906.文法篇:主語と述語を近づける
今回は「主語と述語を近づける」ことについてです。
文には「主語」と「述語」があります。日本語ではこれが離れる傾向にあります。
「主語」は文頭に、「述語」は文末に来ることが多いからです。
これをどうにかして近づけてやるだけで、文意が伝わりやすくなります。
主語と述語を近づける
文には「主語」と「述語」があります。
日本語は「主語」と「述語」が離れやすい言語です。
ですが、できるかぎり「主語」と「述語」を近づけてやるだけで、格段に理解しやすい文に仕立てられます。
主語と述語はできるだけ近づける
「東京は世界でいちばん安全な都市として有名である。」
この文章で言いたいのは「主語代用」の「東京は」と「述語」の「有名である。」だと思います。
しかし「主語」の代用である「東京は」からは離れているのです。
これでは少しストレスを感じます。
そこで「主語」と「述語」を近づけてみましょう。
「世界でいちばん安全な都市として、東京は有名である。」
とも書けます。まぁこの程度の長さの文なら、添削前の文でもそれほど違和感を覚えない方がいると思います。
そこで添削前を長く改変します。
「東京は銃犯罪も殺人事件も暴行傷害事件もきわめて少なく世界でいちばん安全な都市として有名である。」くらいまで伸ばすと、どうでしょうか。わかりづらさは増したはずです。
「主語」と「述語」は変わっていないので、基本形は同じくなります。
「銃犯罪も殺人事件も暴行傷害事件もきわめて少なく世界でいちばん安全な都市として、東京は有名である。」とできます。
しかしこのくらい長くなると二文に分けるほうがよりわかりやすくなるのです。
「銃犯罪も殺人事件も暴行傷害事件もきわめて少ない。世界でいちばん安全な都市として、東京は有名である。」
かなりわかりやすくなりましたね。
複文の入れ子構造
「俺は奴が彼女がスマートフォンで新着チェックしているときに他の女性へLINEのメッセージを送ったのを見逃さなかった。」
この文は複文です。一読しただけで情景が思い浮かんだでしょうか。
意味がよくわからなかったと思います。あえてそう書きましたので。これで意味がすんなりわかる方がいらっしゃったら、私の文章力不足です。
まずこの複文は三つの「主語」と「述語」の「入れ子構造」となっています。
それぞれ「主語」と「述語」を抜き出してみましょう。
「俺は(主語)見逃さなかった(述語)」「奴が(主語)他の女性へLINEのメッセージを送った(述語)」「彼女が(主語)スマートフォンで新着チェックしている(述語)」
この三つが切り離されているため、なにが言いたいのかわからなくなるのです。
重文に展開する
順番を入れ替えて複文の「入れ子構造」を外してみます。
「彼女がスマートフォンで新着チェックしているとき、奴が他の女性へLINEのメッセージを送ったのを、俺は見逃さなかった。」
なぜ読点を打ったのか。「主語」と「述語」の組み合わせがそこで成立しているからです。添削前の文では「主語」と「述語」が入れ子構造になっています。だから読点が打てなかったのです。
順番を入れ替えて読点を打ったことで、この一文はかなりわかりやすくなりました。
「主語」と「述語」が近づいたので、複文が重文へと変化したのです。
単文に切り替える
しかし、一文中に「主語」を示す助詞「が」が二回、「主語代用」が可能な助詞「は」が一回出てきますので、やはりすんなり納得できないと思います。
そこで、すべて単文に切り替えてみましょう。
「彼女がスマートフォンで新着チェックしている。そんなとき、奴が他の女性へLINEのメッセージを送った。それを俺は見逃さなかった。」
意味が劇的にわかりやすくなりました。
しかしぶつ切りになり、「こそあど」代名詞が二つ加わってしまったため、少しくどい印象を受けます。
あえて重文にする
そこで、二文を重文にして、残る一文を単文にするとどうなるでしょうか。
「彼女がスマートフォンで新着チェックしているとき、奴が他の女性へLINEのメッセージを送った。それを俺は見逃さなかった。」
「彼女がスマートフォンで新着チェックしている。そんなとき、奴が他の女性へLINEのメッセージを送ったのを、俺は見逃さなかった。」
くどさが幾分とれたと思います。「こそあど」代名詞の長さを考えるなら、前者の「それを俺は見逃さなかった。」文のほうがスマートですし、「主体」が明確なのでわかりやすいでしょう。
前者を選ぶとき、一文に「主語」の助詞「が」が二回出てきます。そこで「奴は」と「主語」を「主体」に切り替えてみましょう。
「彼女がスマートフォンで新着チェックしているとき、奴は他の女性へLINEのメッセージを送った。それを俺は見逃さなかった。」
これが例文のスマートな添削例です。
もし後者を選べば、助詞「を」が二回出てきます。これもスマートとは言えません。助詞の入れ替えでは対応できませんので、こちらはバツです。
助詞は「と」「や」「とか」「やら」などの並列のものでないかぎり、一文でひとつが原則となっています。助詞「を」も「一回」が原則なので、「〜メッセージを送ったのを、〜」は厳密にはルール違反です。
(ただし助詞「を」と助詞「のを」と解釈すれば、別の助詞として扱えるので、その意図で書かれているかぎりはルールに適合しています)。
最後に
今回は「主語と述語を近づける」ことについて述べました。
英語では「I am」「I think」のように、「主語」と「述語」は基本的に隣接しているのです。他の外国語もたいていは「主語」と「述語」は近い位置にあります。
中国語の『論語』では「子曰く」とこちらも「主語」と「述語」は隣接しています。
しかし日本語は「主語」が文頭に来て、「述語」が文末に来ることが多いのです。その間に「述語」へかかる修飾語がわんさか付いてしまうのです。
そこで「主語と述語を近づける」方針で行きましょう。
ただし、一文が短い場合は、「主語」文頭、「述語」文末でも、それほど読みにくさは感じないはずです。
ただ「主語と述語を近づける」意識はつねに持っておきましょう。
読み手の誤読を避けられるからです。
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