983.筆洗篇:ストーリー先のあらすじづくり【No.188補講】
今回は「ストーリー先」のあらすじづくりについての補講です。
「
ストーリー先のあらすじづくり【No.188補講】
今回は「ストーリー」から小説のあらすじをつくることについての補講です。
小説投稿サイトではいちばん用いられている作り方だと思います。
「勇者が魔王を倒す物語」「見捨てた仲間を見返す物語」「意中の異性に告白する物語」「異世界に転生して現実世界の知識を活用して無双する物語」
これはすべて「ストーリー」が先に存在していますよね。
「主人公をどうしよう」ではなく、「どのような
鉄板と掛け合わせ
たとえば「勇者が魔王を倒す物語」なら『桃太郎』となんら変わりがありませんよね。
特殊な生まれの主人公が、人々を苦しめる「対になる存在」を倒して「勇者」として讃えられるのですから。まるっきり『桃太郎』ではないですか。
映画のジョージ・ルーカス氏&スティーブン・スピルバーグ氏『STAR WARS』だってそうです。ジェダイの騎士だった父から生まれた主人公が、人々を苦しめる銀河帝国軍の要塞デス・スターを破壊して人々から讃えられる話です。その意味では『桃太郎』と同じだと思いませんか。
では『桃太郎』と『STAR WARS』はなにが異なっているのでしょうか。
まず『桃太郎』は、大きな桃から産まれたとされています。これには諸説あり、桃を食べたおじいさんとおばあさんが若返って子作りした結果産まれたとするものもあるのです。
そしてなにごともなく長じた桃太郎が、人々を苦しめている鬼が島の鬼たちを退治する決意を固めます。
桃太郎は鬼が島を目指します。途中で犬・猿・雉が相次いで仲間となり、協力者を得るのです。
鬼が島に到着すると、桃太郎たちは連携プレーで、鬼たちをすべて退治します。
そして金銀財宝を村に持ち帰って物語は終わります。
『STAR WARS』は、当初父親がジェダイの騎士であったことはわかりません。普通の青年ルーク・スカイウォーカーはロボットのC−3POとR2−D2と接触して銀河帝国に囚われたレイア・オーガナ姫のホログラムを観ます。
知り合いのオビワン・ケノービとともにレイア・オーガナ姫救出の旅に出ようとするのですが、あいにく宇宙船がありません。街の酒場でハン・ソロとチューバッカのコンビと出会い、自称「宇宙一速いスターシップ」のミレニアム・ファルコン号でレイア・オーガナ姫の元へ向かいます。ルーク・スカイウォーカーは道中オビワン・ケノービからジェダイの騎士としての訓練を受けます。そんな中で銀河帝国軍の戦艦スター・デストロイヤーが現れるのです。その戦艦にはレイア姫と宿敵ダース・ベイダーも乗っていました。ルークたちはレイア姫の救出には成功しますが、頼みのオビワン・ケノービをダース・ベイダーに討ち取られてしまうのです。
しかしレイア・オーガナ姫から要塞デス・スターの設計図を手に入れた反乱同盟軍は、デス・スター破壊の任務に赴きます。ルーク・スカイウォーカーも戦闘機Xウイングを駆って参戦するのです。しかしデス・スターを守っていたダース・ベイダーが反乱同盟軍の戦闘機を片っ端から蹴散らしていきます。魔の手はルーク・スカイウォーカーにも襲いかかろうとしたのです。そこへ戦闘に参加しないとしていたハン・ソロがミレニアム・ファルコン号で駆けつけてダース・ベイダーを行動不能に追い込みます。そして反乱同盟軍最後の望みとなったルーク・スカイウォーカーは、コンピュータの照準器を使って爆弾を撃ち込もうとします。しかしオビワン・ケノービの「フォースを信じろ」という声が聞こえてきて、照準器を外してフォースの力でデス・スター最大の弱点である排気口へ向けて爆弾を撃ち込むのです。そしてルーク・スカイウォーカーは見事排気口へ爆弾を投入して中枢部を爆破し、デス・スターは崩壊します。
反乱同盟軍の基地へ凱旋したルーク・スカイウォーカーは、人々から「勇者」と讃えられて幕を下ろすのです。
