806.構成篇:趣味嗜好、目指すもの、性格、体躯

 今回は前回に引き続き「履歴書」の中で変わる可能性があるもの、確実に変わるものについてです。

「趣味嗜好、目指すもの、性格、体躯(身長、体重、体つき、容貌)」を見ていきましょう。





趣味嗜好、目指すもの、性格、体躯


 人物の設定の中で変わるものを挙げています。

 今回は後半の「趣味嗜好、目指すもの、性格、体躯」です。




趣味嗜好

 経歴に関係するものとして趣味嗜好が挙げられます。それが高じて部活動やサークル活動もするでしょう。

 人物はさまざまな特技を持っています。そのほとんどが趣味嗜好によるものです。

 人物画を描くのが趣味の人は「似顔絵を描く」のがうまいとか、ギターを弾くのが趣味の人は「作曲」ができるとか、ワインを飲むのが趣味の人は「|銘柄当て(テイスティング)」ができるとか。そういった趣味嗜好が特技に昇華するのが一般的です。

「剣と魔法のファンタジー」で盗賊シーフが勇者パーティーにいられるのは、鍵をこじ開けるのがうまかったり、気配を殺して敵の背後をとったり、盗賊ギルドから情報を買ってきたりできるからですよね。そうでなければ犯罪者である盗賊が勇者パーティーにいる必然性がありません。官憲に突き出されるのがオチでしょう。

 特技があるからそれを「よい方向で使うこと」を条件として所属しているのです。「欠点」を批判せずに「長所」を活かすのはすぐれた判断だと言えます。

 趣味嗜好や生業、部活動やサークル活動などによって特技が生まれ、それを活かす物語ストーリーを構築するのです。そうすればパーティーに欠けている才能や技能がなくなって、勇者パーティーはうまく運営していけます。そしてより能力の高い人材が仲間に加わったから、能力の低い人物は勇者パーティーを追い出されて、「追放もの」の小説が生み出される素ともなったのです。




目指すもの

「目指すもの」とはなんぞやとお思いでしょう。現実の履歴書でいう「志望動機」のことです。

 人物は物語の中で「なにを目指して」「なにを求めて」生きているか。それがわからなければ、その人物の判断基準がわかりません。

「小を切り捨てて大を生かす」ようなものを目指すのなら、政治家になって自治体を運営しようという動機になります。「眼の前で人が死ぬのを座して見ることはできない」という動機があれば、困った人を見たら進んで手を貸そうとするでしょう。

「剣と魔法のファンタジー」の勇者は「魔王から世界を救う」ことを目指して冒険を続けます。そのためにはパーティーの顔ぶれは各分野で最高の人材を揃えたくなるのです。そしていい人材を見つけたから、それより劣る人物を解雇して良才を登用します。だから解雇されて切り捨てられた人材が現れるのです。これにより『小説家になろう』で「追放」ものが流行ることとなりました。

 これまでは勇者と魔王の物語だったものが、切り捨てられた者の物語もあるはずだという発想です。武器屋や道具屋や商人の物語、辺境に住む一介の村人にも物語はあります。そしてそのほとんどがすでに主人公となっているのです。

 人物には「目指すもの」「求めるもの」が必ずあります。勇者にも魔王にも武器屋にも道具屋にも商人にも辺境に住む一介の村人にも「目指すもの」「求めるもの」は必ずあるのです。

 履歴書になぜ「志望動機」の欄があるのか。それは「将来どうなりたいのか」つまり「目指すもの」「求めるもの」を採用側が明確に知りたいからです。

「目指すもの」「求めるもの」も物語が始まる前までのものと、物語が進んでいって変わったものを随時年表ストーリーラインに書き込んでください。村人が戦士になったら「目指すもの」「求めるもの」が変わりますよね。戦士が将軍になったらまた変わるはずです。そしてついに国王となった暁には、さらに「目指すもの」「求めるもの」は変化していきます。

