844.創作篇:執筆は計画的に

 今回は「計画的に執筆する」ことについてです。

 小説をコンスタントに書き続けるには、事前に計画を立てておきましょう。





執筆は計画的に


 ある程度思いどおりに小説が書けるようになったら、スケジュールを組んで「小説賞・新人賞」に応募しましょう。

 丸々一年かけてひとつの「小説賞・新人賞」を狙ってもよいですし、応募できそうな賞へ手当たり次第に応募しまくってもよいのです。

 そのためには計画的に執筆する必要があります。




目標とすべき小説賞・新人賞を決める

 皆様はまず「応募すべき小説賞・新人賞を決め」てください。

 あなたが書きやすいジャンルとお題のものがよいでしょう。

 ジャンル不問の「小説賞・新人賞」もあります。しかしジャンル不問の賞は応募総数が一万点をかるく超えるため、最初のうちは目標とするべきではありません。

 きちんとジャンルが明記されている「小説賞・新人賞」を選びましょう。


 次に分量を確認してください。十万字以上の長編小説を求めているのか、二万五千字未満の短編小説を求めているのか。これがわかっていれば短編賞に長編小説を応募するような愚を犯さずに済みます。

 しかしここに落とし穴があります。

「小説賞・新人賞」で求められる文字数は「文字の数」だけでカウントします。多くのテキストエディタや小説投稿サイトでは、空白や改行も一文字にカウントして表示されるのです。そこで空白や改行込みで十万字を超えたと喜んでいたら、「文字の数」だけを見たら九万字程度だったということがよく起こります。

 テキストエディタなどで「空白や改行」を除いた文字数をチェックできる場合はよいのですが、そういう機能が付いていない場合はどうしようもありません。

 その場合、『小説家になろう』の投稿フォームに小説をいったんコピー&ペーストしてください。『小説家になろう』の投稿フォームでは空白や改行を含んだ文字数と、含まない文字数が別々に表示されます。ここで章単位の文字数をチェックしておけば、「文字数が足りない」事態は回避できるのです。

 実は私自身、長編小説賞に応募すべく十万字以上を目安に書いていたら、空白や改行を除いた「文字の数」が応募規定を満たさなかった、という事態に直面したことがあります。こればかりは「文字の数」を失念していた私に非があります。

 当時使っていたテキストエディタ『CotEditer』は空白や改行も文字数に含まれる仕様で、それに気づかず長編小説を書いていたのです。これで応募規定を満たさない小説を応募してしまいました。結果は言わずもがなですね。


 最後に締切をチェックしてください。今から書き始めて締切日までに間に合うのかどうか。

 これがわからないと、締切を過ぎてから応募作が完成するようなムダな執筆をする羽目に陥ります。

 あなたが規定された分量をどのくらいのスピードで書けるのか把握していれば、締切日を見ただけで「間に合うか間に合わないか」は判断できるのです。


 以上三点を押さえたうえで、応募する「小説賞・新人賞」を決めましょう。




締切は短めに設定する

「小説賞・新人賞」を狙って小説を書くことを決めた方も多いでしょう。私もつねに狙うよう焚きつけていますからね。

 では応募するタイミングはいつがよいのでしょうか。

「締切にピタリと合わせて応募したい」という律儀な方もいると思います。

 しかしそれでは万が一の出来事が起こったときに「不完全な作品」を応募することになりかねません。

 そうならないために、あなたが決める「脱稿」の「締切」を応募期日より手前に設定してください。できるだけ早めに設定しておくとかなり有利です。

 早めたぶんだけ推敲にじっくりと時間をかけられますし、複数の「小説賞・新人賞」を狙うこともできます。

 具体的には、応募期間の半分程度の期日を「締切」の目標にするとよいでしょう。

 あらかじめ「締切」を早めに設定しておけば、「早く書き終えなくちゃ」との圧力が働いて、結果的に速筆できるようにもなります。

「締切」効果を最大限に発揮するには、一度決めたことはいっさい妥協しないことです。妥協してしまうと「怠けグセ」がつきます。

 一度「怠けグセ」がついてしまうと、怠けないで期日どおりに書きあげることが困難になるのです。クセはなくそうと思ってもつい出てしまうもの。「無くて七癖」といいます。本人は無いと思っていても、他人から見れば七つもクセが見つかるものなのです。

