839.創作篇:挫折しないで最後まで書く

 今回は「毎日小説を書く努力をする」ことについてです。

 あなたは毎日小説を書けているでしょうか。

 なにか理由をつけて書かない日ができたりしていませんか。





挫折しないで最後まで書く


 短編小説でも一、二時間で書ける人は少ないと思います。

 着想から構成をし文章として表現するのには、思いのほか時間がかかるものだからです。

 もっとたいへんなのが長編小説や連載小説。

 なにがたいへんかというと、とにかく分量が多いことです。

 長編小説は原稿用紙「三百枚」「十万字」がひとつの目安になります。これだけの分量を一日二日で書き上げられる方はまずいないでしょう。

 そして連載小説は、毎日次話を投稿し続けなければなりません。

 この長い道のりを考えるだけで、気が遠くまたは重くなる方が多いと思います。

 それでも信頼を獲得するために、毎日の連載は欠かせないのです。




毎日小説を書く努力をする

 短編小説にも連載小説にも言えることですが、小説は毎日書いてください。

「書かない日」が一日でもあると、それに甘えてつい妥協してしまいます。「前に休んだ日があったのだから、今日書かなくてもいいよね」となるのです。

 小説を連載したいのなら、そして将来プロになりたいのなら、「書かない日」は作らないでください。毎日連載するからこそ、小説を書くことが好きになりますし、技術も向上していきます。

 最初は五分程度でもかまいません。必ず執筆環境に身を置いて、一文でもよいので書いてみることです。「文章を書く」ために体を慣らしましょう。「文章を書く」ことに抵抗を感じるようでは、小説を書くことはできません。

 当初は「文章」でかまいません。「文章」に抵抗がなくなったら、「小説」の形に寄せていきます。「描写」を加えていくのです。

 五分が慣れてきたら十分、十五分と長くしていき、書く分量も一節、一場面シーンと長くていきましょう。

「小説」を一日三十分でも一時間でも書けるようになれば、あなたは連載するだけの筆力がついたと判断できます。

 そうなったら「連載小説」の重圧を背負ってみてください。


 とりあえず、毎日千五百字〜三千字くらいの文章を十回程度連載して、物語を完結させてみるのです。

 この演習で十日間一度も落とさず連載ができたら、また別の短編連作を続けてください。

 短編連作が滞りなく書けると自信を持ったら、いよいよ本格的な連載小説を始めましょう。

 連載小説は毎日千五百字から三千字程度を目安とし、物語が完結するまで毎日掲載するつもりで執筆するのです。

 これができれば、ランキングに載るべく「物語」の質を上げていけます。

 物事には必ず入り口と出口があります。連載小説を始める入り口から入り、連載が終わる出口まで歩み続けるのです。途中で絶対に立ち止まらないでください。毎日連載するつもりで挑みましょう。各地の神話に見られる「冥府から死者を蘇らせたければ、なにがあっても後ろを振り返ってはならない」という掟に似ています。

「でも自分はこの主人公の小説しか書きたくない」というのであれば短編連作を書けばよいのです。サー・アーサー・コナン・ドイル氏『シャーロック・ホームズの冒険』も短編連作で作られました。まったく同じ主人公の小説をいくつでも書いてよいのです。




一度始めたら、終わるまで面倒を見る

 どんなに反響の振るわない連載小説であっても、一度始めたからにはきちんと終わりまで面倒を見てください。

 もしあなたの連載小説のひとつが爆発的に人気が出たとします。

 すると「他の小説も読んでみたい」と思って過去作をチェックする方が必ず出てくるのです。そのとき、未完の連載小説がゴロゴロ転がっているようではなりません。

「いつまた今の連載小説が未完で終わるか」わからない状態に置かれると、読み手はあなたの人気連載を追わなくなりかねません。

 だから、どんなに反響の振るわない連載小説であっても、投稿したのであれば必ず完結させてください。

 まだ見ぬ将来のヒット作のためでもありますし、小説を完結させる力を身につけるためでもあります。

 小説を終わらせるのは意外と難しいのです。とくに長期連載してきた小説をきっちりと終わらせるのは至難の業と言えます。これまでに張った「伏線」をすべて回収し、主人公だけでなく、主要キャラのその後にも気を配らなければなりません。