 人物が「目指している」「求めている」ものを明らかにしておくことで、その人物がとりえない行動をさせなくて済むのです。つまり矛盾が発生しなくなります。




性格

 性格は物語が始まる以前の人生によって大きく左右されます。

 と同時に物語が進んで出来事イベントを経ることで変わっていくものです。

 能天気な主人公が、魔物と戦うにつれて仲間を引っ張るリーダーとして芯の通った責任感のある性格に変わることはよくあります。

 つまり性格を設定するには過去の経歴を確定させておくべきであり、性格に影響を与えた出来事エピソードは経歴に書き加えておくべきだということです。

 こうして物語開始時の性格を確定させてから、小説を書くようにしてください。

 書き出しでは性格が表現できる出来事イベントを起こして、読み手に「この人物はこういう性格なんだ」と認識させます。できれば登場人物をひとまとめにした状態で出来事イベントを起こしましょう。そうすればたったひとつの出来事イベントで全員の性格を表現できるようになります。さすがに全員は無理だという場合でも、複数の人をひとつの出来事イベントで表現するようにしてください。ひとりだけを表すのにひとつの出来事イベントが必要になると、性格の表現だけで三百枚は埋まってしまいますよ。




体躯(身長、体重、体つき、容貌)

 身長は成長期の子どもと高齢者以外でそれほど大きくは変わりません。

 身長はコンプレックスを持っている方が多い要素です。陳寿氏『三国志』でお馴染みの魏の王・曹操孟徳は当時の英傑としてはきわめて身長が低かったとされています。そのため背の高い偉丈夫・関羽雲長に憧れて手元に置いておきたくなるのです。このようにコンプレックスから物語が生まれることもあります。

 背が高いことをスポーツで活かす人も多いですね。マンガの井上雄彦氏『SLAM DUNK』の主人公・桜木花道はその長身を活かしてバスケットボールを始めます。背が高くなくてもバスケットボールをしている人もいますね。マンガの藤巻忠俊氏『黒子のバスケ』の主人公である黒子テツヤや、キセキの世代のキャプテンである赤司征十郎などです。

 背が低いことを逆に強みにしている人もいます。マンガの古舘春一氏『ハイキュー!!』の主人公・日向翔陽は165センチメートルに満たない背丈で長身揃いのバレーボールでスパイカーをしています。彼の武器は尋常ではないスピードとスタミナと跳躍力です。

 人物の中でも成長したり鍛錬したり不摂生したりすることによってコロコロと変わるのが体重、体つき、容貌です。

 身長に対する体重は「BMI」という数値で表されます。「体重キログラム÷(身長メートル×身長メートル)」という計算式です。これにより身長と体重のバランスを見られます。しかし脂肪の塊なのか筋肉の塊なのかまではBMIでは見極められません。

 そこで体つきの記載も必要です。ただの脂肪の塊は「デブ」と呼ばれますし、贅肉も体脂肪も低い筋肉の塊は「マッチョ」と呼ばれます。中には大相撲の力士のように脂肪と筋肉の双方が高い人もいますので、そういうところも書き分けられれば、見た目だけで人物を表せるようになるでしょう。

 容貌は「ブサイク」か「イケメン」か、「ブス」か「カワイイ」か「綺麗」かといった要素です。体つきと合わせて考えることが多く、中年太りで冴えない顔つきなら「醜男《ぶおとこ》」と呼ばれてしまいます。逆に体脂肪率が低くて細身の筋肉質な体をしていれば、多少冴えない顔つきでも「細マッチョ」としてウケがよいのです。

 そもそも脂肪の多い体なら顔も膨れていますし、体脂肪の低い体なら顔もほっそりとしています。だから顔の良し悪しの半分は体つきに影響されるのです。





最後に

 今回は「趣味嗜好、目指すもの、性格、体躯」について述べました。

 途中で変わる可能性のあるものは、物語の開始時のものをまず書いておきましょう。

 そして変わったら都度人物の履歴書キャラシート年表ストーリーラインに追加していくのです。そうすれば情報で混乱することは少なくなります。



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