880.惹起篇:書きたいものを書け

 今回は「書きたいジャンルを書くべき」ということについてです。

 人気があるから「異世界ファンタジー」を書く。でも書き手本人は「異世界ファンタジー」は苦手で、実際は「ホラー」が書きたいとします。

 仮に「プロの書き手」になれたとして、あなたは書きたくもない「異世界ファンタジー」を書き続けなければならなくなるのです。

 ツラすぎませんか。





書きたいものを書け


 あなたが小説を書いているのは、将来「プロの書き手」になるためかもしれません。

 そのとき、あなたが「自分には合わない作品を書かなければならない」としたら。

 それでもあなたは「プロの書き手」を選びますか。




手っ取り早くプロになるには

 とても身も蓋もない言い方をします。

 小説投稿サイトで流行っている「テンプレート」を用いた作品を書けば、多くの読み手が支持して注目を浴び、結果トップランカーとなって出版社からお呼びがかかることもある。

 読み手に媚びることで「プロの書き手」になれてしまうのです。

 もちろんトップランカーになったからといって、全員に出版依頼が来ることなどありません。

 でもランキングに載らないような作品が出版社から声がかかることは「けっしてない」のです。

「テンプレート」は読み手ウケする物語の大枠で出来ています。

『小説家になろう』のハイファンタジージャンルでは、「主人公最強」「チート」「無双」「Sランク」「追放」「成り上がり」「ざまぁ」「ハーレム」などのキーワードに人気があります。もうこれだけでひとつの「テンプレート」ですよね。

『小説家になろう』からプロデビューしたければ、上記のキーワードを用いた「テンプレート」の小説を書いてトップランカーになればよい。

 では、そういう作品があなたの書きたい小説とは大きく異なるものであったらどうでしょうか。

 たとえ「プロの書き手」になっても、最初に執筆依頼が来るのはトップランカーとなった作品の「連載化」です。

 あなたはこの作品、書きたくて書きましたか。

 書きたい小説とは大きく異なる作品だったはずですよね。

 しかし書きたくもない作品を書き続けなければ、「プロの書き手」ではいられません。

「自分には合わない作品を書かなければならない」としたら。

 それでもあなたは「プロの書き手」を選びますか。




書きたい作品を小説賞・新人賞へ

 できれば「書きたくないものを書き続けなければならない」状態は避けるべきです。

 であれば、ランキングに固執することなく、あなたが書きたい作品を書きましょう。

 もちろん「テンプレート」に則っていないので、ランキングはたいしたことがないはずです。ランキングに載れないことのほうが多い。

 それでも「書きたい作品を書く」べきです。

 そういう作品は「小説賞・新人賞」向きの作品になります。

 つまり「自分が書きたい作品を応募できる『小説賞・新人賞』」があれば、そこへ全力を叩きつけてください。

「小説賞・新人賞」に応募すれば、それだけで閲覧数は高まりますし、きちんと読んでくれる読み手の方は必ず評価してくれます。

 また「小説賞・新人賞」の選考をするのは、『小説家になろう』の読み手ではありません。出版社の編集さんや孫請けの下読みさん、新人作家さん方です。

『カクヨム』の場合は、『カクヨム』の読み手がどれだけ評価したかを加味したうえで選考にかけられるという話を聞いたことがあります。こうなると、どうしても「テンプレート」の作品が有利です。

 それを回避するため、『カクヨム』で開催される「小説賞・新人賞」は、「テンプレート」とは異なるジャンルの作品が求められる傾向にあります。2019年7月11日現在では、「大人も子供も参加できる! カクヨム甲子園《テーマ別》」というコンテストが始まりました。四つのテーマのいずれかを用いて、「現役中高生が審査する」三千字から一万五千字までの短編小説を募集しています。

 短編小説ですから「テンプレート」が使いづらい。「現役中高生が審査する」わけですから、なおのこと「テンプレート」は飽きられやすい。

 つまり「自分が書きたい作品」を書いても一発逆転が可能であるため、「プロの書き手」を目指す方ならまず応募しておきたい小説賞でしょう。

 また「ホラー小説」が書きたい方は、いよいよ出番です。「ホラー」の季節がやってまいりました。ここで小説賞に応募せずして、いつ「プロの書き手」を目指すのか。チャンスは眼の前に転がっています。

 書きたいものが書ける小説賞は、絶対に逃してはなりません。今すぐ「企画書」「あらすじ」「箱書き」「プロット」を書きましょう。そして納得がいったらすぐに執筆を開始して、募集期限までに確実に応募するのです。

 もし「ホラー小説」が得意なのに、「剣と魔法のファンタジー」を書いてプロデビューしてしまったら。あなたは好きでもないジャンルの作品を書き続けなければならないのです。そしてもし手を抜いてしまったら、売上は目に見えて落ちます。そうなると出版社もあなたに未来を感じず、連載を畳むように指示するのです。そして連載終了後、プロの座を追われてアマチュアに戻されてしまいます。

 不本意な小説を書いてプロデビューしても先はない。それなら本意な小説つまりあなたの書きたい小説を書いてプロデビューを勝ち取ったほうが、長期的な視野に立てば有利になります。

 だから安易に「テンプレート」を用いてトップランカーを目指すよりも、小説投稿サイトで開催される「小説賞・新人賞」にだけ作品を応募していったほうが建設的なのです。

 現在、小説投稿サイトだけでも十以上ありますから、開催される「小説賞・新人賞」も最低でも十はあるはずです。『ピクシブ文芸』のように、一度「ピクシブ文芸大賞」が開かれただけで、他の「小説賞・新人賞」がほとんど開かれていない小説投稿サイトもあります。だから投稿してもよさそうな小説投稿サイトがあれば、五個でも十個でもアカウントを取得しておくべきです。そこで開催される「小説賞・新人賞」だけを睨んで、小説を執筆しましょう。

 ひとつの小説投稿サイトにこだわると、チャンスは一年に一回しか回ってこないかもしれません。しかし、十個の小説投稿サイトのアカウントがあればチャンスを十倍にできるわけです。これを利用しない手はありません。




自分を信じる

 書いている自分が「面白い」と思わない作品が、面白くなるはずがありません。

 まぁ「テンプレート」を利用すれば書けなくはないのですが、それでも読み手にウケるためには、書いている本人も「面白い」と思えるレベルにはあるはずです。

 よく「面白い小説が書きたい」という方がいます。

 何人の方が「面白い」と言ってくれた作品だから自信を持てる面があるのです。

 それが十人でも千人でも一万人でも変わりません。

 他人が「面白い」と言ってくれるから、それを「自信に転換できる」のです。

 書いている最中は「この作品、面白いかな」と思っているもの。疑心暗鬼の中で手探りだけで執筆します。

 そうして書いた作品を読んだ方から「とても面白かったです」「早く続きが読みたいです」というような反応を得て、私たちはようやく「面白い小説が書けたんだ」とわかるのです。





最後に

 今回は「書きたいものを書け」ということを述べました。

 手っ取り早く「プロの書き手」になりたいなら、「テンプレート」に則った作品を書けばよい。しかしそれがあなたの得意なジャンルかどうかはよくよく吟味してください。

「ホラー」小説が得意だと思っているのに、「プロの書き手」を多く輩出している「剣と魔法のファンタジー」小説の「テンプレート」で書こうとしてはなりません。

 仮に「プロデビュー」できたとして、不得意なジャンルの作品を書き続けられるだけの知識や意欲モチベーションがもつのでしょうか。

 それなら自分の得意なジャンルで勝負して、自分を信じて作品を書くべきです。



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