850.創作篇:小説の書き方「命題」

 今回は小説を書く過程を追いながら説明していこうとするシリーズに入ります。

 まずは「命題」です。

 書き手の心の奥深いところに芽生えている「命題」を見つけ出すことで、あなたの書きたい小説が見つかります。





小説の書き方「命題」


 小説を書き出す前にすべきことを拾って順に挙げていきます。




書き手の「命題」を探す

 書き手には、「こういう物語が好きだ」という作品の傾向が必ずあります。

 そして小説を執筆する際、そういう傾向の小説ならすらすらと書けるものです。

 たとえば「恋愛小説」を読まない書き手は、「恋愛小説」をうまく書けません。

「剣と魔法のファンタジー」を好んで読む書き手は、「剣と魔法のファンタジー」ならすらすらと書けます。

「こういう物語が好き」と思えるジャンルの中に「命題」が隠されているのです。

 一口に「剣と魔法のファンタジー」と言っても、剣のほうが強い世界、魔法のほうが強い世界、調和のとれた世界があります。また王侯貴族が存在する世界や民主主義の存在する世界もあるでしょう。

「ミステリー小説」なら十津川警部のような優秀な警察官が仕切るのか、シャーロック・ホームズのような名探偵が活躍するのか、高校のクラブ活動で謎に挑むのか、いっそ少年探偵団が登場にするのかなどです。

 このようなジャンルの中から、あなたの深層心理が求める「命題」を探し出すためには、読書遍歴を振り返りましょう。




読書遍歴を振り返る

 私は養護施設にいた頃『アーサー王伝説』を夢中で読んでいました。だから「剣と魔法のファンタジー」が心に刷り込まれています。

 その影響で『ケルト神話』『ギリシャ神話』『北欧神話』に親しみました。水野良氏『ロードス島戦記』がPCゲーム雑誌『コンプティーク』にTRPGテーブルトーク・ロールプレイングゲーム『Dungeons & Dragons』リプレイで始まると知った頃から毎月購読して楽しんでいたくらいです。

 だから私は「剣と魔法のファンタジー」を「命題」として挙げられます。興味があるから、それに伴う知識も相当数ありますからね。

 反面、私は現在に至るまで異性同性を問わず「恋愛感情」を持ったことがありません。これも私が養護施設育ちだったことが原因です。

 養護施設では男女が別エリアで共同生活をしていましたから、男性集団の中で育った私にとって、女性は「異種族」にしか見えないのです。だから綺麗な女性やかわいい女性を見ても「恋愛感情」を催すことはついぞありませんでした。


 このように子どもの頃に貪るように読んだ小説のジャンルや、人生経験の中に「命題」が隠されています。

 引きこもりニートの方も「引きこもりニート」が主人公として活躍する物語を書けるはず。それもまた「命題」なのです。


 あなたはまだ中高生だから、人生経験が浅くて「命題」なんてたいそうなものはありません。と言われるかもしれませんね。

 大丈夫。安心してください。中高生であればこその「命題」もあります。

 それは「中高生が主人公の日常もの」です。

「同時代性」の観点からも、現役中高生は現在の中高生が主人公の小説を書くのに適しています。

 あなたが思ったこと考えたこと感じたことをそのまま書くだけで、現実味リアリティーのある小説に仕上がるのです。

 大人がいくら努力しても埋められない差が生じます。

 中高生でこれから小説を書こうとするならば、その優位性アドバンテージを有効に活かしましょう。




命題探し

 それではあなたの「命題」を探し出してみてください。

 小説に限らず、マンガやアニメ、映画やドラマ、ゲームなどの物語を思い出せるかぎり列記するのです。

 その中から共通している要素を探し出してください。「恋愛もの」が多い方もいらっしゃれば、「SFもの」が多い方もいらっしゃるはず。「推理もの」ばかりの方もいれば、「青春・日常もの」ばかりの方もいますよね。「スポーツもの」が好きだった方もいらっしゃるはずです。

 逆に「いろんなジャンルの物語に触れてきたので、これというものが決められない」方もいると思います。その場合は「さまざまなジャンルをミックスした作品」が書けるのです。


 また「落ち物パズル」が好きなら戦術とスリルに興味があるでしょうし、「詰将棋」が好きなら論理的な思考に興味があると思います。

 こういったジャンルで分けられない要素こそが「命題」として最も輝いているのです。


 だから、まず「読書遍歴」「視聴遍歴」「プレイ遍歴」を書き出しましょう。

 そこから「命題」を見つけ出せば、あなたの知名度ネームバリューが高まる小説が「必ず」書けるようになります。

「命題」とは異なる小説を書こうとしても、じゅうぶんな興味と知識がないため、満足に書けるはずがないのです。

 どうしてもあなたの「命題」と異なる作品を書きたいのなら。とにかく勉強してください。

 コンピュータに詳しくないけど、最先端の量子コンピュータについて書きたいのであれば、コンピュータの勉強をするのです。デイトレーダーの物語を書きたいのであれば、株式投資やFX投資などについてじゅうぶん勉強してください。付け焼き刃ではありますが、小説を書くだけならじゅうぶんな知識を得られるはずです。

 勉強もせずに「命題」と異なる作品は書けません。


「命題」はあなたが興味のあるものを指し示しています。

 だからこそ、あなたはそれを深く知ろうとして勉強にも身が入るのです。

 知りたい情報ですから、勉強が苦しくも嫌でもない。ひたすら飽くことなく貪欲に情報を我がものとするでしょう。

 だからこそ「命題」を見つけ出せれば、あなたが書ける「最も得意な小説」へと導いてくれるのです。





最後に

 今回は「命題」について述べました。

「小説を書く」という行為が他の文章ジャンルと異なるのは、まさに書き手が読み手に「物語」を届けようとする意志にあります。

 小説を書いて童話や寓話になったとしても、それはやはり小説なのです。

「命題」がわかれば「どんな物語を届けたい」のかが見えてきます。

「命題」がわからないまま小説を書いても、読み手にはなにも伝わらないのです。



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