934.鳳雛篇:うまい文章を見つけたら分析する
今回は「うまい文章を見つける眼力を鍛える」ことについてです。
「うまい文章」をたくさん読めば、それだけあなたの表現力も増します。
どんな文章が「うまい文章」なのか。
それを見抜く「眼力」を身につけてください。
うまい文章を見つけたら分析する
小説をたくさん読まなければ書けません。
一度も小説を読んだことのない人には、小説がどのようなものか理解できないからです。
しかし一作読んでそれで書けるほど小説は甘くありません。
小説をたくさん読む
具体的にどんな小説をたくさん読むべきでしょうか。
あなたが芥川龍之介賞(芥川賞)、直木三十五賞を狙いたいと思っているのなら、過去の受賞作をすべて読むのです。最低でも直近の五年ぶんつまり十作プラスαは読みましょう。
とりあえず新人は有無を言わさず芥川賞を狙うことになりますので、芥川賞の過去受賞作を読む。
文学小説はライトノベルとは異なり、独特の文体や世界観を有しています。
それに合致しなければ、どれほど感動的な作品であろうとも芥川賞は授かれません。
過去にライトノベルで芥川賞を授かった書き手は皆無です。
ライトノベルばかり読んでいる方は、芥川賞とは無縁になります。
ではライトノベルの「小説賞・新人賞」を狙いたい場合は、どんな作品を読めばよいのでしょうか。
ライトノベルの「小説賞・新人賞」は、各出版社が「紙の原稿」で受け付けているものと、小説投稿サイトと共催する形で開催されているものがあります。
まず「紙の原稿」で募集している「小説賞・新人賞」を獲りたければ、過去の受賞作をできるかぎり読んでください。こちらも直近の五年ぶんもあればじゅうぶんです。
ライトノベルは流行がたやすく移り変わります。十年も昔の受賞作ではすでに陳腐化しているのです。
「電撃小説大賞」に応募したければ、過去五年の受賞作で「紙の書籍」化されているものをすべて読むつもりでいてください。
「スニーカー大賞」「ファンタジア大賞」などを狙うときも同様です。
受賞作には、各レーベルのカラーが色濃く現れます。
つまり「こんな雰囲気や世界観の小説が求められているのか」と端的にわかるのです。
あなたが大好きな小説はどのレーベルから出版されているのか。
これを知らないことには、どのレーベルを狙えばよいのかすらわかりません。
そしてレーベルを見定めて、その「小説賞・新人賞」を狙うのが効果的です。
皆様が本コラムをご覧になっている小説投稿サイトで開催されている「小説賞・新人賞」を狙いたい場合はどうでしょうか。
こちらは基本的に受賞作が無料で読み放題ですから、受賞作を手当り次第に読んでもかまいません。
もし難しいのであれば、直近の開催で二次選考に残った作品をすべて読んでください。
ライトノベルは足が早いことで知られています。
小説投稿サイトの流行りも基本的にすぐ廃れると思ってください。
そこで、現在ランキングのトップテンとなっている作品も読みましょう。
直近と現在に出版社レーベルと読み手から求められている物語がわかれば、小説の書きようもあります。
わからなければ、何十時間かけて書いた長編小説があっけなく徒労に終わるだけ。
小説投稿サイトの強みは「無料で読める」ことです。時間さえあれば何作でも読めます。
小説投稿サイトで共催されている「小説賞・新人賞」の入賞作のほとんどが、今そのサイトで人気のある作品です。
リサーチに時間と労力をかけなければ「
だからこそ、リサーチにはじゅうぶん時間をとってください。
どこがよかったか見つけ出す目を鍛える
いずれのリサーチでも、最も重要なのは「どこがよかった」のかを見つけ出すことです。
「ここがこうだから入賞したんだな」とわかるようにならなければなりません。
それが見えてくれば、あなたの書く小説にも無意識のうちに取り入れられます。
リサーチして分析するだけで、あとは脳が勝手にその要素を身につけてしまうのです。
嘘だと思いますよね。
でもこれ、本当なのです。
入賞作品を一読して「ここがよかった」と理解できるには、頭の中でイメージと文章が同時に展開されていなければなりません。そして際立った部分が強烈な印象を残すので、読み終えた頃には「ここがよかった」と理解できます。
するとその「ここがよかった」の文脈や表現も無意識のうちに吸収するのです。
もちろん初めのうちは読了まで記憶できないでしょうから、一読が終わってから検証の二度読みをして「そう、ここ。ここがよかったんだ」と確認してください。抜き書きして前後のつながりや文脈、人間関係や表現などをつぶさに検討するのです。
「どこがよかった」かが理解できる訓練を積めば、文章の表現力は飛躍的に高まります。
慣れてくれば、読んでいる最中に「ここはよいところだな」とわかるのです。
この境地に至れば、たくさん小説を読むだけで自然と多彩な表現が手に入ります。
「どこがよかった」かを見つけ出す目を鍛えること自体、よりよい小説が書ける素地となるのです。
だから、どのレベルの書き手であっても「どこがよかった」かを見つけ出す目を鍛えることをオススメします。
今まで一次選考すら突破できなかったとしても、「眼力」が身につけば一気に最終選考に残れるかもしれません。
どれほどの「眼力」を持てるかどうか。それが文章の質を劇的に変えます。
出版社レーベルの編集さんや下読みさんなどの選考さん方も「眼力」にすぐれているのです。
だからといって、選考さんが小説を書いても入賞できないと思います。
それは「書き手として読んでいない」からです。
もし「自分ならこう書くな」と考えながら読んでいたとすれば、たとえ選考さんでも入賞する作品は書けます。
新人の「プロの書き手」に「小説賞・新人賞」の選考がまわってくるのは、「眼力」を鍛えさせるためでもあるのです。
文章の質を劇的に高める「眼力」を手に入れるなら今から始めましょう。
まさに「いつやるの、今でしょ」です。
最後に
今回は「うまい文章を見つけたら分析する」ことについて述べました。
まずは狙っている出版社レーベルの「小説賞・新人賞」入賞作品を過去五年ぶん読み込んでください。
そして「どこがよかった」かを分析するのです。
慣れてくると「よかった」ところが見えてくる「眼力」が鍛えられます。
「眼力」を有したら、あとは良作を手あたり次第に読み込んでください。
劇的に文章表現力が向上しますよ。
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