構成篇〜執筆のロジックを知ろう
798.構成篇:考えてから書く、書きながら考える
今回は「考えてから書く」方と「書きながら考える」方についてです。
私自身が「考えてから書く」タイプなので、今までのコラムは徹底的に「考えてから書く」ことを追及してきました。
「書きながら考える」タイプの方を見据えたコラムが書けるように、私もある程度「書きながら考える」スタイルも取り入れたいと存じます。
考えてから書く、書きながら考える
小説の書き手は大きく分けてふたつのタイプに分けられます。
「考えてから書く」方と、「書きながら考える」方です。
考えてから書く秀才型
旅行を考えてください。
事前に観光地を選定し、どこの名所を巡って、どこの旅館・ホテルに泊まって、日程を決めて予算はいくらかかるのかを調べます。
そんな方は「考えてから書く」ことに向いているのです。
「考えてから書く」方は、物語の「構成」を最初から最後まで設計・構築してから書きます。
「考えてから書く」方は「破綻しない物語を書く」ことに向いているのです。
だから出来あがった小説の質はつねに高い水準を保てます。
裏を返せば「飛び抜けてすごい小説」はなかなか書けません。よほど質の高い「構成」を組み上げないと「傑作」は生まれないのです。そのままでは「小説賞・新人賞」を獲ることは難しいでしょう。
そこでどのような「構成」つまり「どのタイミングでどんな
よい物語を作るためには、意識して傑作の「構成」を分析するのです。
そのため「考えてから書く」方は「秀才型」の書き手と分類致します。
「秀才型」の方はこれまでの本コラムで得るものがたくさんあったことでしょう。
本コラムを執筆している私自身が「秀才型」の書き手だからです。
そんな「秀才型」の方には、どのような「構成」にすれば傑作が書けるのかについて言及していきます。毎日連載も三年目に突入し、皆様の中で下地はじゅうぶんに出来ていると判断しました。
書きながら考える天才型
旅行に置き換えれば、時間が空いたからどこかに旅行しようととりあえず家を出ます。
気の向くまま、行ってみたい場所へ赴いて「さて、これからどうしようか」と思案するのです。せっかくここに来たのだから土地の珍味を食べて、温泉へ浸かって、泊まれる旅館やホテルで夜を明かします。
そんな方は「書きながら考える」ことに向いているのです。
「書きながら考える」方は、直感の赴くままに書き始め、「構成」は書きながら設計・構築していきます。
「書きながら考える」方は、これまで書いてきた小説の内容をすべて頭の中で構築できるはずです。その能力がないのに「書きながら考える」と、どんな
つまり書きながら絶えずこれまで書いた物語全般を俯瞰で眺め、どのタイミングでどんな
だから「書きながら考える」方はある種の「天才型」なのです。
無意識のうちに脳のデータバンクから「名作」のパターンを取り出して、どのタイミングでどんなイベントが起こっていたな、とひらめきます。
この「ひらめき」ははたからみれば「天才の為せる業」のように映るのです。
そして「小説賞・新人賞」を獲るには「天才型」のほうが有利だと言われています。なぜなら、知らず識らず「名作」のパターンを踏襲しているからです。
そんな「天才型」の「書きながら考える」方は、一般的な創作論で「まずプロットと構成を決めてから書きましょう」と提案されることをことさら嫌います。そのやり方が「秀才型」であり、「天才型」の方にはまどろっこしく感じられるからです。
私が「秀才型」であるため、「まずプロットと構成を決めてから書きましょう」とこれまで提案してきました。その書き方なら経験が豊富にあるからです。
しかし、これから数回にわたって提案する執筆法は、「天才型」の方にも受け入れやすい提案をしていきます。
提案は「どのタイミングでどんなイベントを起こすか」に特化します。
そのため「天才型」で「書きながら考えて」も、問題なく作品を執筆していけるのです。
羅針盤、今ならカーナビですかね。そんなものだと思ってください。
秀才型・天才型を問わず
小説を執筆するときに、まず「計画を立ててから」行動する「秀才型」、まず「書き始めてから」行く先を決める「天才型」のふたつのタイプがあることがわかりました。
これは「いつ構成を決めるのか」の順序の問題でしかないのです。
「最高のアイデアを思いついた」と躍起になって、すぐに「構成」を考える「秀才型」、「最高のアイデア」を体験する人物を真っ先に登場させて、人物がそこへ向かって道を歩んでいく「天才型」。
どちらにしても最終的には同じことです。必ずどこかで「構成」を考えるときがやってきます。
「天才型」でも書き出しを書いて主人公を登場させてから、「では最高のアイデアを生かすためにはどんな構成がよいだろうか」と考える段階が必ず来るのです。
だから「秀才型」「天才型」のどちらがすぐれているとは一概に言えません。
「秀才型」は安定して高い水準の作品を量産できます。「天才型」は当たり外れが大きいものの大当たりすれば「小説賞・新人賞」受賞レベルの傑作も書けるのです。
「秀才型」の方が「構成」のテクニックを身につければ、「天才型」を超える作品が書けます。「天才型」の方が「事前にある程度構成しておく」テクニックを身につければ、「秀才型」のように安定して質の高い作品が書けるようになるのです。どちらも今まで以上の作品が書けるようになります。
つまり目指すは「秀才型」と「天才型」のハイブリッドです。
テンプレートではない
これからお伝えするのは、小説の「テンプレート」ではありません。
どんな物語でも当てはまる、ごく普通の「物語の形」です。
この「どんな物語でも当てはまる」がミソで、小説を書き慣れていない方が必ずつまずくポイントでもあります。
書き慣れていないと、どんな構成にすると読み手はハラハラ・ドキドキするのか、ワクワクしてくるのかといったことさえ手探りで執筆しなければなりません。誠に非効率このうえない。
そんな皆様を、いきなりレベルアップさせることが今シリーズの目標となります。
物語のアイデアを最低でもひとつ持ってください。壮大なアイデアでなくてもかまいません。アイデアの芽でもひらめきのひとひらでもよいのです。登場させたい人物がひとりでも。
アイデアはあるけど書いてみる価値があるかわからなくて不安な方もいるでしょう。三百枚・十万字に到達できるのか。それとも短編小説にしかならないのか。連載小説を書けるだけの強固なアイデアなのか。
すでに何本も長編小説を書いたことがある方、途中まで書いて挫折している方、うまくいかなくて直したいところが山積している方、書き始めても途中で迷子になってひらめきがないと前進できない方。さまざまな境遇だと思います。
それでも傑作の長編小説が書けなければ「小説賞・新人賞」を授かることはできません。
最後に
今回は「考えてから書く、書きながら考える」ことについて述べました。
小説を書く手法としてはこのふたつが挙げられます。
本コラムでは「秀才型」「天才型」に分けましたが、言葉尻にとらわれないでください。
「天才型」のほうがカッコいいから、「書きながら考える」スタイルに挑戦するんだ。というような着想は要りません。
「秀才型」の方は構成を先に決める「秀才型」のよいところを生かして、そこに「天才型」の方が持っているその場の「ひらめき」をミックスして執筆するようにしましょう。
片方にとらわれることがいちばん危険です。
「天才型」の方も、将来「小説賞・新人賞」を授かったら連載小説を書くことになります。そのとき、事前に構成が組めないようでは担当編集さんと打ち合わせもできないのです。そうしてみすみす書籍化を遠ざけてしまうことだけは避けましょう。そのためには「秀才型」の「事前に構成を決めてから書く」はおおいに参考になります。
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