896.惹起篇:主人公をゴールへ連れていく

 今回は「目標を持って連載する」ことについてです。

 連載小説は「主人公をいかにゴールへ運ぶのか」を読ませます。





主人公をゴールへ連れていく


 究極で言えば、小説は「主人公を結末ゴールへ連れていく」ために書かれています。

 結末ゴールへ至るまでにさまざまな困難が立ちふさがるのです。この困難が「出来事イベント」であり「エピソード」を構成します。

 物語の筋ストーリーは、主人公を困難に直面させてどんな反応リアクションが現れるのかを考えることでもあるのです。




ゴールにたどり着く

 小説を書くとき、決めなければならないことがあります。

 それは「小説の終わり方」つまり「結末エンディング」です。

 中でも「主人公の結末ゴール」を決めなければ、そこまで読み手を連れていけません。

 これは「企画書」「あらすじ」「箱書き」「プロット」をきちんと創ってあれば、明確に定まっているものです。

 もし「主人公の結末ゴール」が決まっていないのでしたら、まず「企画書」を書いて、書き出し当初の「主人公の結末ゴール」つまり「主人公がどうなった」が明確に示されるよう取り計らいます。

 とくに連載小説を書くときは、連載が進むごとに当初の「あらすじ」では想定していなかった「エピソード」が加わっていくものです。

 結果として当初の「主人公の結末ゴール」へたどり着けないことがあります。そんなときは、「主人公の結末ゴール」を柔軟に変更して対処してください。

 優先するべきなのは「物語の筋ストーリーが明確に示される」ことです。

 ある方向へ話が進んでいて、ある事件が起こり、進むべき方向が変わってしまうことは現実でもよくあります。

 だから、仮にでもよいので「主人公の結末ゴール」をまず定めておきましょう。


「主人公の結末ゴール」が決まったとして、そこに至るまでの過程や展開や構成が思いつかないこともあります。また「エピソード」のネタ切れを起こして書けなくなってしまうこともあるのです。

 そんなときは、当初「エピソード」で想定していなかった「出来事イベント」を起こして主人公に対応を迫りましょう。

 どんな「出来事イベント」でもかまいません。それに対応する主人公の姿を見せることがストーリーの展開であり構成なのです。

 それによって「主人公の結末ゴール」が変わってしまうのは前記したとおり。

 柔軟に対応できる方だけが、連載小説を滞りなく書けるのです。

 もし「主人公の結末ゴール」が変わるのが嫌なら、連載はせず長編小説としてきっちり書ききってください。




目標を持って連載する

「主人公の結末ゴール」がどうなるかわからないけど、この主人公はじゅうぶん面白いと思うので連載したい。

 そう考える方が多いと思います。

 物語の「結末エンディング」も定まりませんから、いつどのように終わってよいのかが見極められません。

 そんな場合は、当面の目標として「結末エンディング」を用意しておいて、連載を開始してください。

 途中で「出来事イベント」を起こして「エピソード」を作り、主人公や周りの人物たちにどのような影響があるのか。それを考えます。

 ここからが「想像力」を問われる場面です。

 影響を受けた主人公や周りの人物たちは、その後どのように変化するのでしょうか。

 頭の中で「こういう主人公がこの出来事イベントをこのように解決したら、こうなるのではないか」ということを、納得がいくまで繰り返しシミュレーションしてください。「想像力」を駆使してシミュレーションしまくるのです。

「この出来事イベントを経ればこうなるはず」と妥協せず、納得するまで「どういう変化が起こるのだろう」と自分に問い詰めます。

 書き手が主人公であるかのように追い込んで、「私ならこう変わるはず。では主人公の人となりならどのように変わるのだろう」を導き出すのです。

「想像力」は「妄想力」とも呼ばれます。

「もし私にこんなことが起こったら、こうなっちゃうだろうな」と「想像」ではなく「妄想」するからです。

「想像力」は他人を思いやって考えることであり、「妄想力」は自分に当てはめて考えることになります。

 いずれか得意なほうを選んでいただいて結構です。

「想像力」を働かせるか「妄想力」を働かせるか。

 ただ気をつけたいのが、「感情に溺れてしまわない」ことです。

「想像力」は他人のことを徹底的に慮る必要があります。「妄想力」は自分に当てはめて徹底的に状況に浸る必要があるのです。

 それにより、あなたは「|出来事」から波及する「感情に溺れそう」になります。

 ここで「感情に溺れてしまう」と、「思い込み」が強くなって客観的な判断ができなくなるのです。

「感情に溺れて」主観的に決められた答えは、基本的に不正解であることが多い。

 他人を慮ったり、自分で状況に浸ったりしても、つねに冷静な理性から「こういう出来事に対してこういう反応をすれば、こういう結果になってこういう変化が訪れる」と正解へ導いていくのです。




矛盾はエタるもと

 また連載を執筆していると「矛盾」も発生しやすい。

「矛盾」が発生すると、先々のストーリー展開や構成が通用しなくなります。

 新たに展開や構成を生み出さなけばなりません。これに時間がとられて連載を途中で断念する方が多いのです。俗に言う「エタる」状態になります。

「矛盾」はとにかく厄介です。

 当初の展開や構成を押し切ると「矛盾」が読み手にも明らかになってきます。

 かといって先々の展開や構成を差し替えるには時間がかかり、毎日連載が途切れてしまう可能性もあるのです。

 ここで「これからの展開や構成」をなるべく短時間で再構成するスキルが求められます。

 短時間で再構成できれば毎日連載は途切れません。

 あとはどれだけ早期に「矛盾」に気づけるかどうかです。

 このスキルは長編小説や連載小説を数多く書くことでしか培われません。

 だから第一作から大ブレイクを目指さず、ひとつずつきっちりと書きあげて構成力と「矛盾」を見抜く目を鍛えましょう。





最後に

 今回は「主人公をゴールへ連れていく」ことから「目標を持って連載する」ことについて述べました。

「想像力」「妄想力」「構成力」いずれも連載には不可欠なスキルです。

 一度連載を始めたら「絶対にエタらない」つまり「永遠に終わらないことにはならない」ようにしてください。

 一度でも「エタって」しまうと、読み手が潮を引くように離れていってしまいますよ。



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