871.創作篇:プロットを書く
今回は「プロット」についてです。
「箱書き」を創ったら本文をいきなり書くのではなく、いったん「プロット」に落とし込みます。
やるのとやらないのとでは、作品に完成度がひと味もふた味も変わってくるのです。
また「プロット」にはレベルがあります。何回も「プロット」を書いて精度を高めていけば、より伝わる表現にできるのです。
プロットを書く
「箱書き」を創ったら、「プロット」を書いたのち表現を改めながら本文を執筆していくことになります。
最初の「プロット」はドラマ脚本のト書きのようなものです。
物語の流れを、誰が発言し、誰が行動し、誰がリアクションしたのかを書きます。
プロットは下書き
「箱書き」は物語のラフです。
対して「プロット」はそのラフから主線を浮き出す下書きになります。
ライトノベルであれば、基本的にキャラクターの魅力を存分に表現しなければなりません。
文学小説であれば、キャラクターの心の機微を豊かな描写力で表現します。
またライトノベルの主流である「異世界ファンタジー」では、どんな世界であるのかも説明します。
「プロット」はあくまでも下書きであり、書いてみて「どうも違うな」と感じたら、どんどん書き換えていきましょう。
大まかな筋書きは「あらすじ」で確定させていますし、どんな
どうせ「プロット」は実際に執筆する段階で加筆修正されるものです。それほど厳密に流れを決める必要はありません。ただし執筆する段階で迷いが出ないよう、どの
なにも「
次の
「伏線」を張ってあるから、次回が待ち遠しくなります。
これから執筆する長編小説や連載小説で、次回の投稿が待ち遠しくなるよう仕向けるには「伏線」を巧みに使いこなさなければなりません。
伏線はあらすじで配置し、プロットで形にする
「伏線」は「プロット」を書いているときに必ず盛り込む必要があります。
「プロット」で素通りしてしまうと、執筆時では確実に「伏線」を入れ忘れるのです。
「伏線」は「あらすじ」の段階で、どのエピソードにこういう「伏線」を入れていこうと仕込みましょう。
そして「箱書き」に割っていった際、どの場面で「伏線」を出すのが効果的か。それを思案するのです。
ここまでできていれば「プロット」で「伏線」の張り忘れはなくせます。
これでもまだ「伏線」の張り忘れが起こるのは、かなりのうっかりさんだけです。
「プロット」の段階で「伏線」を明確に文章化してあれば、実際の執筆ではまず入れ忘れません。
プロットは執筆の叩き台
それほど「プロット」は細々とした点についても書かなければなりません。
ある人にとっては「執筆した」と思ったレベルの文章が、手練れの書き手からは「プロット」に過ぎないと思われるのです。
このあたりは「お絵描き」に似ています。
最初はバランスをとるだけで精いっぱいで、整った形にするのは困難です。
慣れてくるとバランスがとれてきて形も整ってきます。しかし色を塗るのは下手なままです。
さらに描いているとアニメのセル画のような塗り方ができるようになります。
他にも水彩画や水墨画、油絵調の厚塗り、CG特有のグラデーション塗りなどさまざまな塗り方があるのです。
当面そのすべてをマスターする必要はありません。
絵師さんが自身で納得できる塗り方さえできればよいのです。
ただし仕事として絵を描くことになったら、さまざまな塗り方を知らないといけません。クライアントからどんな塗り方を指定されても、対応できるのがプロの絵師です。
小説の「プロット」もセル塗りの技術を憶えたにすぎません。
他の塗り方に発展させるための叩き台のようなものです。
だから実際の執筆は「プロット」よりもさらに高度なテクニックを用いて書くことになります。
第一目標として「プロット」を書けるようになり、それを叩き台にしてさらに精緻な描写へ進めるようを心がけましょう。
そうすれば、今よりも確実に筆力がアップしますよ。
プロットの注意点
「プロット」はドラマや映画の脚本とそれほど差はありません。「ト書き」でもじゅうぶんなのです。
書き慣れてきたら「ト書き」から実際の執筆に近いドラフトを書きましょう。
――――――――
午後五時。夕暮れのサッカー部の部室。チームメイトの隆と耕太がユニフォームから制服に着替えている。そこへ後れて高橋コーチが入ってくる。
サッカーパンツを脱ぎながら隆が耕太に語る。
隆「なぁ耕太。今日来たコーチ、どう思う?」
耕太「高島コーチだっけ。俺は悪くないと思うけどな」
と耕太はスパイクを脱ぎながら応えた。
隆「俺は嫌いだね。ランニングばっかりじゃないか」
と隆が不満を口にする。
耕太「サッカーは持久力勝負だろ。まず走り込みでスタミナをつけるのは当たり前だよ」
隆「だからって、今日は一回もボールを蹴っていないんだぞ。ストレスも溜まるだろ」
と隆の不満はどんどん出てくる。
