897.惹起篇:書評は他の読み手へのオススメを書く
今回は「書評」についてです。
他の書き手が書いた作品を積極的に書評していきましょう。
書評された書き手は、有益な情報が手に入りますし、書評を読んだ方も「面白そうな小説」が簡単に見つけられます。
つまり書き手と読み手を「マッチング」させる役割を担うのが「書評」なのです。
書評は他の読み手へのオススメを書く
書評と批評を勘違いしてはなりません。
批評とはどこが「よかった点」か「悪かった点」かを書くだけです。
これでは読み手に「この小説がオススメです」とは言えませんよね。
書評とは「読み手にとって有益な小説をオススメする」ことです。
批評は点数をつけて良し悪しを論ずる
日本の「書評」は主に「書評者の主観で小説に点数をつけてランク分けし、どこが良くてどこが悪いのかを明らかにする」ことが目的です。
これは厳密にいえば「批評」なのです。
「この描写は伝わりづらい」「この表現が秀逸だった」などを書きます。
ストーリーの展開などを加味して、総合的に何点なのか、星いくつなのかをただ付けるだけです。『週刊ファミ通』の「クロスレビュー」コーナーを連想いただければわかるかと思います。あのように批評家の点数と良い点、悪い点を列挙するのが批評なのです。
だから「批評」は点数や星の数でランク分けするだけで、「読み手にとって有益な小説をオススメする」ことはまずありません。
ひたすら批判し、たまに褒めてやるだけです。
「批評」ならそれでもよいでしょう。
しかしお題目は「書評」であって「批評」ではないのです。
小説という魚をまな板に載せて三枚に卸すのかと思ったら、ぶつ切りにして鍋に放り込むだけ。
料理としてはあまりにもお粗末です。
「批評」で大問題なのは、「著名な作品の批評」しかしない点にあります。
「書評」は「読み手にとって有益な小説をオススメする」のですが、「批評」は「すでに有名な作品をランク分け」するにとどまるのです。
悪口は誰にでもできる
「批評」は「批判的な評価」。はっきり言って「悪口」です。
「悪口」は誰にでも言えます。小学生や幼児ですらできるのです。
そんな「批評」を有り難がっている間、日本の小説界は縮退し続けます。
誰にでもできる「悪口」とは、要は「アラ探し」です。
「この描写では伝わりづらい」とか「この表現では誤解を招く」とか。
悪かった点は目につきやすいので、誰が読んでも「ここは減点」と書きやすい。
よかった点を拾い上げようとせず、揚げ足取りに終始するわけですから、建設的な意見など出ようはずもありません。
ボロカスに書かれて切り捨てられる作品のなんと多いことか。
かと言って「よかった点」に目を向けようとすれば、物語を深く読まなければなりません。
評価を下すまでにかなりの時間がかかってしまうのです。
だから、多くの「批評家」は「よかった点」は探さず、手短に挙げられる「悪かった点」だけを書きます。
「批評家」にも生活がありますから、ひとつの作品にそれほど時間を割けない言い分もあるでしょう。
ですがそうやって書いた「悪口」は、別にその「批評家」でなければ書けない内容ではありません。
「悪口」は誰にでも書けます。
書評に求められるのは、「よかった点」と「悪かった点」を総合して「これは一読に値する」と読み手にオススメする姿勢です。
書評は埋もれている名作を読み手に提示する
著名な作品を取り上げるだけの「批評」に対し、埋もれている名作を発掘してくるのが真の「書評」です。
すでに有名な作品をあえて「書評」することは、蛇足に過ぎます。多くの読み手が支持しているから有名になったのであり、あえて「書評」を書くまでもないからです。
「書評」を書くとして、「悪かった点」の「アラ探し」をしたところで、多くの支持者は「その程度のことで悪く言うな」と思うでしょう。「よかった点」を書いても「そんなの当たり前だろう」と思います。
著名な作品を「書評」したところで、反感しか買わないのです。
だからこそ「書評」は埋もれている名作を発掘し、よかった点がどこか、多くの読み手に知らしめるために書きます。
「書評」は「悪口」ではありません。「推薦文」です。
「こういう感覚を味わえるから、絶対に読んでほしい」のような肯定的な評価を下し、埋もれていた名作を世に知らしめます。
だから「書評家」は多くの注目を集める存在となるのです。
『カクヨム』には「創作論・評論」というジャンルがあります。ここに「書評」を掲載すれば、多くの読み手が確保できることは間違いありません。
ただし多くの読み手を獲得するのは「書評」であって「批評」ではないのです。
読み手の誰も、他人の作品を上から目線で「批評」つまり「悪口」を言っているのを見ても楽しめません。
「書評」はそれだけで閲覧数(PV)を増やしますし、取り上げられる埋もれた作品もアクセス数を稼ぐことができるのです。
「批評」は始めのうちは閲覧数(PV)を稼げるのですが、次第に読み手の心は離れていきます。それは「悪口」を公言しているだけだからです。
書くなら断然「書評」にしましょう。
「今回のオススメ小説はこれです」と紹介すれば、誰にも角が立ちませんよね。
最後に
今回は「書評は他の読み手へのオススメを書く」ことについて述べました。
あなたは他人の小説を読んでいるでしょうか。
執筆に勤しんでいると、どうしても「書くこと」にのみ意識が向いてしまいます。
他人の小説を読んでみると、意外なことに気づくものです。
その気づきが、あなたの小説に活力をもたらしてくれます。
納期が迫っていて追い込みをかけているような時期以外は、できるだけ他人の小説も読んでみましょう。
そして面白かったら「書評」を書くのです。
面白い作品をあなただけが知っていても、連載は続きません。
「書評」を書いて、より多くの方に読んでもらい、連載を続けてもらうのです。
そうなって初めて、「書評」が世のためになります。
「悪口」を言う「批評」ではなく、「オススメ」する「書評」を書きましょう。
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