932.鳳雛篇:小説を書く目的は
今回は「小説を書く目的」についてです。
「京都アニメーション放火殺人事件」について、私の見解を書きました。
プロになりたいのなら、ちゃんと「小説賞」や「原作賞」を獲ればよいのです。
賞が獲れなかったからと逆恨みしていては、皆が感動するような小説や原作なんて書けません。
小説を書く目的は
あなたにとって「小説を書く目的」はなんですか。
多くの人に自分の考えた物語を「読んで」もらいたいだけでしょうか。
その中から何人かからでもよいので「評価して」もらいたいのでしょうか。
たくさんの人から評価を集めて「ランキング入り」したいのでしょうか。
「小説賞・新人賞」へ応募して賞金が欲しいのでしょうか。
賞金だけでなく「紙の書籍」化したいのでしょうか。
「プロの書き手」になって夢の印税生活を送りたいのでしょうか。
あなたが見据える「目的」によって、小説に取り組む覚悟が異なります。
プロの書き手を目指して
小説を書く、ほぼすべての方が「プロの書き手」を目指していると思います。
これは大前提です。
野心のない方が小説を書いても、ただの「趣味」で終わります。
「趣味」であっても釣りのように成果が目に見えたり、囲碁・将棋のように勝ち負けを決めたり、違法ではありますが賭け麻雀で現金を得たりするのです。
パチンコ・パチスロは「三店方式」で実際にギャンブルできます。近々IR法(統合型リゾート整備推進法)によって国内に最大三か所「カジノ」が誕生する予定です。そこまででなくても競馬・競輪・競艇・オートレースといった公営ギャンブルを楽しんでいる方も現にいらっしゃいます。
そんな中「趣味」のために何十時間もかけて誰に読まれるかわからない長編小説を書くなんて、よほどマゾヒスティックな性格でもないとまず無理です。
だからこそ、体裁を気にするべきではありません。
堂々と「将来プロの書き手になって、印税で生活がしたいから小説を書きます」と宣言しましょう。
京都アニメーション放火殺人事件
京都アニメーションで発生した放火殺人事件が記憶に新しいところです。
犯人は「送った小説を落とされたから焼き殺そうと思った」というひじょうに身勝手な犯行動機を持っています。
おそらく犯人は「プロの書き手」を目指していたのでしょう。
しかし「こじらせてしまった」のです。
「俺ほどの実力があれば、アニメーションの原作になって当然だ」と。
「そんな俺の作品を落とすなんて、京都アニメーションの奴らはわかっていない」と。
「俺を無視するのなら、癪に障るから消えてしまえ」と。
本コラムをご覧の方々は、このような「こじらせ」は起こさないと信じます。
「アニメーションの原作」は小説よりもはるかに難しいのです。
なにせ動く金額が「紙の書籍」より何十倍も上。ときに億単位の資金が動いています。
かかった経費をテレビCMのスポンサー、DVD&Blu−rayまた動画配信などの映像販売コンテンツ、関連グッズ販売などからの収益で賄っているのです。
「紙の書籍」では宣伝活動自体はアニメーションと大差ないはずです。しかし原資は「プロの書き手」へ支払う原稿料と、書籍化する際にかかる印刷製本費用がかかるだけです。現在は再販制度により、各書店へは東販や日販などの取次店が配送しますので、出版社の懐は痛みません。
つまり「紙の書籍」は安上がりなのです。
「アニメーションの原作」は「紙の書籍」よりも何十倍も価値があります。
それを「プロの書き手」でもない人間が書いたところで、どんなアニメーション制作会社もこぞって落とすのです。「経費をかけても回収できない」原作なんて、アニメーションにできません。
アニメーション製作会社は慈善事業でやっているわけではないのです。彼らは立派な営利団体です。
スタジオで働いている方たちに賃金を支払わなければなりません。
しかも「京都アニメーション」といえば、業界では知らぬ者のないほど「ホワイト」な製作環境が整っています。賃金も高いし福利厚生も充実しているのです。
「経営トップだけが儲かればよい」という他の製作会社とは一線を画します。
業界屈指の製作会社に対する暴力テロリズムは、いずれ正当な裁判が待ち構えると信じています。
皆様に知ってもらいたいのは、「アニメーションの原作」は「紙の書籍」の何十倍も難しいものだ、ということです。
「紙の書籍」も出版したことのない、また「小説賞・新人賞」すら獲ったことのない書き手の作品が、「アニメーションの原作」になるなんてありえません。
「大賞受賞作はアニメーション化する権利」が付いている「小説賞」も探せばあるはずです。
もし放火殺人犯がこのような「小説賞」に応募して落とされたのなら、素直に「やはり難しかったな」と自省するべきでしょう。
放火殺人事件を起こすなんて筋違いも甚だしい。
そんな「自分しか見えていない」人物の書いた小説なんて、しょせん自分勝手な小説だったに違いないのです。落とされて当たり前だと思いませんか。