隆「ただ走らせるだけじゃなく、ボールを蹴りながらでもいいじゃないか。ボールの感覚がなくなったら、本番でドリブルがうまくできなくなるかもしれないんだぞ」
耕太「まぁ確かにドリブルの練習はしていないな。でも前線から足を使ってボールをチェイスすることだってストライカーの仕事だろ」
と耕太はランニングの重要性を隆に納得してもらえるよう話す。
隆「ストライカーは点を決めてこそだ。ただ前線からボールを追うだけなら、馬でも雇えってんだ」
耕太「馬にあの切り返しは不可能だろ」
隆「たとえだって言ってんだよ!」
と隆が大声で叫ぶと同時に部室のドアが開いた。
隆と耕太はびっくりして着替えの手を止め、高橋コーチを眺める。
高橋「サッカーは百二十分全力で走り続けられる者だけがトップ選手になれるんだぞ」
隆「高校サッカーは四十分ハーフだから八十分走れればよくないですか?」
高橋「私は高校だけで終わらない選手を育てたいんだよ」
隆&耕太「高校だけで終わらない選手?」
と隆と耕太はその言葉に唖然とした。
高橋「そうだ。お前たちはA代表に入れるだけのテクニックがじゅうぶんある」
と隆と耕太は次の言葉を待った。
高橋「足りないのは持久力と集中力だけなんだ」
隆「持久力と集中力……」
と隆は反復する。
――――――――
という具合に、会話文の頭に発言者名を記し、動作は地の文に「と〜」の形で書くのが「ト書き」です。
次がドラフトです。
――――――――
午後五時。夕暮れのサッカー部の部室。チームメイトの隆と耕太がユニフォームから制服に着替えている。そこへ後れて高橋コーチが入ってくる。
サッカー部の練習が終わった午後五時。部室でふたりの選手が制服に着替えている。
「なぁ耕太。今日来たコーチ、どう思う?」
サッカーパンツを脱ぎながら、隆は耕太に声をかける。
「高島コーチだっけ。俺は悪くないと思うけどな」
耕太はスパイクを脱いだ。
「俺は嫌いだね。ランニングばっかりじゃないか」
不満を公言する。いつもの隆らしい。
「サッカーは持久力勝負だろ。まず走り込みでスタミナをつけるのは当たり前だよ」
「だからって、今日は一回もボールを蹴っていないんだぞ。ストレスも溜まるだろ」
隆の不満はどんどん募ってくる。
「ただ走らせるだけじゃなく、ボールを蹴りながらでもいいじゃないか。ボールの感覚がなくなったら、本番でドリブルがうまくできなくなるかもしれないんだぞ」
「まぁ確かにドリブルの練習はしていないな。でも前線から足を使ってボールをチェイスすることだってストライカーの仕事だろ」
ランニングの重要性を隆に納得してもらえるよう話して聞かせる。
「ストライカーは点を決めてこそだ。ただ前線からボールを追うだけなら、馬でも雇えってんだ」
「馬にあの切り返しは不可能だろ」
「たとえだって言ってんだよ!」
隆が大声で叫ぶと同時に部室のドアが開いた。
隆と耕太はびっくりして着替えの手を止め、高橋コーチを眺める。
「サッカーは百二十分全力で走り続けられる者だけがトップ選手になれるんだぞ」
「高校サッカーは四十分ハーフだから八十分走れればよくないですか?」
「私は高校だけで終わらない選手を育てたいんだよ」
「高校だけで終わらない選手?」
隆と耕太はその言葉に唖然とした。
「そうだ。お前たちはA代表に入れるだけのテクニックがじゅうぶんある」
二人は次の言葉を待った。
「足りないのは持久力と集中力だけなんだ」
「持久力と集中力……」
隆は反復する。
――――――――
これがドラフトです。地の文が「と〜」から別の形に変わりました。より小説に近づけたのです。
でも表現の点では、このまま投稿するのが憚られるレベルになっています。
だから「プロット」は叩き台なのです。
ここからどれだけ表現を増やし、磨きをかけられるのか。それが書き手の筆力を如実に表します。
ドラフトのレベルで連載して応募しているかぎり、「小説賞・新人賞」は獲れません。
こんなものは小学生にだって書けます。
描写力・表現力のありったけを執筆に使うべきです。
その差こそが「小説賞・新人賞」の一次選考を突破する鍵を握っています。
もちろん「命題」「テーマ」「企画書」「あらすじ」「箱書き」と経ていることが大前提です。
これが出来ていればストーリーは明確ですから、あとは描写力と表現力の勝負になります。
「プロット」はどれだけ精緻でもかまいません。
執筆の前にどれだけ精緻なドラフトを書けるかで、小説の質の高さを担保できるのです。
けっしてドラフト段階で満足しないようにしましょう。
最後に
今回は「プロットを書く」ことについて述べました。
「プロット」はドラフトの精緻さによってレベル分けできます。
執筆に迷いが出ないレベルまで精緻に書かれてあれば、平凡な展開でも傑作にできるのです。
そうなれば「小説賞・新人賞」の一次選考を通過することだって夢ではなくなります。
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