 だから絶対に「怠けグセ」だけはつけないでください。

 そのためには締切をいっさい破らないことを信条にしてください。


 皆様もご期待されていると思われる『新世紀エヴァンゲリオン』の新劇場版完結作は最近になってようやく製作がスタートしたそうです。監督の庵野秀明氏はこれまでなにをやっていたのでしょうか。

 これが「怠けグセ」がついた人の製作スタイルとなってしまいます。いつ完成するのか受け手からはさっぱりわからず、無為に時間だけが過ぎていきます。

 それに比べて世界で最も売れた小説シリーズとして有名なJ.K.ローリング氏『ハリー・ポッター』シリーズは、停滞することなく次々と新作が発売されましたよね。

 時間管理がしっかりしていて、「怠けグセ」がついていない人なら当たり前のことなのです。


 畑の違う庵野秀明氏とJ.K.ローリング氏を同列で扱っていますが、物語の製作をしているという一点においてはなんら異なるところがありません。

 一度でも「怠けグセ」がついてしまうと、締切を破ることへの罪悪感を感じなくなるのです。

 それは「紙の書籍化」されてプロデビューしたい人にとっては禁忌タブーだといえます。

 出版社は定期的に新刊を書いてもらわなければ、「小説賞・新人賞」の開催費用を回収できないのです。それができない書き手をプロとして扱うなんてことはしません。すぐに戦力外通告をされて、アマチュアに引き戻されるのです。そうなったら再び「小説賞」を勝ち取って「紙の書籍化」を目指すしかなくなります。

 しかし「怠けグセ」のある方は、いつまた原稿を落としてしまうかわかりません。主催する出版社レーベルは、優秀なあなたの作品を「怠けグセ」のある書き手だからと割り引いて選考することだってあるはずです。


 だからこそ絶対に「怠けグセ」をつけてはなりません。一度設定した期日は絶対です。守れなければプロとして活動することは不可能だと思って執筆活動をしてください。




タイマーをセットして書く

「締切」効果に近いのですが、執筆するときについダラダラと時間を費やしてしまうことがあります。

 そんなときは「タイマー」を使いましょう。

 まず普通に一投稿ぶんを書いて、何時間何分かかったかを確認します。

 次にその時間より一割ほど短い「タイマー」をセットしてください。

 つねにギリギリの時間で執筆するほうが集中力が増すからです。

 集中力が増せば「時間の密度」も高くなります。より効率的に執筆できる脳力が身につくのです。

 最初は無理に思える「タイマー」でも、それに間に合わせようと工夫できます。工夫こそが「小説を効率的に書く」ために必要なものなのです。


「小説を効率的に書く」必要なんてないんじゃないか。

 そう思われる方もいらっしゃるでしょう。

 ですが、プロデビューして「紙の書籍」に主戦場を移した場合、やらなければならないことが山積します。

 自身の小説を書くことはもちろん、「小説賞・新人賞」の下読みの仕事、対談や講演などの開催とそれに伴う原稿作り、「小説講座」の講師など、「小説で食べていく」ために必要なことはなんでもやらなければならないのです。

 それでいて自身の小説を期日までに校了するのはかなりハードなスケジュールになります。

 だからこそ、可能な限り速筆になる必要があるのです。

 そして速筆になるには「タイマー」をセットして執筆の時間を短縮する努力が必須になります。





最後に

 今回は「執筆は計画的に」について述べました。

 皆様にはぜひ新作を次々と生み出して、「小説賞・新人賞」を狙ってほしい。

 それが本コラムの目指すべき場所だからです。小説投稿サイトは「小説賞・新人賞」を獲るレベルまで己を鍛える場所になります。けっして小説投稿サイトで連載することがゴールではないのです。

 確かに小説投稿サイトで連載することをゴールと設定する方は多い。ですが、それだけだと伸びていかないのです。

 見据える場所は高ければ高いほうが、成長する余地を与えてくれます。



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