803.構成篇:性別、民族、家系

 今回は「履歴書」の中でもとくに変わらないものの前半です。

「性別」「民族」「家系」はなかなか変えられるものではありません。

「性別」は恋愛要素を作り出すうえでも不可欠な情報ですので、必ず設定しましょう。

 異世界ファンタジーの場合は「男性」「女性」以外の性があってもおかしくないので、世界観の設定から築いてください。





性別、民族、家系


 人物の設定の中で一生を通じてほとんど変わらないものがあります。

 その代表的な要素が「性別」「民族」「家系」「色彩」「生年月日」「血液型」です。

 今回は前半の「性別」「民族」「家系」について触れます。




性別

 登場人物でまず決めなければならないのは「性別」です。

 そうしないとイメージが湧きにくいですよね。

 人間には一般的に「男性」か「女性」しかいません。登場人物もそのどちらかに属します。

「一般的に」と書いたのは、現実世界なら「LGBT」に代表される「性的マイノリティー」の方がいらっしゃるからです。また特殊な「XXY型遺伝子」を持つ方がごく稀に生まれます。その発生率はきわめてゼロに近いのですが。異世界なら「両性具有」「中性」「無性」「第三の性」といった形態が存在しえます。

「LGBT」の他にもいわゆる「オカマ」「オネエ」たちは戸籍上や身体上の「性別」と、生活上や職業上の「性別」が異なることは周知の通りです。

 こういった例外を除けば、やはり「男性と女性の恋愛」が小説の恋愛要素となります。

「性別」を決めれば人物の「肉体の器」が生まれるのです。


 恋愛要素は長編小説にも必要ですし、連載小説ならなおのこと。

 恋愛要素もなく物語を延々と連載し続けると、読み手はすぐに飽きます。恋愛要素があれば関係が一進一退を繰り返しているだけで読み手は手に汗握って連載を追ってくれるようになるのです。

 マンガの青山剛昌氏『名探偵コナン』は推理マンガですが、驚くほど多くの恋愛要素が詰まっています。主人公の工藤新一とヒロインの毛利蘭、鈴木園子と京極真、服部平次と遠山和葉、高木渉巡査部長と佐藤美和子警部補、白鳥任三郎警部と小林澄子教諭、千葉和伸巡査部長と三池苗子巡査部長、宮本由美警部補と羽田秀吉棋士、赤井秀一捜査官と宮野明美やジョディ・スターリング捜査官など。結婚していますがベストセラー作家の工藤優作と名女優の藤峰由紀子、迷探偵の毛利小五郎と敏腕弁護士の妃英理といった具合に、恋愛要素には事欠きません。

 これ「推理マンガ」なんですよ。「推理マンガ」ですらこれだけの恋愛要素を用意して読み手を物語に惹きつけているのです。どんなジャンルの小説でも恋愛要素を外しては語れません。

「LGBT」の先駆けとしてのマンガに北条司氏『F.COMPO』という作品があります。男性の格好をした女性の若苗空、女性の格好をした男性の若苗紫の存在は、今の「LGBT」問題を考察するうえである種のバイブルのようなものです。主人公の柳葉雅彦は明確な男性ですが女装させられると実在の美女のように扱われますし、ヒロインの若苗紫苑は女性の見た目をしていますが、両親の影響から連載が終了しても性別が明かされませんでした。

 このような変わり種の作品があるからこそ、「性別」は真っ先に決めておくべきなのです。




民族

 男女の別がつけば「民族」の問題が出てきます。「民族」は変更不可な項目です。モンゴル民族が途中からゲルマン民族や白ロシア人になることはできません。遺伝子が異なりますから、変わりようがないのです。

「剣と魔法のファンタジー」において「民族」は戦争の引き金となることが多い。ただでさえ「差別」が起きやすい世界観ですので、「民族」の設定には気を配ってください。

 現実世界では「民族」という概念はすでに過去のものとなりました。「民族」単位での争いが残っているのは「ウイグル」「チベット」「クルド」「ロヒンギャ」など少数です。(アラブ人とユダヤ人の聖地戦争はいまだに残っていますが)。

 またSF小説や「剣と魔法のファンタジー」においては「種族」がそもそも異なることもあります。こちらも「民族」同様、物語が進んでも変化しません。魔法の力を使って「化ける」ことはできるでしょう。でも根本的に「種族」が変わることはまずありません。それこそ「神の御業」が働いているときくらいでしょうか。




家系

 人物には必ず祖先がいます。血の繋がりによってその人物は今、生を受けているのです。

 少なくとも父親と母親の設定は不可欠です。たとえ遺伝子上の存在に過ぎないとしても、男性と女性がいなければ人は産まれていません。これは「LGBT」であっても例外ではないのです。たとえ「LGBT」であろうとも、産まれてくるには「男性」と「女性」が揃わなければ不可能です。

 今は人工授精によって交合しなくても産めはします。またクローン技術が進んでいますので、倫理上の問題はありますが、たったひとりの細胞から新たな生命を誕生させることもできます。現に中国の病院でクローン・ベイビーが誕生したという報道がなされています。真実であるならば、特殊な家系ということになりますから、やはり「家系」を書いておくべきです。

 確実に必要となるのは兄弟姉妹です。主人公と同世代であるため、家族の中でも父母をも超える登場回数を誇ります。場合によっては従兄弟やおじ・甥、おば・姪が出てくることもあるのです。

 可能であれば祖父・祖母の情報も欲しいのですが、人物や物語に影響を与えないのであれば、設定する必要はありません。『ドラえもん』ののび太は大の「おばあちゃんっ子」です。だから「おばあちゃん」の設定はされていますが、おじいちゃんのことはあまりよくわかっていません。

 このように「家系」を決めておくだけでも、出来事イベントを大量に作ることができます。

 ただし、名前だけ出てきて出来事イベントに絡まないような人物は、名前をつけず「モブ」にしてください。名前がついていると、それだけで「この物語では重要な役回りなのかもしれない」と読み手が勝手に期待してしまうからです。それなのにまったく物語に絡んでこないのであれば、紙幅をムダに費やしたに過ぎません。

 だから、たとえ親族であっても物語に登場しない人物はいくらでもいるのです。『ドラえもん』でも、のび太のパパは登場機会が極端に少ない人物になっています。出てくること自体が稀なため、名前を憶えている方がどれだけいるでしょうか。物語内でも名前で呼ばれることはほとんどありません。ちなみに「野比のび助」という名前です。知らなくても『ドラえもん』の面白さはまったく損なわれませんよね。これが「物語の重要度によって、登場する人物を絞る」一例です。ちなみにのび太のママは「野比玉子」と言います。こちらも知らなかった方が多いのではないでしょうか。





最後に

 今回は人物の設定において、基本的に変わらないものについての前半を述べました。 

「性別、民族、家系」に関しては、そう産まれたら変えようがありません。

 まぁ親が再婚して義父や義母が出来ると、義兄、義弟、義姉、義妹が加わることはあります。

 それでも、根本から変わるものでもなく、あくまでも既存の状況へ追加する形になっているのです。



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