『桃太郎』は単純な「勇者が魔王を倒す物語」の鉄板の形ですが、『STAR WARS』は「白馬の騎士が囚われのお姫様を救出する物語」が内包されていることがわかります。
そうなのです。
『STAR WARS』は「勇者が魔王を倒す物語」と「白馬の騎士が囚われのお姫様を救出する物語」をかけ合わせて生まれました。
「ストーリー先」で考えなければならないのは、どうにかして鉄板のストーリーに変化をつけることです。
『STAR WARS』はかけ合わせることで、目新しいストーリーを生み出しました。
そのおかげで、それぞれ単独でのストーリーの二倍は楽しめたはずです。
ハリウッド映画の多くは「単純なストーリー」ではなく「複数のストーリーのかけ合わせ」で出来ています。
小説も鉄板の「単純なストーリー」では、読み手が先を読んでしまいます。察しがついた時点でその作品はそれ以上読まれなくなるのです。
読み手をいつまでもワクワク・ハラハラ・ドキドキさせるには「単純なストーリー」でなく、それを「かけ合わせ」て新味を出しましょう。
単純なストーリーは出尽くしている
実を言えば「単純なストーリー」はすでに出尽くしているとされています。
各地に伝わる寓話・童話・伝承・神話と、劇作家ウィリアム・シェイクスピア氏の作品によってすべての「単純なストーリー」はカバーできるとされているのです。これは何回もお話しましたね。
だから今「誰も読んだことのないストーリーを書こう」と決意しても、「まったく新しい単純なストーリー」はけっして生まれません。
その事実がわかっていれば、ムダに時間を費やさなくなります。
No.352「人生なんて似たようなもの」でも言及していますが、ストーリーづくりは「
すでにあるストーリーの大枠はいただいて中身を入れ替えます。
登場人物の設定が変わったり、人間関係が変わったりするたったそれだけで、元の作品との関連には気づかれません。
「換骨奪胎」はこれからの時代には必須のテクニックです。
そして「換骨奪胎」したストーリーをさらに「かけ合わせる」と、もうどの作品が素になっていのかは判別できなくなります。つまり「新味」が出るのです。
「誰も読んだことのないストーリー」はイチから考えると絶対に生まれません。「換骨奪胎」して「かけ合わせ」てしまえば、それが「誰も読んだことのないストーリー」となるのです。
ひとつだけでは効果は半々ですが、ふたつあれば効果は抜群。必ず「誰も読んだことのないストーリー」が生み出されます。
今回お話した『STAR WARS』もふたつのストーリーを「かけ合わせ」ていましたよね。上映当時、世界中が『STAR WARS』に首ったけとなりました。誰も「勇者が魔王を倒す物語」と「白馬の騎士が囚われのお姫様を救出する物語」の「かけ合わせ」だなんて言い出さなかったのです。
天下のハリウッド映画でも「誰も観たことのないストーリー」なんて追い求めていません。
商業主義のハリウッド映画は、対象とする視聴層を想定して「どんなストーリーにするか」を決めています。そのとき「誰も観たことのないストーリー」は
マーベル作品なんて、ほとんどが『スーパーマン』の焼き直しですよね。超人でありながら、超人であるがゆえに主人公は苦しみます。マーベル作品は全部このパターンです。それなのに「換骨奪胎」して「かけ合わせる」ことで「新味」を生み出し、世界中で大ヒットします。基本パターンが一緒なのに、なぜか世界中から愛される。まさに「換骨奪胎」と「かけ合わせ」の本領発揮です。
最後に
今回は「ストーリー先のあらすじづくり【No.188補講】」をお送りしました。
今から「誰も読んだことのないストーリー」を考え出そうとしても、時間ばかりかかるだけでなにも生み出せません。あれを考えつけば「あの作品に似ている」、これを思いつけば「この作品に似ている」となり、いつまで経ってもストーリーが完成しないのです。
これからの創作手法は「換骨奪胎」して「かけ合わせ」ましょう。
それだけで、誰もが夢中になる小説は書けます。
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