917.文法篇:「て」か「、」か
今回は文のつなぎ方についてです。
「て」でつなぐのか読点「、」でつなぐのかで意味合いが変わります。
「て」か「、」か
文をつなぐとき、「て」を使うか「、」を使うかで迷うことはありませんか。
このふたつには明確な違いがあるのです。
まずは例文をご覧ください。
「て」と「、」の差
「打撃戦を制して決勝へ駒を進めた。」
「打撃戦を制し、決勝へ駒を進めた。」
このふたつには、さほど違いがあるように見えませんよね。
しかし「て」には前の文と次の文を「ひとつの文」とみなす役割があります。
言い換えるとわかりやすいかもしれません。
「打撃戦を制することで決勝へ駒を進めた。」
これはひとつながりの文です。
「て」を「することで」に変えると、述語「進めた」にかかる助詞「で」によって前の文が後の文の修飾語になっているがわかります。
対して「、」には前の文と次の文を切断して「ふたつの文」を並列させる「重文」として機能するのです。
「打撃戦を制し、」で戦いに勝ったことを説明します。「決勝へ駒を進めた。」は前の文が前提となって並び立つ文になっています。
つまり「打撃戦を制した。だから決勝へ駒を進めた。」の二文を「重文」にして一文で表現しようというわけです。
前の文はいったん役割を終え、後の文はそれを受けて展開されます。
この関係をもう少しわかりやすくしてみましょう。
「、」は切断する意図が強い
「明日はディズニーランドへ行ってミッキーマウスに会って色紙にサインしてもらって終電で帰る予定だ。」
「明日はディズニーランドへ行き、ミッキーマウスに会い、色紙にサインしてもらい、終電で帰る予定だ。」
この二文の違いがわかりますか。
「て」を使った文は「すべてディズニーランドで行なわれる」ことなのです。
対して「、」で区切ると「ディズニーランドへ行く」ことも「ミッキーマウスに会う」ことも「色紙にサインしてもらう」ことも「終電で帰る予定」のことも、すべて別々の場所で行なわれているように感じられませんか。
これが「、」には前の文と次の文を切断して「重文」として機能させることなのです。
たとえば「ディズニーランド」に行ったとして、「ミッキーマウスに会う」場所は「ディズニーシー」でもかまいません。「ドナルドダック」から「色紙にサインしてもらう」のでもよいのです。そして帰りの終電は「ディズニーランド」からでなくても成立します。
この四文が切断されることによって、このような誤解を読み手に与えてしまうのです。
「明日はディズニーランドにいるミッキーマウスから色紙へサインしてもらい、終電で帰る予定だ。」
これは「て」でつないでいた文を二文に分けたものです。前の三文の助詞を変えて一文に仕立て、後の一文と切り離しました。
文章として成立しているから怖いところです。
「て」でつなぐと、多くの場合このように「一文」に要約できます。
どうしてもまとまらない文だけを外に出してしまえばよいのです。
「て」は小学生レベルになりやすい
「昨日はカラオケ店に行って歌を唄って食事をしてきた。」
「昨日はカラオケ店に行き、歌を唄い、食事をしてきた。」
これならどうでしょうか。
「て」でつなぐと「歌を唄う」ことも「食事をする」ことも、すべてカラオケ店で行なわれた行為であることがわかります。
対して「、」で切断すると、「カラオケ店に行く」行為と「歌を唄う」行為がまったく別の場所で行なわれてもかまわないのです。当然「食事をする」のもカラオケ店である必要はありません。
「昨日はカラオケ店に行き、スナックで歌を唄い、ファミレスで食事をしてきた。」
こう解釈できるのが「、」で切断する意図です。
しかしただ「て」でつないでいくのも芸がないので、また助詞をいじります。
「昨日はカラオケ店で歌を唄いながら食事もしてきた。」
とこんな具合に一文へ変換できてしまいます。
「て」でつなぐのはとても簡単です。
小学生の作文は、たいてい「て」でつながっています。
「今日は遠足に行って高尾山に登って頂上でお弁当を食べて友達とゲームの話をして山を下りて電車で家に帰りました。」
小学生と話す機会があったり、小学生同士の会話を聞いていたり、小学生時代の卒業文集を読み返してみるとわかります。
小学生は文を切りたくないのです。
切ったところで話を割り込まれるのが幼心にわかっています。
だから自分の言いたいことを言い終えるまでは割り込まれたくないのです。
話の腰を折られると子どもは途端に機嫌を悪くします。
相手が小学生なら、話し終えるのを待ってから「ここはどうだったの?」と尋ねることで会話が弾むのです。
ちなみに「今日は遠足に行って、高尾山に登って、頂上でお弁当を食べて、友達とゲームの話をして、山を下りて、電車で家に帰りました。」のように「て、」で区切る方法もあります。
これは機能として「つなぐ」のか「切断する」のかおわかりでしょうか。
答えは「つなぐ」です。この読点「、」は「文の視認性を高めるために形而上」打っているにすぎません。
つまり「て」の機能をそのままに、より読みやすくしようとの配慮で「、」を打っているだけなのです。
ですが、一般的に「て」と「、」は機能が真逆ですから、本来なら相容れません。
それを理解したうえで「て、」を使いましょう。
最後に
今回は「「て」か「、」か」についてまとめました。
同じように使ってしまう「て」と「、」にも、明確な違いがあります。
いかに有効活用できるかを考えながら執筆しましょう。
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