956.筆洗篇:小説でお金が稼げたらプロを名乗れる
今回は「プロの条件」についてです。
なにごとも、それでお金が稼げれば「プロ」と呼ばれます。
小説も同じです。小説を書いてお金になれば「プロ」と考えてよいでしょう。
小説でお金が稼げたらプロを名乗れる
小説を書く動機はさまざまでも、最終的には小説でお金が稼げれば万々歳ですよね。
これは誰でもそうだと思います。
野球選手であればプロ球団に入って、野球でお金を稼ぎたい。
サッカー選手であればJリーグチームに入って、サッカーでお金を稼ぎたい。
囲碁であればプロリーグ入りして、囲碁でお金を稼ぎたい。
ゲームプレイヤーならプロゲーマーとして大会に出場して、ゲームでお金を稼ぎたい。
あらゆる勝負事には、勝つことでお金を稼ぐ「プロ」の道があります。
では、小説はどうでしょうか。
小説は支持率でランクが決まるわけではない
小説を書くという行為は勝負事ではありません。
漫画を描く、イラストを描くことにも勝ち負けはないのです。
いずれも「どれだけの受け手に支持されるか」が可視化されて初めて順位付けされます。
その意味では「YouTuber」も同じですね。子どもがなりたい職業として「YouTuber」を挙げるのも、『YouTube』を見るのが好きだからなのでしょう。
ですが、小説投稿サイトに作品を掲載して「ランキングを競う」という行為は、単純な「支持率競争」ではないのです。
ランキング・ポイントを手っ取り早く積み上げるには、読み手そのものを増やさなければいけません。
たとえば百人が読んで、五十人が評価してくれたら「支持率五十%」です。
一万人が読んで、千人が評価してくれたら「支持率十%」になります。
では小説投稿サイトでランキングを決める際、「支持率五十%」の作品と「支持率十%」の作品のどちらが上になるのでしょうか。
ここで「支持率五十%」と答える方は、小説投稿サイトには向いていないのかもしれません。
小説投稿サイトでは「支持率」ではなく、「何人が読んで、何人が評価したのか」が重要なのです。
つまり五十人が評価した作品と、千人が評価した作品とでは、千人に評価されたほうが順位は上になります。支持率は関係ないのです。
また百人にしか読まれなかった作品と、一万人に読まれた作品とでは、一万人に読まれたほうが順位は上になります。
たとえば同じ千人が評価した作品があるとします。一方は五千人が読み、もう一方は一万人に読まれました。
このとき、どちらの順位が上になると思いますか。
「一万人に読まれたほう」です。
同じ人数が評価した場合、より多くの人が読んだ作品が上になります。
「小説の質」を考えれば「支持率」が高いほうが質が高いに決まっている。
しかし閲覧数の多い作品のほうが順位は上になります。
小説投稿サイトのランキングが「支持率」競争ではないことの証左です。
なぜテンプレート作品が上位を占めるのか
小説投稿サイトにおいて、なぜ「テンプレート」作品がランキングの上位を占めるのか。
「多くの人が好んで読むから」に他なりません。
現在多くの小説投稿サイトでほとんど同じような「テンプレート」作品がランキングの上位を占めているのも、「多くの人が好んで読むから」です。
ランキング上位を獲りたければ「テンプレート」作品を書くしかない。
ここで悪魔に魂を売るかどうか。それがあなたの将来を左右します。
是が非でもランキング上位に載って、出版社レーベルの目にとまりたい。そうすれば紙の書籍化の話も来るはずだ。
そう思っている方が殊のほか多いように見受けられます。
だから現在多く読まれている作品を「テンプレート」にして、同じような作品を書こうとするフォロワーが爆発的に増えるのです。
これは「悪魔に魂を売る」行為だと思ってください。
ランキング上位を獲るためなら、なりふりかまっていられるか。
これが「悪魔に魂を売った」書き手の本音です。
しかし小説投稿サイトの「ランキングで上位に入れば紙の書籍化の話が来る」という時代はとうに過ぎ去りました。
今はランキング上位を目指すのではなく、小説投稿サイトで開催されている「小説賞・新人賞」に応募して優秀な成績を収めることが、紙の書籍化への最短コースです。
