963.筆洗篇:行き詰まったら運動して食べて寝る

 今回は「よく動き、よく食べ、よく寝る」ことについて述べました。

 脳の栄養素は糖分です。しかし運動しなければ太るだけです。

 運動しても眠らなければ疲労は回復しません。





行き詰まったら運動して食べて寝る


 連載が行き詰まって、どうしても続きが書けない。

 小説の連載を始めるとよく行き当たります。

 このとき、一文字でも一文でも入力してみるのはとてもよいアプローチです。

 しかしそれでも思い浮かばなかったとしたら。

 それは脳が疲れているのかもしれません。




脳は糖分を栄養素にしている

 近年「糖質制限ダイエット」が流行っています。

 実際に続ければ体重は落ちていくので、継続している方も多いでしょう。

 しかし小説を執筆している方にはあまりオススメできません。

 なぜなら、脳の働きを活発化させるのは、他ならぬ「糖分」だからです。

「糖質制限ダイエット」は確かに痩せますが、脳が栄養不足になっていまいます。

 脳が栄養不足のときに、いくら創造的なことをやろうとしても限界があるのです。

 囲碁や将棋の対局の際、昼食の時間の他に対局場で「おやつ」を食べることが許されています。また飲み物にも制限がありませんので、甘さたっぷりのカフェオレを飲もうと思えば飲めるのです。

 なぜ囲碁や将棋ではおやつや好きな飲物を許可しているのでしょうか。

 それは脳がフル回転することで糖分を激しく消費し、筋肉から栄養を搾り取ってしまうからです。

 一局終わると体重が三キログラム落ちる棋士もいます。それくらい脳をフル回転させる方は糖分の摂取が欠かせないのです。

 昼食にカツ丼とラーメンを頼む棋士もいます。とにかく糖分を摂取したいから、ご飯や麺類などの炭水化物を大量に摂りたくなるのですね。

 プロ棋士に大食いが多いのには、理由があったのです。


 では小説を書く方はどうでしょうか。

 小説を書くことに脳をフル回転させない方はいないと思います。というかいないと信じたい。

 脳内で情景を思い浮かべ、キャラクターを思い浮かべ、やりとりを思い浮かべて、結果を思い浮かべる。すべて映像イメージとして思い浮かべます。

 脳は文字情報だけを処理するのならそれほど疲れません。しかし小説を書くとき脳内で思い浮かべているのは「映像イメージ」です。それを維持するには膨大なエネルギーが必要となります。それこそ囲碁や将棋の棋士と同じです。そちらは局面の先の先を読むために脳内で膨大なイメージを思い描いています。小説も書くべきシーンを脳内に思い描いているものです。

 小説を書くにも「糖分」は不可欠なのです。




脳の疲れは肉体疲労の回復のついででしか回復しない

 脳の栄養素が糖分であることはわかりました。

 しかしただ糖分を摂るだけでは、脳の疲れが回復するどころか「糖分過多」による「中性脂肪の増加」で太ります。

 脳が欲しているのになぜ太るのか。

「食べすぎ」という側面もありますが、最も重要なのは「肉体が疲れていないから」です。

 棋士の方々はそのため、肉体トレーニングを生活の一部に組み込んでいます。

 肉体が疲れると、栄養素は肉体疲労の回復のために用いられるのです。

 そしてこれが重要なのですが、肉体疲労を回復しているときでしか、脳の疲れもとれません。

 人間は元々脳を働かせて危機を予測し、肉体を動かして対処してきました。

 そこで肉体が疲れると、身体全体を一度に回復させようとする本能が働くのです。

 つまり脳はついででしか回復できません。

 それがわかれば、第一線で活躍する棋士や書き手がトレーニング・ジムに通うのも、わかるのではないでしょうか。

 肉体が疲れなければ脳は回復しない。これが真理です。

 プロの書き手の方は、極端に痩せているか、極端に太っているか、筋肉が引き締まっているかの三パターンに分けられます。

 極端に痩せている方は栄養とくに糖分不足です。創造的な作業をする際、燃費の悪いエンジンを使っているようにエネルギー効率が著しく落ちます。結果たいした創造力も発揮できずに成績が悪くなるのです。小説なら一次選考すら通りません。

 極端に太っている方は運動不足です。脳の栄養素である糖分をたんまりと食べているのに、肉体が疲労していないのです。だからいくら食べても糖分は脳へ届かず、それが内臓脂肪となってお腹周りに溜まっていきます。運動して脳へ糖分を送り届けてやれば、疲れていた脳も回復しますし、過度な糖分も運動で消費して内臓脂肪も溜まりません。

 小説を執筆する方で、日頃からトレーニング・ジムへ通っている方は意外と少ない。ですが、一流の書き手の多くがトレーニング・ジムで汗を流しています。

 連載小説を続けていくだけの体力を維持するためにも、トレーニングは不可欠です。もちろんご家庭で自重トレーニングをしてもかまいません。全身をくまなく動かして筋肉で脂肪を燃焼させ、脳で糖分を栄養にするのです。つまり太る原因がありません。

 糖分摂取は必須ですが、運動を伴わなければ太るだけです。

 そこで、食事前に運動して肉体を疲れさせましょう。




よく寝る

 家族が寝静まった夜中に小説を執筆する方がよくいます。

 しかしよく寝なければ、脳の疲労は回復しません。

 トレーニングで身体を疲れさせ、食事で糖分を摂取したとしても、眠らなければ肉体も脳も疲労が抜けないのです。

 もし肉体も脳も疲労が抜けなければ、翌日のパフォーマンスが著しく落ちます。

 だからこそ、じゅうぶんな睡眠が必要なのです。

 あなたは夜にじゅうぶんな睡眠をとっているでしょうか。

 早く上達してランクポイントを稼げる書き手になりたい。そう思って無理をしていませんか。

 脳の疲労が抜けていない状態で無理をしても、ほとんど上達しません。

 より効率的に執筆できるようにはなるでしょうが、多様な表現を駆使するだけの感受性に乏しい状態です。

 だからこそ、書き手は睡眠時間をじゅうぶんに確保しなければなりません。

 よく寝て、心身をリフレッシュさせてから執筆したほうがより効率的です。

 ぐっすりと寝て、起き抜けに執筆しようとしても、頭はすぐには回転しない。それなら執筆に必要な準備を行ないましょう。

 まずは朝早くに起きて仕事や学校の支度をし、朝食を摂り、出勤通学前に小説を書くのです。

 もし一時間執筆できる環境なら、質の高い一時間を確保できます。

 眠けを催しているときの一時間よりはるかに貴重な一時間です。

 朝の一時間さえとれれば、文才は間違いなく上昇します。

 だから夜ふかしはせず、仕事や勉強の復習をしたら速やかに眠りましょう。





最後に

 今回は「行き詰まったら運動して食べて寝る」ことについて述べました。

 脳には糖分が必要ですが、運動しなければ太るだけです。

 糖分を摂取して運動し、脳に糖分を送りつつ余分な中性脂肪を燃焼させます。

 そして脳疲労は、肉体疲労の回復のついでに行なわれるのです。

 だから中性脂肪をやっつけたら復習をして、すぐに寝るようにしてください。

 そうすれば健康的な身体を手に入れながら、質の高い小説が書けるようになります。まさに一挙両得です。



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