 短編小説やショートショートの場合は逆に、冗長にならないようスパッと打ち切ったほうが印象がよくなります。

 とくにショートショートは「オチ」がついたところで潔く終わりましょう。「オチ」の余韻が強くなるからです。

 ショートショートの場合、たとえば、

――――――――

「隣の空き地に塀が出来たんだってね」

「カッコいい〜」

――――――――

 ここでスパッと終わります。そうすると盛り上がったところでいきなり終わりますから、オチの印象が強まるのです。(例文はベタですが)。お笑い番組『笑点』の人気コーナー「大喜利」の回答が、ショートショートの形になってします。ショートショートを書きたいとお考えなら、『笑点』をチェックするとよいでしょう。

 短編小説も似たようなもので、「主人公がどうなった」だけを書いて他の主要キャラの結末ゴールを書かないことがよくあります。そのほうがあれこれ妄想する余地が残るから印象が強まるのです。




期限を区切って尻に火をつける

 物語を書く技能スキルは、数をこなさないかぎり身につきません。

「小説を書きたい」という強い思いがありながら、途中で面倒くさく感じてしまうことがあります。

 ヤケになって適当に文字数を埋めていくだけの作業に堕してしまったら、その時点で「小説を書く」から「文字を埋める」だけの単純作業と化すのです。

 プロの書き手になれば、自分が書きたくない物語にも、ひとつひとつ魂を込めて執筆しなければなりません。数をこなす必要のあるプロであっても手抜きはしないのです。

 一度「小説を書く」と決めたら、書きあげるまで何日でも創作活動に没頭できること。これが書き手を縛ります。

 CGを描くにしても、ラフだけを書いていたらいつまで経っても絵は完成しません。いつかは主線起こし、仮塗り、着色、特殊効果、調整を経てCGを完成させなければなりませなん。

「小説を書く」のも同じです。いつまでも「小説を書くぞ」と意気込むばかりで、一文も書かない状態が続くのであれば、看板倒れもいいところ。寓話『狼少年』のようなものです。

「狼が来たぞ」と叫ぶだけで村中の人たちが家に隠れるさまを見て、少年が満足感を覚えます。しかし村人たちは少年の嘘に慣れてしまい、本当に狼がやってきて少年が「狼が来たぞ」と叫んでも、誰も逃げようとしなかったのです。そうして引き起こされるパニックは想像を絶します。

「小説を書くぞ」と言うのも同じことです。「小説少年」「小説青年」「小説中年」がいたとして、いつも「小説を書くぞ」と吹聴するばかりでいっこうに第一話が投稿されない。それで小説投稿サイトを利用する読み手たちが振り向いてくれるでしょうか。「また言ってるよ」と冷ややかな目で見られるだけです。

(本コラム執筆を優先して連載小説を書けない私のようなものです)。

 小説を書くと決めたら、スケジュールをしっかりと立てて何日までにあらすじを書き、何日までに箱書きを揃え、何日までにプロットを仕立てるのか。前もって期限を区切ることで、お尻に火をつけるのです。書き手も火を消すための努力は惜しみませんよね。

 




最後に

 今回は「挫折しないで最後まで書く」ことについて述べました。

 小説は一朝一夕で書けません。

 書ききれれば、あなたは第一のステップを上ったことを意味します。

 そこを踏み台にして、さらなる作品に着手してください。

 数をこなすごとに小説を書く技能スキルは必ず身につきます。

 たいせつなのは、完成するまで「絶対にあきらめない」ことです。



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