966.筆洗篇:世の中はつねに変化している
今回は「世の流動性」についてです。
少し前までは「異世界転生」が異世界ファンタジーの主流でした。
今は少し流れが変化しています。
世の中はつねに変化している
今小説投稿サイトでは「異世界転生」ファンタジーが流行りです。
しかしそのブームはいつまで続くのでしょうか。もしかしたら明日には廃れているかもしれません。
今は新しい
飽和した「異世界転生」ファンタジーの読み手が、目新しい作品を求めているのです。
では、次に流行るのはどんなテンプレートなのでしょうか。
異世界転生は飽きられている
小説投稿サイトとくに『小説家になろう』では、少し前まで「異世界ファンタジー」ジャンルの主流が「異世界転生」もので占められていました。
しかし2019年10月5日時点の月間ランキングではトップ20のうち、3位、8位、16位の三作品のみです。
すでに「異世界転生」は飽きられています。
それでも「異世界転生」のテンプレートを使っている方はまだまだ多いのです。
過去のヒット作の影響を受けているからかもしれません。
単に連載開始当初は「異世界転生」が強かっただけかもしれません。
いずれにせよ、今でも「異世界転生」ファンタジーを書いている方は、早急にキーワードを見直してください。
「異世界転生」という必須キーワードは外せませんが、現在
では現在はどんなキーワードがウケているのでしょうか。
主人公最強の時代
現在の
あなたの「異世界転生」連載作品を振り返ってみれば、ほとんどの作品が「主人公最強」「チート」な作品ではないでしょうか。
そうなのです。「ハイファンタジー」のほとんどの作品は「主人公最強」「チート」で成立しています。なにも目新しい要素ではないのですね。
それなのに「主人公最強」「チート」というキーワードを付ければ格段に読まれます。
これを使わない手はありません。
あなたの「異世界転生」ファンタジー作品にも「主人公最強」「チート」のキーワードを加えるだけでいいのです。
「主人公最強」「チート」の勢いがいつまで続くかですが、これからかなり長い間続くと見ています。
そもそも以前「俺TUEEE」というキーワードの人気が高かった時期もあったのです。それが「異世界転生」に取って代わられました。その波が再び「俺TUEEE」に戻ってきたわけです。ただしキーワードとしての「俺TUEEE」は古臭い。どうやって「主人公が無双する話」であることを示せるのか。その結果としてゲーム用語である「チート」というキーワードが生まれました。
「チート」が流行ってきて、のちに「主人公最強」というゲーム要素のないキーワードへと置き換えられてきています。キーワードに空きがあるのなら「主人公最強」と「チート」の両方のキーワードを設定すると、読み手が増えるでしょう。
なぜ主人公最強なのか
では、なぜ今「主人公最強」が好まれるのでしょうか。
それは「読んでいてストレスを感じない」からです。
どんなに困難な障害であっても、「主人公最強」であれば難なく突破できます。「主人公が一度敗北を味わい、そこから泥臭く努力してリベンジを果たす」という古典的なヒーロー物語が受け入れられないのです。
そこから考えられるのは、「努力をしないでもハイスペック」であることを、ゆとり教育世代が求めているからかもしれません。
就職氷河期までの詰め込み教育世代は、「努力をしなければ能力は高まらないもの」であることを、テストの点数によって思い知らされてきました。だから主人公にも一度敗北を味わわせ、そこから起死回生を果たして「最終的に主人公が勝利する」物語が好まれたのです。
しかしゆとり教育世代は、テストで高成績を収めなくても叱られなくなりました。努力することが恥のような印象を抱いているのです。
小説にも当然「主人公が努力する姿」を求めていません。
「主人公は最初から能力が高いもの」という前提で語られるのです。
ゆとり教育世代はそもそも「自分の能力を試される機会が少なかった」から、「自分の能力は他人よりも高い」という根拠のない自信を持っています。
大学入学も一芸入試で入る生徒が多くなり、
現在のライトノベルの読み手は多くがゆとり教育世代となりました。だから当然根拠もなく「自分に自信がある」方ばかりです。
一度敗北して挫折するよりも、「最初からハイスペック」なのに真価を認めてもらえずに追放されたので見返してやるという形の「ざまぁ」小説が増えました。
しかし現在「ざまぁ」のブームも過ぎたようです。月間ランキングのトップ20内に6作品残るのみ。まぁ3割ですから、まだ需要はありそうですが、一時期の勢いはなくなっています。
敗北感を味わわされること自体を拒絶して、「最初からハイスペック」で無双するストーリーに多くの読み手が惹かれているのです。
挫折を味わうことを極端に嫌っているようにさえ見えます。
もちろん物語の要素として「一度敗北する」ことはあるのです。それでも、挫折はその一回のみ。残りは永遠に見返し続ける「ざまぁ」路線なのです。
読み手はそんな主人公に感情移入して、なにを味わいたいのか。
おそらく「優越感」だと思います。
「自分は他人よりもすぐれている」という「優越感」こそが、ゆとり教育世代の根本にあるのです。
そこまで思いを致せば、なぜ「主人公最強」が最も好まれるのかわかるのではないでしょうか。
読み手は「優越感」を覚えたいから小説を読むのです。
累計出荷部数が三百万を超えている芥川龍之介賞・又吉直樹氏『火花』も、ゆとり教育世代にはウケませんでした。それでも三百万部近くは売れているわけですから、需要がないわけではないのです。人口に占める割合は、依然として詰め込み教育世代がゆとり教育世代よりも多い。だからこそ、よりパイの大きな詰め込み教育世代を
しかしゆとり教育世代がメインの読み手層であるライトノベルでは、「主人公最強」が望ましい。主人公に感情移入している自分が挫折するのは間違っている。私は「やればできる」人物だ。ゆとり教育世代はそう思っています。
だからこそ「主人公最強」が今の『小説家になろう』で一番人気のキーワードとなったのではないでしょうか。
最後に
今回は「世の中はつねに変化している」ことについて述べました。
小説の
以前は「異世界転生」ばかりでしたが、それも少なくなって「ざまぁ」が台頭し、現在では「主人公最強」が一番人気を獲得したのです。
もちろんこれから先も
次にどんな
であれば、絶えずランキングを注視して
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます