938.鳳雛篇:掲載する小説投稿サイトの性質を知る

 今回は「小説投稿サイトの性質を知る」ことについてです。

 どの小説投稿サイトでも協賛している出版社レーベルがあります。

 どの出版社レーベルから「紙の書籍」化したいのかで、利用する小説投稿サイトを選ぶのも「あり」です。

 そしてよく用いられるテーマに「緊迫感」「破滅」「再生」があります。





掲載する小説投稿サイトの性質を知る


 小説投稿サイトには、ジャンルごとに固定客やファンがいます。

 しかし利用しているのはそれらの方々だけではありません。

 ふと思いついて、気まぐれであなたの小説を読みにくる方がいないとも限らないのです。




小説投稿サイトのコンセプトに適っているか

 どんなにすぐれた小説を書いても、小説投稿サイトのコンセプトまた開催されている「小説賞・新人賞」のコンセプトに適わない作品が人気を博すことはありません。

 小説投稿サイトの利用者は、多かれ少なかれ「コンセプト」によって作品の傾向を見極めています。

『ピクシブ文芸』なら文学小説や大衆小説などの文芸作品を掲載するという「コンセプト」です。「ピクシブ文芸大賞」を受賞した作品も文芸作品でした。

『小説家になろう』ならファンタジージャンルのとくにハイファンタジーに人気が集中しており、投稿作品数は文芸作品ならファンタジージャンルと桁がひとつ下がります。『小説家になろう』では「小説賞・新人賞」が頻繁に開催されているのです。KADOKAWAのような大手出版社は望めませんが、中堅出版社からのデビューが比較的容易な傾向にあります。

『カクヨム』も比較的ファンタジージャンルに人気があるのです。しかし、運営共催しているのが出版社のKADOKAWAであるため、「角川スニーカー文庫」「富士見ファンタジア文庫」「電撃文庫」などのレーベルから出版される「紙の書籍」のコンセプトに適った小説がウケやすい。中高生をターゲットにした「電撃文庫」、一般的な異世界ファンタジーを扱う「角川スニーカー文庫」、それ以外のファンタジーを幅広く扱う「富士見ファンタジア文庫」と掲げられているコンセプトは明確です。


 いずれの小説投稿サイトでも、ランキングに載る作品は「流行り」から少し外れています。もちろん「流行り」を押さえている小説が強いのは変わりないのです。しかしランキングのすべてが「流行り」で埋まっていることもありません。

 必ず付け入るスキはあるのです。




ちゃんと読んでもらえればわかってもらえる幻想

 書き手は「ちゃんと最後まで読んでくれれば、作品のよさがわかるから、最後まで読んでください」と言いたいと思います。

 しかし読み手は初回投稿つまり「第一章第一話」の出来だけで連載を追うか、初見切りするかを判断するのです。

 書き手は「なぜ最後まで読んでくれないのか」と思うでしょう。しかし、継続して読むかどうかは読み手が決めます。決定権は読み手にあるのです。

 書き手は読み手に閲覧を強制できません。

 そのため初回投稿の「第一章第一話」がとても重要な役割を果たします。

 この小説はどんな主人公がどんな「対になる存在」と向き合うことになるのか。どのような物語になりそうなのか。どんな「佳境クライマックス」「結末エンディング」になりそうか。読んで「ためになる」かどうか。読んで恩恵がありそうかどうか。

 そんな判断を初回投稿だけで読み手は見極めています。

「じっくり読む」という選択肢は、品定めをしている読み手にはありません。

「ためになる」小説だったかどうかは、読了してからわかるものです。連載中ではなかなかわからないのです。

 だからこそ書き手は、「最後まで読んでくれればわかってもらえる」という幻想に囚われていてはなりません。




結末がわかっているのに感動する物語

 結末がわかっている物語で感動するのは難しい。

 ですが結末がわかっていても何度でも感動する物語というものもあります。

 その差はなんでしょうか。

 それは「感動のポイント」を的確に押さえているかどうかです。

「感動のポイント」とは、緊迫感サスペンスと破滅と再生の三つが挙げられます。

 緊迫感サスペンスがあれば、読んでいてハラハラするのです。このハラハラがのちの「結末エンディング」へ影響を及ぼします。

 破滅に近づいても、やはり読んでいてハラハラしてきます。世界の終わりが近づいているとか、人類の存亡がかかっているとか、敵中に孤立してしまった状態とか。破滅が目の前まで近づいてくるほど、人の心は動揺します。

 そして再生です。緊迫感サスペンスをもって破滅へ近づいていき、世界や人類は潰えようとしているところまで追い詰められます。しかしそこで主人公が状況を一変させることを成し遂げるのです。

 これにより、世界や人類は破滅を免れて新たな社会が再構築されます。つまり「再生」するのです。

 この変化を起こせるのは主人公ただひとり。

 混沌の中にあって、身を挺して人々を守り抜こうとする強大な意志の力が奇跡を成し遂げるのです。


 小説投稿サイトにおいて、それほど見られない展開だと思います。

 この三点は小手先のテクニックでは書けないからです。

 どんなに文章を書くのがうまくても、緊迫感サスペンスと破滅と再生の物語が書けるとは限りません。

 逆に言えば、この三点をじゅうぶんに書ききれれば「小説賞・新人賞」に値するような作品に仕上がるのです。

 私が書こうとしている「神話」「伝説」「戦記」「物語」も基本的にはこの三点を意識しています。

 緊迫感サスペンスをもって破滅へと突き進み、それを覆すほど主人公が献身的な働きをする。そして世界や人類は破滅は免れ、人々は再生の道を歩むのです。

 うまく書ければ傑作に、失敗すればただの意識高い系になってしまいます。

 扱いが難しいのですが、なんとかこのラインに乗るよう注力していく予定です。

 四部作の第一部「神話」は現在プロットの段階まで来ていますので、本コラムがひと段落した頃から執筆に入りたいと思います。





最後に

 今回は「掲載する小説投稿サイトの性質を知る」ことについて述べました。

 あなたは書籍化されたい出版社レーベルを明確に持っているでしょうか。

 たとえば「電撃文庫から出版したい」と思えば『カクヨム』で開催されている「小説賞・新人賞」に応募するべきです。「アルファポリス文庫から出版したい」と思えば『アルファポリス』の「小説賞・新人賞」に応募しましょう。

 小説投稿サイトは基本的に出版社レーベルと結びついています。『ピクシブ文芸』も幻冬舎と協力しているのです。

 どんなに人気のない小説投稿サイトでも、たいていどこかの出版社レーベルと関係があるはずです。

『セルバンテス』なら講談社が主催していますからね。

 だから、どの出版社レーベルから「紙の書籍」化したいのかを明確にしたうえで、小説投稿サイトを選びましょう。

 そして「小説賞・新人賞」を獲る作品は、たいてい緊迫感サスペンスと破滅と再生が描かれています。

 とても単純な物語ですが、単純であるがゆえに感動を与えもするのです。



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