919.文法篇:「ので」と「から」の使い分け
今回は「ので」と「から」の使い分けについてです。
どちらも原因や理由を表す接続助詞です。
かなり似ていますが、機能には違いもあります。
「ので」と「から」の使い分け
原因や理由といった「因果関係」を示す接続助詞に「ので」と「から」があります。
一見似たような接続助詞なのですが、使い方は明確に異なるのです。
「ので」と「から」の差
「ので」は客観的な事実による「因果関係」を示します。
次に二文を比べてください。
「ゲリラ雷雨に見舞われたので、花火大会は中止致します。」
「ゲリラ雷雨に見舞われたから、花火大会は中止致します。」
他にも、
「ゲリラ雷雨に見舞われたため、花火大会は中止致します。」
のように抽象名詞「ため」を使う方法もあります。
客観的な事実による「ので」
まず「ので」の文ですが、「花火大会が中止になった」のは「ゲリラ雷雨に見舞われた」という客観的な事実に基づいて後の文が生じるのです。自然現象を主観で起こすことは不可能ですからね。
「猛暑が続いたので、熱中症で搬送される患者が増えた。」
これも「猛暑が続いた」という客観的な事実に基づいて後の文が生じます。
「帰省のUターンラッシュに巻き込まれたので、帰宅が後れた。」
語り手が巻き込まれないと思っていて陥ってしまったので、こちらも客観的な事実です。
「本日は水曜日なので、休院です。」
本日が「水曜日」であることは語り手の外が起こる客観的な事実です。ということはここは「ので」を使いましょう。
一方「ので」を使いづらい例を三つ挙げます。
「満月がとても綺麗なので、明日もきっと晴れるだろう。」
「雨が強いので、レインコートを着ていこう。」
「敵わないので、やめておけ。」
この中だとふたつめの「雨が強いので、レインコートを着ていこう」は成立しますが、ちょっと怪しい表現ではありますね。
これらは「から」のほうが適しているのです。
「ので」は前回の推量文末のうち「らしい。」と相性が合います。
○「ゲリラ雷雨に見舞われたので、花火大会は中止になるらしい。」
とても自然に読めます。
これは「ので」の客観的な事実に基づく接続助詞が、「らしい。」の根拠を求める推量文末へ自然と導かれるからです。
では残りの「そうだ。」「ようだ。」も見てみましょう。
△「ゲリラ雷雨に見舞われたので、花火大会は中止になりそうだ。」
△「ゲリラ雷雨に見舞われたので、花火大会は中止になるようだ。」
ともに文としては成立していますが、「そうだ。」は語り手の内的な気づきやカンでしかありません。「ようだ。」も外的な気づきやカンが反映されています。
だから今ひとつ推量表現が噛み合わないのです。
「ので」を使ったら推量文末は「らしい。」にすることを忘れないでください。
理由付けの「から」
次に「から」の文について。こちらは語り手の意志に基づいて後の文が生じます。
「花火大会が中止になった」のは「ゲリラ雷雨に見舞われて」開催が困難だろうと語り手が判断したからです。
先ほど「から」のほうが適していると判断した三つの例を変換します。
「満月がとても綺麗だから、明日もきっと晴れるだろう。」
「雨が強いから、レインコートを着ていこう。」
「敵わないから、やめておけ。」
いずれも「から」のほうが文意が伝わりやすいですよね。
では「ので」を採用した三文を「から」に変換します。
△「猛暑が続いたから、熱中症で搬送される患者が増えた。」
△「帰省のUターンラッシュに巻き込まれたから、帰宅が後れた。」
△「本日は水曜日だから、休院です。」
いずれも語り手の都合を感じませんか。ここは客観的な「ので」を使いたくなります。
このように語り手都合の理由付けのために用いる接続助詞が「から」なのです。
「から」には後の文を語り手の意志を反映させるために用います。だから「たい。」「う。」「しろ。」などの意思表示の文末にする場合は、「から」を使うほうが自然です。
語り手の主張が強く出るため、婉曲に断りたい場合はあえて「ので」を用います。
「給料が安いから、残業代のために働く。」だと、書き手が理由付けつまり言い訳として書いているように読めるのです。
これを「給料が安いので、残業代のために働く。」と書けば、前提があることで後の文に正当性が生じます。
因果関係の抽象名詞「ため」
原因や理由といった「因果関係」を示すのは接続助詞だけではありません。
抽象名詞の「ため」にも「因果関係」を作る役割があります。
○「猛暑が続いたため、熱中症で搬送される患者が増えた。」
○「帰省のUターンラッシュに巻き込まれたため、帰宅が後れた。」
○「本日は水曜日のため、休院です。」
△「満月がとても綺麗なため、明日もきっと晴れるだろう。」
△「雨が強いため、レインコートを着ていこう。」
×「敵わないため、やめておけ。」
使いどころとしては「ので」はほぼ「ため」に変更可能です。
一方「から」はなかなかうまくフィットしません。
だから「ため」は「ので」のバリエーションとして憶えておきましょう。
最後に
今回は「「ので」と「から」の使い分け」について述べました。
基本的に「ので」は客観的に導き出されるもの、「から」は主観的に導き出したものについて用います。
他にも「ため」が「ので」と同じような役割を果たせるのです。
原因や理由を表したいなら「ので」「から」そして「ため」を有効に用いましょう。
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