940.鳳雛篇:メンタルは鍛えられない

 今回は「メンタルは鍛えられない」ことについてです。

 昔はスポ根もののように、「厳しく接すれば根性メンタルがつく」と思われていました。

 しかし、現実には幾分面の皮が厚くなる程度であり、メンタル自体は鍛えられないことがわかっているのです。





メンタルは鍛えられない


 せっかく小説を書いて投稿したのに、人々から否定的な感想ばかりが書き込まれたとします。

 あなたのメンタルが強ければ、そんな声を聞きながらも自分の小説を書くでしょう。

 普通の強さなら、否定的な感想から教訓を得て新しい小説を書こうとします。

 もしメンタルが弱ければ、「こんなにボロクソに言われるのなら、もう書かない!」と投げ出してしまうのです。




メンタルに負荷がかかると

 メンタルは自尊心プライドや自負心をかたどっています。

 つまりメンタルが強ければ自尊心プライドも高いのです。

 だから「皆が私の小説の良さに気づくまで投稿してやる」と思います。

 しかしメンタルが弱いと自負心も低いので、「私には向いていないのかな」と気弱になって小説を書かなくなるのです。

 昭和の昔の根性論を当てはめれば「メンタルは鍛えられる! ビビってる暇があるなら立ち向かえ!」と鼓舞します。

 会社なら、上司からのきついプレッシャーで、成果を出さないと査定に響くような状況です。

 あなたは自暴自棄という名の「奮起」をして、やみくもに突進していきます。いわゆる「特攻」です。

 その結果、自分の弱いメンタルを克服して昇進していく人はごく少数。

 多くの方はプレッシャーに押し潰され、無理な残業の日々を送って体調を崩し、メンタルがボロボロになって退社を余儀なくされます。


 なぜ多くの方が脱落していくのか。

 もちろん、とても成し遂げられないほどきついプレッシャーをかけてくる上司が悪いのは自明です。

 しかしもっと根源的な問題があります。

 それは「メンタルは鍛えられない」という事実です。

 弱いメンタルを克服して昇進していく人たちが実際にいましたよね。

 彼らにできて、なぜ自分にはできないのか。そう考える方もいるでしょう。

 ですが、越えられた彼らも、面の皮は幾分厚くなるでしょうが、メンタルは変わっていないのです。

 内心ではヒヤヒヤしながら、実務ではそれを他人に悟られないよう「面の皮が厚くなり」ます。

 だから、成功している企業の社長ほどゲンを担ぎたくなるし、占いも信じてしまうのです。酉の市で熊手を買ってみたり、風水を気にして企業の立地を気にしたり。

 とても成功者のすることではありません。

「メンタルは鍛えられない」と始めから知っていれば、ゲン担ぎや占いを信じてしまう社長や上司の気持ちもわかるのではないでしょうか。

 ではどうすれば自信が持てるようになるのか。気になる方もいるでしょう。


 


予防線を張る

「メンタルは鍛えられない」ものです。

 では、襲いかかるプレッシャーにどう対処すればよいのでしょうか。

「予防線を張る」のです。

 つまり「ここまではできますが、これ以上はできないかもしれません」と事前に相手へ表明しておきます。

 効果は絶大です。「ここまではできる」と宣言したところまでを必ず達成していれば、最低限の評価は維持できます。

 こなせもしないほどの仕事を押しつけてくる上司にも、あなたの限界を認めさせられるのです。

 断りきれずなんでも引き受けてしまうから、プレッシャーに押し潰されてしまいます。

 一言断りを入れるだけで、過度なプレッシャーは回避できるのです。

 鍛えられないメンタルにいくら負荷をかけてもムダですし、メンタルがズタボロになるだけなのでやめたほうがよい。

 自分がなにをするべきで、なにをしてはいけないのか。それを理解していれば、メンタルがブレません。


 小説を執筆する際も、締切が厳しくなってきたら「予防線を張っ」ておきましょう。

 今回は間に合わないかもしれないけれど、このまま次回投稿するための小説を一本あらかた完成させ、次回の「小説賞・新人賞」には二作投稿しよう、とするのです。

 このくらいルーズにしておくと、締切で追い込まれても順調なペースを刻みながら執筆できます。

 結果的に、応募期限内に原稿が完成するかもしれません。

 余計なプレッシャーにさらされていなかったからこそ、ペースを刻み続けられたのです。




自分の性格を知る

 自分の性格は、自身がいちばん理解しているはずです。

 追い込まれないと実力を発揮できないタイプ。ゆとりがないと実力を発揮できないタイプ。一度始めると熱くなって没入してしまうタイプ。

 追い込まれないと実力を発揮できない人は、いつも締切に追われる執筆活動になってしまいます。それではいつも「小説賞・新人賞」に応募できなくなる恐れがあるのです。

 ゆとりが必要な人は、締切が近くなると途端に実力を発揮できなくなります。「小説賞・新人賞」が開催されたら、ゆとりがある募集開始時に一番乗りで投稿できるよう、執筆を急ぐクセをつけてください。

 熱くなりがちな人は、適度に休憩を挟まないとすぐ体調を崩して潰れてしまいます。結局ペース配分をしながら書いている方のほうが先に「小説賞・新人賞」へ応募していることが多いのです。

 あくまでも自分の性格にあった執筆ペースを、いかに見つけるか。そこに「小説賞・新人賞」へ応募できるかの鍵があります。


 メンタルが弱いから、ここ一番で挫折してしまう。

 そうお考えの方は、あえて自らに厳しいプレッシャーをかけて、結果的に自らメンタル・ブレイクを起こしてしまうのです。

 執筆のすべつまりテクニックを把握し、どのくらいで書きあげて推敲に移れるのか、「小説賞・新人賞」が獲れるような作品に仕上げられるのかを冷静に分析してください。

 応募できないのが怖い、応募しても大賞や優秀賞または佳作に残れるのかわからないから怖い。そんな不安を抱く必要なんてありません。

 自分のすべを理解していれば、どの程度の作品が書けているのかは自明だからです。メンタルが弱いなどと悩む必要なんてありません。





最後に

 今回は「メンタルは鍛えられない」ことについて述べました。

 根性論をいくら振りかざしても、メンタルは鍛えられません。

 面の皮が幾分厚くなるくらいで、心臓に毛が生えるほど強靭なメンタルなど手に入らないのです。

 自分のメンタルと向かい合って、つねに現状で行ないうることを見出だしましょう。

 無理して自分にプレッシャーをかけても、押し潰されるのがオチです。



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