804.構成篇:色彩、生年月日、血液型
今回は前回に引き続き「履歴書」の中でもとくに変わらないものについてです。
「色彩」「生年月日」「血液型」もなかなか変わりませんよね。
ですが髪なら染めて、虹彩もカラーコンタクトレンズを装着して一時的に変えられます。
当然ですが、異世界ファンタジーで現実世界の暦やABO式血液型が通用するとは限りません。
色彩、生年月日、血液型
人物の設定の中で一生を通じてほとんど変わらないものがあります。
今回は後半の「色彩」「生年月日」「血液型」です。
色彩
民族(種族)が決まると色彩の方向性も固まってきます。
ゲルマン民族なら白い肌に金髪に青い瞳、モンゴル民族なら黄色い肌に黒髪に黒い瞳という具合です。
現実世界の人物であれば、差別語になりますが「白人」「黒人」「黄色人種」といった言葉を使うこともあります。
肌や髪や口紅、服装の色はちらっと見ればすぐにわかります。瞳|(虹彩)の色はじっと見つめなければわかりません。下着の色なんてアクシデントでもないかぎりわかりようもないのです。
色彩の組み合わせだけで人物の書き分けができるようになれば、人物描写はかなり楽になります。
あなたの小説に登場する人物は、まったく同じ色彩を持っているでしょうか。おそらく「端役」の大半は同じ色彩をしているはずです。それは「端役」だからかもしれませんが、できれば変えてみましょう。物語には「主要な端役」というものも存在します。
色彩がダメなら形状で書き分けるのです。髪の毛なんて丸坊主、五分刈り、ショート、ボブ、ミディアム、セミディ、セミロング、ロングと長さだけでもこれだけ分けられます。これにクセっ毛やロール、カール、ウェーブなどの「遊び」を合わせればほぼ無限の組み合わせが生み出せます。
ただし物語が進んで心境の変化が起きたとき、髪型を変える人物もいるでしょう。その場合は変わったタイミングがつかめるようにストーリーラインにヘアスタイルを変えた頃合いを書き込んでおきます。連載小説で過去の描写をするときに、髪型を変えた日付を忘れてしまい、本来ならショートヘアのはずがロングヘアになっていた。ということもありえます。そして目聡い読み手はそこに矛盾を見つけるのです。だからこそ髪型はまず変わりませんが、変わったときにはその日付を履歴書に記載しましょう。
形状ならメガネやホクロや傷跡などで分けることも可能です。
生年月日
次に人物の「年齢」を決めなければなりません。
ただし「年齢」は物語が進むにつれ歳をとるため、物語開始当初の年齢だけを決めてください。
高校が舞台の小説で誕生日を迎えている場合、十六歳なら高校一年生、十八歳なら高校三年生になります。
小説として書きやすい主人公は二年生です。中学校が舞台でも中学二年生、高校が舞台でも高校二年生。
なぜならひとつのコミュニティー(中学校・高校)で必ず年上(三年生)と年下(一年生)が存在するからです。
しかし連載されて物語のうえで一年が過ぎたら「年齢」はひとつ上がります。
現実の皆様の「年齢」が上がるタイミングは「誕生日」ですよね。
そこで連載小説なら「誕生日」つまり「生年月日」が必要になります。
ファンタジー世界では「新年を迎えたら年齢がひとつ上がる」という現実世界での「満年齢」のような制度かもしれません。この場合は「誕生日」の扱いは軽くなるはずです。
そもそもファンタジー世界で現実世界と同じ暦を使っている理由もありませんけどね。
「生年月日」を決めれば「占星術」で人物の性格を定めようとする書き手の方もいらっしゃると思います。これは書き手の自己満足の意味合いが強く、実際に「占星術」で性格を定めようとすると、人物の性格は自由さを欠きます。生き生きとした人物にならず、型にハマった融通の利かない人物になってしまうのです。
また「生年月日」が決まれば「十二星座」が定まります。となれば「星座による性格分析」や「星座占い」に手を出そうとする書き手が意外と多いのです。
実は私も学生の頃に書いた小説では、性格をあらかた決めたら「占星術」で性格が裏打ちされた「生年月日」「星座」に設定していました。ですが「労多くして功少なし」で、分析にかけた時間の割に、それを生かせる展開というものはほとんどありませんでした。
そんなことに時間をかけるくらいなら、他の設定をもっと詰めるべきです。決めるべき項目はまだまだたくさんありますからね。
血液型
まず変わらない設定として「血液型」があります。
こちらも「生年月日」同様「血液型による性格分類」や「血液型占い」で性格や相性を決めてしまおうとする書き手の方が多い。
そんなことに血道をあげるのなら、他に設定すべき項目はたくさんあります。
「血液型」は基本的に生涯変わりません。ただし変わる可能性はいくつかあります。
たとえば血液の大量輸血です。A型の人物が事故や手術で大量の輸血が必要となったときにA型の血液のストックがなかった。そのときにO型の血液を大量に輸血すると「血液型」がO型に変わってしまうことがあるそうです。
また骨髄移植をした場合も「血液型」が変わることがあります。
もし「血液型」で性格が決まるのだとすれば、「血液型」が変わってしまった人物は性格も変わるということです。ですが実際に性格が変わったという報告はあまりありません。若干明るくなったとか若干気難しくなったなど、影響は軽微です。
つまり「血液型による性格分類」や「血液型占い」にはあまり意味がありません。
書き手が納得する「血液型」に設定するだけでよいでしょう。
また連載小説で「血液型」が重要な鍵になることはほとんどありません。それこそ輸血に必要だったり、被害者の血液型と血痕の血液型の照合をしたりなどの出来事があれば「血液型」の必要はあるでしょう。しかし「推理小説」以外でそんな場面はまず訪れません。
とくに「剣と魔法のファンタジー」では「血液型」なんてさほどの意味を持ちません。ファンタジー小説で献血する
魔法がある世界なら、怪我や病気も神聖魔法で治してしまうのではないでしょうか。「剣と魔法のファンタジー」なら死者を蘇生させることすらできます。
だからとくに「剣と魔法のファンタジー」では「血液型」はほとんど意味を持ちません。そもそも異世界の血液型が「ABO型」である可能性はかなり少ないはずです。医師が「異世界転移」して「ABO型」を普及させたといった設定があれば多少の説得力もあります。しかし主人公が「異世界転移」「異世界転生」してきたという特殊性が、前例があったことで薄らいでしまいます。
「異世界転生」「異世界転移」する人物が増えれば増えるほど、主人公の特殊性が失われてしまうのです。
最後に
今回は「色彩、生年月日、血液型」について述べました。
前半も含め、これらは基本的に作中で変わることはあまりありません。
例外はいくつか書きましたが、それを踏まえたうえでも一般的に作中で「性別」「民族」「家系」「色彩」「生年月日」「血液型」は変えるべきではないのです。
例外はあくまでも隠し球のような存在です。一作品ではひとりいるだけでも違和感を抱く読み手が多いと思います。
現在では高校野球部も全員丸刈りから自分の好きな髪型でも大丈夫な学校が出てきたところです。高校の野球部に入るからといって、部の全員を丸刈りにする必然性はもはやありません。髪型は重要な「個性」です。現実の履歴書には写真を添付しますよね。そのときド派手な髪型をしていることはまずありません。髪型とはそういうものだからです。
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