931.鳳雛篇:よい小説は自信から生まれる
今回は「自信」について述べました。
「名作」は断定している文章から生まれます。
迷いのある文章が「名作」となることはありません。
よい小説は自信から生まれる
世の中には「名作」と呼ばれる小説がいくつもあります。
あなたが読んでみて「名作」と呼べるのはどのような作品だったでしょうか。
文章を断定して書いている小説と、自信なさげに
どちらが「名作」にふさわしいでしょうか。
根拠は書き手であるあなた次第
文章を断定して書きたいのはやまやまだが、手元に根拠となるデータがない。
これでは断定して書くのは難しいですよね。
だからこそ、根拠となるデータを揃えるべく取材や書籍に当たります。
断定したほうが明らかに文章へ説得力を持たせられるのです。
しかし、こと小説においては、作品内世界を築き上げるのは書き手の自由です。
書き手が自由に設定を考えてよい。それが書き手の特権です。
読み手には、作品内世界のすべてはわかりません。
文章として書かれてあることだけがわかります。
だからこそ、書き手は虚勢であってもよいので、自信満々で小説を書くべきです。
自信を持って書いていくからこそ、読み手は有無を言わずに物語を味わいます。
その結果「矛盾」が発生すると困るのですが、「矛盾」は「例外」を設ければたいていなんとかできるものです。
最低限、物語の核心部分に「矛盾」が発生しないよう、気を配って「企画書」「あらすじ」段階で設定を詰めてください。
たいていの「矛盾」は「企画書」「あらすじ」段階で発生しているものだからです。
完璧な文章が読み手に好まれるわけではありません。
拙い文章でも、読み手を惹き込む作品はいくらでもあります。そうでなければ「小説賞・新人賞」を受賞する人なんていなくなるのです。
あなたが応募した「小説賞・新人賞」で大賞を射止めた作品は必ず読んでください。
すると気づくはずです。
「矛盾」を起こしている箇所がある。誤字脱字もある。比喩表現はそれほど豊かではない。でもあいまいな表現はなく、なぜか読んでみると面白い。
「小説賞・新人賞」はあくまでも「将来性を買う」賞レースだからです。
どんなに拙い文章であろうと、断定して書いてある小説には説得力があります。
物語の面白さを担保するのは、作品の説得力です。
書き手が自らの中に根拠を明確に持って執筆していれば、必ず文章にも反映されます。
ただ「好きです。結婚してください。」という手紙と、「私は冴えない男ですが、あなたのことを心の底から好きだと確信しています。必ず幸せにしますので結婚してください。」という手紙。
もらって嬉しいのは当然後者です。
「私は冴えない男ですが、あなたのことを心の底から好きだと確信しています。」は書き手都合の一文で、このままでは妙手とは呼べません。
しかし「必ず幸せにしますので結婚してください。」はなにを根拠に書いている文なのかわかりますか。
書き手自身が心の中で「必ず幸せにする」と誓っているのです。
書き手の中に根拠がありますから、揺らぎません。
事実に裏打ちされた根拠ではないのです。
完全に書き手の中で構築された、妄想にも近い根拠なのです。
ですが、この文章が読み手の心に響きます。読み手にはわからない根拠を持った「書き手の自信」が透けて見えるからです。
自信を持って書く
自信を持つのは、自分の内側をさらけ出すことです。
ありのままの自分を魅力的に書きましょう。
読み手が文章を読んで感動してくれたら、文章の役割はじゅうぶん果たせたのです。
小説の文章もまた、書き手の中にある根拠を、さも世界のすべてかのように読ませます。
強い自信に満ちあふれていれば、読み手は思わず納得してしまうのです。
小説を書く際にあれこれと慎重になりすぎて気を揉む必要はありません。
腹をくくるのです。
百人が読んで九十九人に嫌われてもかまわない。そんな小説を書く勇気が要ります。
「文章は書き手の心を写す鏡」なのです。
書き手が自信を持って書かない文章は、読み手に自信のなさを感じさせます。
小説を書くときは、とにかく根拠がなくても虚勢を張ってもいいので「自信を持って」ください。
読み手が思わず納得するだけの説得力を生み出します。
自信のないジャンルの小説を書くときは、とにかく情報をたくさん集めて、すべて読み込んで情報を深堀りしましょう。
底の浅い知識で専門職を書こうとするから破綻するのです。
専門職について書こうと思うのなら、その人が知っているであろう情報を過不足なく書けるよう、頭の中でこなれるまで勉強してください。
「デイトレーダー」を主人公にした小説を書こうと思ったなら、株式投資やFX投資に関する専門書を大量に買ってきて、すべて頭に叩き込みましょう。
「板」とか「
なにもわからない読み手に「板」「
経済小説を書く池井戸潤氏であれば、こんな単語が飛び交ったとしても面白い作品に仕上げてくれることでしょう。
しかし、私もあなたも池井戸潤氏ではありません。
そして読み手も社会人ではなく、中高生が多い小説投稿サイトに掲載しています。
だから中高生がわからない言葉や専門用語を、説明もなく使ってはならないのです。
ただし、説明は初出の一回だけでかまいません。
繰り返し書くと、読み手はバカにされたように感じます。
専門用語が自信を持って書けるだけの知識量を集めてくるのも、書き手の作業のひとつです。
最後に
今回は「よい小説は自信から生まれる」ことについて述べました。
自信のない文章を読んで感動する人はいません。
虚勢であっても自信を持って作品を書けば、感動する読み手は必ず現れます。
「小説賞・新人賞」を獲得するためにも、作品は自信を持って書きましょう。
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