投稿が空くときに「惹き」を入れてから休載しています。これにより、連載が途切れても読み手は次の回を楽しみに待っているのです。

『週刊少年マガジン』の森川ジョージ氏『はじめの一歩』は、基本的に意図的に掲載が空くことはありません。しかしたびたび休載します。これでは意図的に「惹き」を入れられません。森川ジョージ氏がどうしているのかといえば、「毎回惹きを入れる」ようにしているのです。「惹き」を毎回用いているので、どこで休載があっても読み手の興味を惹きつけるのです。まさに「惹き」の達人。これほど巧みに「惹き」を使っているマンガ家はいないでしょう。

 連載を一回も休載させずに四十年描き続けた秋本治氏『こちら葛飾区亀有公園前派出所』のような例もあります。

 しかし休載を続けながらも読み手が待ち続ける冨樫義博氏『HUNTER×HUNTER』のような例もあります。『HUNTER×HUNTER』も「惹き」を巧みに利用した構成になっているのです。


 読み手が待ち続けられる「惹き」を作るのは一種の才能です。

 小説でもすべての書き手が持っているわけではありません。

 書き手に一定以上の「知名度ネームバリュー」があり、休載するまでにその作品の面白さを味わえている必要があります。

 冨樫義博氏は『てんで性悪キューピッド』『幽☆遊☆白書』『レベルE』などで「知名度ネームバリュー」が高い。さらに『HUNTER×HUNTER』は休載する前までの評価も高い。よって休載が長期にわたっても読み手は待ちわびてしまうのです。

 だから読み手が待ち続けられる『惹き』を作るのは一種の才能だと言えます。築きあげたものがなければ、すぐに見限られてしまうのです。

 とくに「知名度ネームバリュー」のない方は、今の連載が好調でもできるかぎり休載しないでください。どうしても休載する場合は事前に予告しましょう。


 しかし急事はいつ起こるかわかりません。投稿より前に発生した場合は、本投稿の代わりに「休載のお知らせ」を投稿してください。

 小説投稿サイトにはたいてい投稿済みの文章を編集できる機能が付いています。だから「休載のお知らせ」を出しておいて、急事を乗り切ったらその投稿を編集して新しい話に差し替えられます。またあえてその投稿は残したままにして、日付だけを書き換えて「○○月△△日に再開しました。」と書き、いつもどおり続きを書けばよいのです。





最後に

 今回は「連載の面白さと休載」について述べました。

 まったく違うようで、根本的に同じ問題です。

「惹き」をうまく使えるかどうか。

 巧みに扱えれば読み手を魅了していつまでも連載を続けられますし、休載しても読み手は続きを待ってくれます。

 ですがいつまで待っているかは書き手の「知名度ネームバリュー」と作品自体の面白さに左右されます。

 駆け出しの新人が休載したら、誰も続きを待っていませんよ。

 だからこそ、一投稿だけで読める短編小説をたくさん書いて「知名度ネームバリュー」が高まるようにする必要があるのです。



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