930.鳳雛篇:今求められている小説
今回は「今求められている小説」についてです。
「異世界転生」ファンタジーが流行っていますが、いつまで続くのでしょうか。
今求められている小説
小説投稿サイトでは現在進行形で「異世界転生」ファンタジーの需要が高い。
だから、今求められている小説は「異世界転生」ファンタジーだ。
となるのは早計です。
雨後の
しかし、すべての「異世界転生」ファンタジー作品がランキングを占めているわけではないのです。
異世界転生は本当に求められているのか
昨今「紙の書籍」として販売されているライトノベルの多くは「異世界転生」ファンタジーです。この事実は揺るぎません。
火をつけたのは小説投稿サイトの最大手『小説家になろう』です。
俗に言う「なろう系」はその多くが「異世界転生」ファンタジーで構成されています。
その余波が他の小説投稿サイトにも及んだのです。他サイトでもランキング上位に「なろう系」が掲載される状態が続いています。
であれば、今求められている小説は「異世界転生」ファンタジーである、と安易に考えがちです。そう「安易」なのです。
もし本当に「異世界転生」ファンタジーを書けばランキングに載れると確約されているのなら、確かに「異世界転生」ファンタジーが今求められている小説だと言えます。
ですが、ランキングに載っているのは多く投稿されている「異世界転生」ファンタジーのごく一部にすぎません。
ランキングに載る作品と載らない作品とはなにが異なるのでしょうか。
多分に推測ですが、「異世界転生」ファンタジー作品は第一話だけなら閲覧数(PV)が他のジャンルより格段に多い。
ですが第一話を読んでみて、継続して次話を読む作品と第一話で見切りをつける作品に分けられます。
一度見切られた作品を再び読もうとするには、ランキングで上位に入らなければなりません。これって本末転倒ですよね。多くの読み手から見切られた作品がランキング上位に入るなんてできるのでしょうか。
継続して読む割合が高ければその可能性はあります。
「小説賞・新人賞」の選考に当てはめてみましょう。
一次選考に残って通過作品リストに載れば、「第一話で見切ったけど、もう少し読めば面白くなるのかな」と思い直してくれる可能性があるのです。
そのためのランキングだと思ってください。
しかし、本当に「異世界転生」ファンタジーだけがライトノベル界隈で求められているのでしょうか。
川原礫氏『ソードアート・オンライン』はVRMMOものですし、鎌池和馬氏『とある魔術の禁書目録』は現実世界ファンタジーです。渡航氏『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』は現実世界でのラブコメになります。
最新の流行ではありませんが、アニメ化が続く作品は「異世界転生」ファンタジーでないことのほうが多いのです。
もちろん新作アニメは原作小説の売れ行きがよい「異世界転生」ファンタジーが多い傾向が出ています。
長月達平氏『Re:ゼロから始める異世界生活』、冬原パトラ氏『異世界はスマートフォンとともに。』、伏瀬氏『転生したらスライムだった件』など、近年アニメ化されている作品に「異世界転生」ファンタジーが多いのも事実です。
この流れだけを見ると、やはり今書くべきは「異世界転生」ファンタジー。そう思う人が多くて当たり前かもしれません。
ですが「異世界転生」ファンタジーは現在、飽和しています。
猫も杓子も「異世界転生」ファンタジーを書くのですから、正直「異世界転生」ファンタジーの大ファンでも読めていない作品のほうが圧倒的に多いのです。
現状「異世界転生」ファンタジーを投稿しても、愛好家の「読みたいリスト」には載るかもしれませんが、実際には稀に読まれる程度です。たとえ読まれても第一話を読み終えることなく見切られるほうが多い。
まさに「労多くして功少なし」です。
「異世界」ファンタジーにはまだまだ可能性があります。ですがすでにテンプレートと化した「異世界転生」ファンタジーはジョッキからあふれ出ているのです。泡だけが分厚くてビール自体が注げていません。
あなたがこれから「異世界転生」ファンタジーを書いても、こぼれ出るビールの泡でしかないのです。
それでもあなたが「異世界転生」ファンタジーを書きたい。そう思っているのなら、挑戦してもよいでしょう。
「異世界転生」ファンタジーのフォロワーの何パーセントが読むかはわかりませんが、仮に『小説家になろう』の全百六十万アカウントの〇.五パーセントが読んだとします。それだけでも八千ユーザーです。そのうち第二話を読んでもいいなと思ってくれるのは〇.五パーセントと仮定すると四十ユーザーになります。第一話から評価してくれる人はさらに〇.五パーセントくらいだと思いますので、一人いるかどうかです。
もし文章評価とストーリー評価で五ptずつ獲れたとして、第二話を読んでもよいと思った四十ユーザーのブックマークと合わせて九十ptしかとれないことになります。
これでランキングに載れると思いますか。『小説家になろう』のハイファンタジージャンルのランキングを確認してください。まったく届いていませんよね。
これは読む確率を〇.五パーセントとしているからです。
無名のあなたが書いた、売れ筋の「異世界転生」ファンタジーの注目度なんてその程度でしかありません。
だから何作も書いて、新しい読み手を確保し続けることで、固定客を増やすことがたいせつなのです。
今回の八千ユーザーから四十人の固定客を抱え、次も四十人、さらに四十人と加算されていけば、作品を重ねるごとに書き手の評価がうなぎのぼりになっていきます。
そしてランキングに載れたら、ユーザーの読む割合がぐんと上がるのです。
そこまで持っていくのがたいへん。
もちろん作品の質が高くて、八千ユーザーの中で十パーセントが第二話も読もうと思ってブックマークし、十パーセントが文章評価、ストーリー評価をしてくれたら、総合評価ポイントは二千四百ptになります。相当高いポイントです。
ここまでこれたら一人前の書き手と言えます。
書き手の伝えたいことが伝わる作品は評価される
前述しましたが、現在の流行りは「異世界転生」ファンタジーです。
ですが、それ以外でも「紙の書籍」となり、アニメ化された作品も数多くあります。
そのためには、ただ「面白かった」「楽しかった」という感想だけでは不じゅうぶんです。
書き手の「伝えたいこと」が読み手に伝わること。
そうすれば読み手は必ずあなたのリピーターになってくれます。
なにも流行りを追って「異世界転生」ファンタジーを書く必要なんてありません。
あなたの書きたいジャンルの物語を、「伝えたいこと」が伝わるように書くのです。
たとえ読み手のパイの少ないジャンルであっても、読み手の心に響く作品を書けば必ず評価されます。
「伝えたいこと」が過たず読み手に伝われば、それは書き手の勝利なのです。
実際、そういった作品は各ジャンルでランクインしています。
「今求められている小説」はこのような、書き手の「伝えたいこと」を読み手に正しく伝えられる小説です。
流行りの「異世界転生」ファンタジーではありません。
読み手にどう感じてほしいのか。なにに気づいてほしいのか。なにを知ってほしいのか。
そういった部分を明確に持って執筆してください。
最後に
今回は「今求められている小説」について述べました。
各小説投稿サイトによっても「求められている小説」は異なります。
しかし現在は「なろう系」と呼ばれる「異世界転生」ファンタジーが覇を競っているのです。
だから自分も「異世界転生」ファンタジーを書かなければと思ってはなりません。
あなたが「伝えたいこと」を読み手に「伝わる」ように書くのです。
多くの読み手にきちんと伝われば、その作品は名作となります。
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