887.惹起篇:エロスを感じさせるフレーズを放り込む
今回は「エロスを感じさせるフレーズ」についてです。
人間は本質的にエロスを求めます。
文学小説であろうとも、エロスから逃れることはできません。
エロスを感じさせるフレーズを放り込む
小説を生真面目に書く方には否定される向きもあります。
文章を書いているとき、どれだけ読み手が物語世界に惹き込まれるか。
簡単にできるのは「エロスを感じさせるフレーズ」を放り込むことです。
エロスを感じさせるフレーズとは
「エロスを感じさせるフレーズ」と言われてもピンときませんよね。
そこで簡単な例文を作りました。
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渉は右斜め前の席に座る景子を見ていた。
期末試験中は誰はばかることなく彼女の姿を目に焼き付けられる。
そんなとき、景子からチラリと見えた。
景子が回答用紙を持ち上げたのだ。そこには彼女の答えが書かれてあった。
消しゴムのカスを払うためなのだろうが、渉にはチラリと見えたのである。
――――――――
なにげない文章ですが、妙に引っかかる単語がありませんか。
あえて「チラリと見えた」という表現を使っています。
この言葉、ちょっと扇情的だと思いませんか。
普通「チラリと見えた」と言えば、スカートの中だったり半袖シャツの脇から覗く下着だったりと、ちょっといやらしい雰囲気を持つ言葉です。
もし「チラリと見えた」を省くと以下のようになります。
――――――――
渉は右斜め前の席に座る景子を見ていた。
期末試験中は誰はばかることなく彼女の姿を目に焼き付けられる。
そんなとき、景子が回答用紙を持ち上げた。そこには彼女の答えが書かれてあった。
消しゴムのカスを払うためなのだろうが、渉には回答が見えたのである。
――――――――
なにか、先ほどより味けない印象を受けませんか。
前文よりも惹きつけられなかったと思います。
これが「エロスを感じさせるフレーズ」の持つ魔力です。
他にも「スカートが風に舞っている」と書くだけでお色気シーンを期待してしまいますよね。
「うなじを掻き上げた」と言うのも色気を出す動作ですよね。
「ヒップラインの強調されたハイレグ水着」なんて狙っていないと書けません。
生真面目に小説を書いている方は、このような手法を嫌う向きがあります。
しかし使わないことで大きな損をしているのです。
読み手の興味を最も惹くのは「異性のエロティックな描写」です。
どんなに生真面目な文学小説でも、「異性のエロティックな描写」が書かれていない作品なんてほとんどありません。
「文豪」は小説にエロスを見出だし、たいていの作品には少なからずエロスが含まれています。
石原慎太郎氏も川端康成氏も大江健三郎氏も、近しいところでは村上春樹氏も、小説にエロスを持ち込んでいるのです。
それを知ってか知らずか、生真面目な書き手は「文学小説にエロスは不要」などと考えています。
J−POPはエロスにあふれている
皆様はサザンオールスターズやB’z、Mr.Children、L'Arc〜en〜Cielはお好きでしょうか。
その歌詞をきちんとお読みになった経験はおありでしょうか。
皆様がお好きな楽曲の多くは「エロスを感じさせるフレーズ」がふんだんに散りばめられています。
具体的に曲名やフレーズを上げるとJASRACから著作権使用料を請求されるので差し控えますが、有名な楽曲の歌詞をよく読んでください。必ずと言ってよいほど「エロスを感じさせるフレーズ」が書かれています。
刺激的な「エロスを感じさせるフレーズ」を用いているからこそ、彼らは女性の人気が高いのです。
一般的に男性はメロディーを重視し、女性は歌詞を重視するとされています。
そして女性は耳年増ですから「エロスを感じさせるフレーズ」にはひじょうに敏感です。
ちょっとした「エロスを感じさせるフレーズ」が出てくるだけでいろいろ妄想できてしまいます。それによって女性が彼らの楽曲の
エロスは直接書かない
だからと言って一般向け作品で「エロス」を直接書いてはなりません。
直接書くとただの「成人向け小説」つまり「官能小説」になってしまいます。
しかし女性はどこまでが「直接」で、どこまでが「感じさせる」なのかの境界線を曖昧にとらえているのです。
少女小説にすら「エロス」はふんだんに盛り込まれています。それを大人寄りにした乙女系小説では「エッチシーン」がダイレクトに書かれているのです。
女性はそれらに親しんで育ちましたから、「エロスを感じさせるフレーズ」を書くよりも「エロス」をそのまま書いてしまうことが多い。
だから『カクヨム』の恋愛ジャンル、ラブコメジャンルは「官能小説」だらけになってしまうのです。
カクヨムは明確に「R−18」の境界線を規約で明記したほうがよいでしょう。できれば『小説家になろう』のように「R−18」のレーティングで閲覧も別サイトから行なうような仕組みが望ましいところです。
エロスのフレーズ
たとえば「熱いジュース」と書いた場合、通常ジュースは冷たくして飲むものですから、「エロスを感じさせるフレーズ」と判断されます。
よく「カルピス」「ケフィア」などと表されるものも、読む人が読めば「エロスを感じさせるフレーズ」です。(ただし、どちらも「登録商標」ですから、そちらからのツッコミも入りますのでご用心ください)。
こういった特殊なものだけでなく「
ポップスやロックを多く聴くのは、中学生から二十代です。第二次性徴期を過ぎた彼ら彼女らのいちばんの関心は「エロス」。これは普遍なテーマです。
ですが前述したとおり、「エロス」を直接書けばただの「官能小説」になります。
「エロス」は「感じさせる」ものであって、直接書くものではありません。
それが一般小説に求められる最低限のマナーでありルールです。
「そのもの」ズバリを書いてはなりません。「連想させるもの」を書くのです。
そうすることで、男性向けの一般小説でも女性の読み手を数多く抱えられます。
また中学生以上の多くの男性も、あなたの小説のフォロワーにまわるのです。
文学小説だからといって「エロスを感じさせるフレーズ」で読み手を釣るのは邪道などと考えないでください。
かつての「文豪」たちも「エロスを感じさせるフレーズ」を多用して人気を不動のものとしたのです。
文学小説であっても、男性のシンボルで障子に穴をあけた石原慎太郎氏がいます。
彼は東京都知事時代に、自らのこの描写をもって「これより過激な描写は成人向けだ」と決めました。
今この表現を読んで「直接書いているだろう」と思う方が多いのではないでしょうか。
これを「盗人猛々しい」と言います。
最後に
今回は「エロスを感じさせるフレーズを放り込む」ことについて述べました。
あなたの小説に女性や中高生男子のファンを増やしたいとお思いでしたら、「エロスを感じさせるフレーズ」を作中に散りばめましょう。
ですが「直接」書いてはダメです。あくまでも「匂わせる」程度にしてください。
「直接」書いてはただの「官能小説」になってしまいますからね。
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