971.筆洗篇:失敗を恐れない

 今回は「失敗を恐れない」ことについてです。

 何事も失敗を経験することで成長していきます。

 失敗せずに成功するなんてことは、まずありません。





失敗を恐れない


 あなたは必要以上に失敗を恐れていませんか。

 どうして失敗を恐れるのですか。それは「失敗すると怒られる」からではないでしょうか。

 しかし怒られたくないから小説を書かないというのでは、「紙の書籍」化なんてまったく手に届きません。

 人は、失敗を繰り返して成長するものです。

「怒られるからなにもしない」ではなく「怒られないように工夫を繰り返せ」ば技能スキルは必ず向上します。




至らなくて起こる失敗

 技能スキルが足りないがために失敗してしまうことがあります。

 こういうときは「もっと技能スキルを高めよう」と意識してください。

 執筆スキルが未熟だから失敗するのであれば、執筆スキルを高める努力をするのです。

『小説家になろう』では評価が「文章評価」と「ストーリー評価」に分かれています。

 ここで「文章評価」が低いようなら、日本語力を高めることに注力するのです。

「ストーリー評価」が低いようなら、物語の構成力を向上させましょう。


 日本語力を高めるためには、とにかく文章を数多く読みましょう。

 小説は比喩や表現などを学ぶのに有用です。できれば小説を数多く読んでください。比喩や表現だけでなく文体や語り口など、影響を受けるものが多岐にわたります。

 小説を読む時間がない場合は、新聞や雑誌などで過不足ない文章について学びましょう。正しい文章を身につけるには、推敲や校正の行き届いた新聞や雑誌などが手本となりえます。小説は意外と誤用が多いのです。どんな大家たいかであっても言葉を誤用しています。たとえば「足をすくわれる」を「足元をすくわれる」と書いていたり、ムスッとすることを「憮然と」と書いていたり。ちなみにムスッとするのであれば「憤然と」あたりが適当です。そのまま「ムスッとする」と書いてもかまいません。誤用するよりはるかにましです。

 スマートフォンをお持ちの方は、小説投稿サイトでトップランカーの作品を読んでもよいですし、電子書籍でプロの書き手の作品を読んでもよい。時間がないときは、ニュースサイトで気になる記事をチェックする方もいらっしゃるでしょう。

 ただしニュースサイトの記事は新聞や雑誌ほど推敲・校正されていないため、日本語力がかなり怪しいものも数多い。あなたが読む記事が正しい日本語で書かれているかどうかは、配信サイトや筆者の名前をチェックすることである程度わかります。一度でも「日本語力が怪しいな」と感じる配信サイトや筆者の記事は読まないようにしてください。誤用の多い文章を読み続けると、かえってあなたの日本語力を低下させかねません。


 物語の構成力を高めるには、小説やマンガやアニメ、ドラマや映画、ゲームなどに触れてください。ただしゲームは「ストーリーのあるもの」だけにしましょう。ストーリーのないソーシャルゲームではなく、RPGやアドベンチャーゲームなどに親しむのです。効率を考えるなら経験値稼ぎの必要なRPGよりも、選択肢で物語の流れが変わるアドベンチャーゲームのほうが適しています。

 物語にたくさん触れればよいので、童話や寓話、伝承や神話などをたくさん読めば効率よく物語のパターンを増やせるのでオススメです。

 眺める時間の短い順に並べると、マンガ、アニメ、ドラマ、映画、小説となります。

「文章評価」が高いのであれば、あえて小説を読む必要はありません。

 もし「文章評価」も低ければ、なにを差し置いてもたくさん「小説を読み」ましょう。

「小説を読まずして、小説を書くことはできない」というのは真理です。




攻めすぎて起こる失敗

 あまりにも比喩や表現にこだわりすぎて「過剰な」状態になってしまうことがあります。

 中には「たとえが多すぎて読みづらい」であったり、「よくわからない語句が使われていてわかりづらい」といった意見も寄せられるのです。

 こんなコメントや指摘を受けたあなた、実はひじょうに前向きな失敗をしています。

 多ければ減らせばよいだけなのです。わからなければレベルを下げればよいのです。

 たとえがまったくなくて味けなさすぎたり、あまりにも低次元な言葉遣いをしていたりするようでは、日本語力を高めるのはひじょうに困難になります。

 でも日本語力がありすぎるのであれば、適度に調整すればよいのです。

 また、書くジャンルを変えることで、その日本語力も活せます。

 たとえば歴史小説・時代小説・伝記小説あたりは、難しい言葉をどれだけ使えるかがひとつの指標となります。「これは腰を据えて読まないといけないな」と思わせるのがレベルの高い日本語力なのです。

 推理小説で難しい言葉を使うと、読み手が推理に集中できなくりますので、レベルは控えめにしてください。

 SF小説はコンピュータ用語や宇宙関連の知識をふんだんに盛り込めば説得力が生まれます。

 そして本コラムを最も読んでいるであろうファンタジー小説を書くときには、想定する読み手層を中高生に定めてください。中高生にもわかる日本語力を用いることで、より多くの方に読まれるようになります。基本的には漢語よりも和語を用いるようにしましょう。和語は中学一年生でも理解できますので、読み手が食いつきやすくなります。

 和語でも「おもねる」「あげつらう」「かまびすしい」など難しい語句はなるべく避けてください。難しい語句の基準は「常用漢字」「常用読み」に設定します。「阿る」「論う」「喧しい」はいずれも「常用漢字」ですが「常用読み」ではないので使うべきではありません。それぞれ「媚びへつらう」「あれこれと論じる」「騒がしい」で通じます。

 また和語よりも漢語のほうがわかりやすいこともあります。「そねむ」は「嫉妬しっとする」と書いたほうがわかりやすいですよね。

 わかりやすい和語が使えるなら和語にする。和語がわかりにくいときは漢語にする。

 この切り分けで、中高生にも読みやすい文章になります。


 エピソードを盛り込みすぎて、物語の構成がわかりづらくなることもあります。

 一度書いてしまったエピソードは削れませんから、調整するのがひじょうに難しい。

 本筋が分厚いのであればよいのです。脇道で盛り上がりすぎたのなら、本筋をそれ以上に盛り上げなければなりません。もし本筋が盛り上がらにいまま終わると、読み手に「尻すぼみ」の印象を与えます。これでは「ストーリー評価」を付けられませんよね。

 連載小説なら読み手に求められてサブキャラのエピソードも書くでしょう。そのときメインキャラを食ってしまうほど「過剰」に活躍させてしまうから失敗するのです。もしサブキャラを「過剰」に活躍させてしまったら、メインキャラはそれ以上に活躍させましょう。メインキャラを前面に押し出して、大活躍させるのです。それこそ「主人公最強」でなければなりません。


 いずれにせよ「過剰」で失敗するほうが「不足」で失敗するより挽回しやすいので、日本語力と構成力を高める努力は怠らないようにしましょう。





最後に

 今回は「失敗を恐れない」ことについて述べました。

 失敗には二種類あります。「不足」して失敗するケースと、「過剰」で失敗するケースです。

「過剰」で失敗するケースの場合は、適度に抑えればよいだけなので比較的対処しやすい。

「不足」して失敗するケースの場合は、小説を書く前に「評価の高い他人の書いた小説をたくさん読み」ましょう。

 小説は読まなければ書けませんよ。



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