883.惹起篇:書き出しでインパクトある登場シーンを書く
今回は「インパクトのある書き出し」についてです。
主人公は「唐突」で「インパクトのある」登場をさせられません。
そこでちょっと工夫します。
書き出しでインパクトある登場シーンを書く
小説を書いているときに注意したいのは、「インパクトのある人物の登場シーンを書く」ことです。
それには「唐突」で「とんでもない」登場の仕方をさせましょう。
「夜道を歩いていると突然女性が駆け寄ってきた。その向こうから刃物を持った男性らしき人物が追いかけてくる。」
たったこれだけで、女性と刃物を持った男性らしき人物を「唐突」で「とんでもない」登場シーンとして語れます。
唐突でインパクトのある書き出し
主人公以外の他人であれば、このように「唐突」で「とんでもないインパクト」のある書き出しができます。
しかし肝心の主人公は「唐突」でも「とんでもないインパクト」でも書けません。
なぜなら、一人称視点の地の文は主人公の心の中が主な描写になりますから、最初の一文で「唐突」に「とんでもないインパクトのある」登場ができないからです。
ここで書き手は知恵を絞らなければなりません。
主人公を「唐突」で「とんでもないインパクト」のある書き出しは書けるのか。
ぜひ悩んでください。
思いつきましたか。結構難しい課題だったと思います。
まずこれまで私が述べてきたことを思い出した方がいるはずです。
つまり主人公を「冒頭から
これだと嫌でも主人公のキャラが立ちますよね。主人公は
実はもっとインパクトのある書き出しにできます。
もちろん「
考えてみてください。
答え合わせ
わかりましたか。
ライトノベルは基本的に「主人公の一人称視点」で書かれます。
これを冒頭だけ「三人称視点」もしくは「別人の一人称視点」で書くのです。
主人公へ逸早く感情移入してもらうには「主人公の一人称視点」がベストである。その結論は揺るぎません。
しかし主人公自体を「唐突」で「とんでもないインパクト」のある登場のさせ方に演出したいのであれば。書き出しだけは「三人称視点」もしくは「別人の一人称視点」を取り入れるべきです。
書き手や選考さんにとっては「視点がブレるのが気になる」方がいるのも事実。
ですが一度書き出しを「三人称視点」「別人の一人称視点」で書いて、主人公を「唐突」に「とんでもないインパクト」のある登場のさせ方をすると、その後「主人公の一人称視点」に切り替えたとき、読み手が主人公に深く感情移入しやすくなる効果があるのです。
たとえば、
――――――――
殴りかかってくる柄の悪そうな男の右腕を右手で払いのけたと同時に相手の右脇に左のボディーブローを叩き込んだ。じゅうぶんな手応えがあり、男は苦悶のうめきをあげながらその場にうずくまる。
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主人公はケンカ慣れしてるか格闘技を身につけているのか不明ですが、相当強いのではないかと想定できますよね。こういうキャラの立て方が普通です。
これを「三人称視点」で書き換えます。
――――――――
柄の悪い男が葛城に殴りかかる。彼はすかさず半身に構えて男の右腕を右手で払いのけたと同時に相手の右脇に左のボディーブローを叩き込んだ。男は苦悶に満ちたうめきをあげながらその場にうずくまる。
――――――――
「別人の一人称視点」でも書き換えてみます。
――――――――
柄の悪そうな男が殴りかかる。彼はすかさず半身に構えて男の右腕を右手で払いのけたと同時に相手の右脇に左のボディーブローを叩き込んだように見えた。男は苦悶に満ちたうめきをあげながらその場にうずくまる。
――――――――
これで主人公の葛城は相当の
書き出しを「三人称視点」「別人の一人称視点」で書く場合、
実は書き出しを「三人称視点」「別人の一人称視点」で書くライトノベルがかなりあるのです。
古くは水野良氏『ロードス島戦記 灰色の魔女』もプロローグは「三人称視点」で書かれています。賀東招二氏『フルメタル・パニック!』のプロローグも「三人称視点」です。
あえて書き出しを「三人称視点」「別人の一人称視点」にすると、主人公の冷酷な一面を垣間見せたり、他人へ誓いを立てたりできます。
これによって書き出しを「三人称視点」で書いた小説は、本編開始時には読み手の心をグッと鷲づかみするのです。
書き出しを「三人称視点」で書くと、主人公が置かれている状況や世界観も簡単に説明できます。
応用の利く書き出しのパターンなので、憶えておいて損はありません。
最後に
今回は「書き出しでインパクトある登場シーンを書く」ことについて述べました。
一人称視点の小説でも、登場シーンだけは三人称視点や別人の一人称視点で読ませるように工夫してください。
それだけで主人公であっても「唐突」で「インパクトのある」登場をさせられます。
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