逆恨みしたところで、自分が執筆に費やした時間と労苦のすべてを台無しにするだけです。
これから「プロの書き手」を目指している皆様は、絶対に「こじらせ」ないようにしてください。
これが本コラムの公式見解です。
プロの書き手を目指して
皆様にはぜひ「プロの書き手」を目指していただきたい。
より次元の高い競争が、よりよい小説を産み出します。
皆様も、どうせ読むなら質の高い小説を読みたくはないですか。
だからこそ、本コラムをお読みのすべての方に「小説賞・新人賞」へ挑戦してもらいたいのです。
当然競争率は今よりも確実に上がります。
すでに「小説賞・新人賞」に応募している方からは眉をひそめられるかもしれません。
しかし「小説賞・新人賞」は複数人が同時受賞することもありますし、佳作から「紙の書籍」化された作品も多いのです。また「大賞受賞者なし」のときもあります。
求められるのは作品の質であって、競争率という確率によって受賞するわけではありません。
「小説賞・新人賞」は宝くじのような確率ではなく、大学受験の上位何名でもなく、資格試験のように「一定技能以上の者すべて」が受賞できます。
「あえて落とす」ことはまずありません。
だからすでに応募している方も「一定レベル以上の作品」が書けさえすれば、確率でない以上受賞する可能性は今と同じだけあります。
競争が激しくなるイメージをお持ちになるかもしれません。しかし運転免許試験は競争で取得するものではありませんよね。
あくまでも応募した小説が「一定レベル以上の作品」かどうか。それだけが受賞基準です。
もし「競争が激しくなる」と感じるのであれば、応募なんてしないほうがよいと思います。正しい判断ができないのであれば、自意識過剰、承認欲求過多に陥るだけです。
だから「プロの書き手」になるのは「一定レベル以上の作品」が書けるかどうか。それだけを気にしてください。
「これは傑作だから受賞間違いなし」なんて考えてはなりません。
放火殺人犯と同じ思考だからです。
小説を書く目的
あなたが小説を書くのは「プロの書き手」が最大の「目的」だと思います。
その「目的」を果たせるように、試行錯誤を繰り返してください。
とにかく書いては応募、書いては応募の繰り返しです。
多作できない方は「プロの書き手」にふさわしくありません。
「プロの書き手」は自分の書きたい小説を書かせてもらえないからです。
担当編集さんと打ち合わせを行ない、何本かの「企画書」を見せ、先方から「この『企画書』のこの部分と、こちらの『企画書』のこの部分を足したような作品を書いてください」と依頼されます。それはあなたが望んだ作品ではないのです。
稀にあなたの「企画書」がそのまま通ることもあります。
そのときは、持てる能力を総動員して、傑作を書いてください。
これで成果が出せれば、担当編集さんはあなたの「企画書」に難癖をつけなくなります。
「趣味」で小説を書く人も、今の実力のほどやなんらかの成果を知りたいはずです。
であれば「小説賞・新人賞」へ応募しましょう。
小説投稿サイトで最も読まれる小説はなにか。
その小説投稿サイトで開催されている「小説賞・新人賞」応募作です。
あとは名の通った書き手の作品は応募していなくても高い閲覧数とブックマークを誇ります。
名の通った書き手は、過去にランキング一位を獲った、または「小説賞・新人賞」の大賞もしくは優秀賞・佳作に選ばれたなど、実績を残しているのです。
だから名の通った書き手と競うこと自体が馬鹿げています。
駆け出しの書き手に太刀打ちできる相手ではないのです。
これからの書き手は、作品の質を高めるために「小説賞・新人賞」へ手当たり次第に応募していきましょう。一次選考も通過しなければ、文章の質が悪かった。二次選考を通過できなかったら物語が面白くなかった。そう考えれば、間違いの少ない分析ができます。
ある方は「プロの書き手」になる野心を持って。ある方はより多くの方に読んでもらうために。
小説投稿サイトで開催されている「小説賞・新人賞」はそのために存在しているのです。活用しない手はありませんよね。
最後に
今回は「小説を書く目的は」ということについて述べました。
すべての方に小説投稿サイトで開催されている「小説賞・新人賞」への応募をオススメします。
「プロの書き手」になりたい方はなれるかもしれない。
「多くの方に読んでもらいたい」方は多数に読んでもらえるかもしれない。
少なくとも、応募作とただ投稿しただけの作品とでは、閲覧数に雲泥の差が生じます。
せっかく何十時間もかけて書いた長編小説です。
できることなら「よりたくさんの方に読んでもらいたい」ですし、あわよくば受賞して「プロの書き手」になれたらいいな。
そんな軽い気持ちでかまいません。
書き手それぞれの「目的」をしっかりと見据えながら応募しましょう。
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