小説投稿サイトの最大手である『小説家になろう』から紙の書籍化されていく作品は、一時期より明らかに減りました。それは『小説家になろう』の他にも小説投稿サイトが登場したから、という側面もあります。しかし本質は「テンプレート」作品ばかりが上位を占めて、魅力ある作品が少なくなったからです。
出版社であるKADOKAWAがはてなと共同運営する『カクヨム』では「小説賞・新人賞」の作品で読み手の評価が一次選考を兼ねています。やはり「テンプレート」作品が一次選考を通過しやすくなっている。それは事実です。
しかし二次選考を通過する「テンプレート」作品は、さほど多くありません。
二次選考は企画を開催している出版社レーベルの選考さんが良し悪しを判断しているからです。
選考さんは「テンプレート」作品なぞ読み飽きたような方ばかり。
より目のつけどころの斬新な「アピールポイントを持つ」作品は、紙の書籍化した際のブレイク率がより高まります。
だから選考さんは、読み手の評価が高かった作品の中から、「テンプレート」以外の作品を丹念に探して読み込んでいるのです。
優先順位は「テンプレート」作品でないものが上になります。
「異世界ファンタジー」を募集している「小説賞・新人賞」であれば、「異世界転生」ものが増えてしまうのはある意味仕方ありません。
しかし「ジャンルフリー」の「小説賞・新人賞」なら、あえて「異世界転生」ものを選ぶ理由はありません。
より目新しく、よりエッジのきいた作品が求められています。
「テンプレート」な「異世界転生」ものや「主人公チート」もの、「追放ザマァ」もの、「スローライフ」ものなど、小説投稿サイトでランキング上位に入る作品ほど、選考さんに見切られやすいのです。そんな作品は過去大量に紙の書籍化されており、しかも後年になるほど大ヒットしなくなりました。
すでに「テンプレート」としての「異世界転生」「主人公チート」「追放ザマァ」「スローライフ」の寿命は尽きたと判断してください。
今は、それらに依らない作品を模索する時代を迎えています。
もちろん要素のひとつとして「テンプレート」を使うのは「あり」です。
しかしそれを前面に出してはなりません。
あくまでも別のストーリー展開へスパイスとして適度に振りかける程度に抑えましょう。
次の「テンプレート」を作ろうという気概がなければ、紙の書籍化を狙うべきではありません。小説投稿サイトのトップランカーの地位で満足してください。
けっして小説でお金を稼ごうだなんて思わないことです。
『カクヨム』の挑戦
現在『カクヨム』が「広告表示による小説掲載の収益化プログラム」に取り組んでいます。
これが成功すれば、小説投稿サイトのトップランカーになるだけでお金が稼げる時代になるのです。
今以上に「テンプレート」作品が上位を独占することでしょう。
しかし「テンプレート」作品は『カクヨム』上の収益化プログラムで事足ります。それでは足りないくらいに魅力的で目新しくエッジのきいた作品は「紙の書籍化」で展開できるのです。
この二正面作戦が成功すれば、『カクヨム』は一気に業界首位に躍り出るかもしれません。
しばらくは様子を見守っていきたいと思います。
最後に
今回は「小説でお金が稼げたらプロを名乗れる」ことについて述べました。
小説であれば「紙の書籍化」されれば文句なく「プロ」を名乗れます。
しかし各小説投稿サイトで開催されている賞金付きの「小説賞・新人賞」を獲得すればお金が稼げるのです。「紙の書籍化」せずともお金を稼ぐ。つまりこれも「プロ」と呼んでよいでしょう。
そして『カクヨム』で検討されている(本コラム執筆当時。2019年12月3日現在はすでに開始されています)「広告掲載による小説掲載の収益化プログラム」が成功すれば、「紙の書籍」も「賞金付き小説賞・新人賞」も経ずにあなたもお金を稼げるようになります。「YouTuber」のように稼げる時代がもうじきやってくるのです。
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