732.事典篇:不死:レイス、ワイト

 今回は「レイス」「ワイト」についてまとめました。

 双方とも実体を持たないアンデッドであり、ともに『指輪物語』にも出てくる存在です。

 レイスはスコットランド等の伝承が元なので著作権には当たりません。

 しかしワイトは初出が『指輪物語』なので名称に著作権が発生します。あなたの「剣と魔法のファンタジー」にワイトを出したいときは名称を変更してください。





事典【不死:レイス、ワイト】


レイス

 ヨーロッパのスコットランド等に伝承として伝わっているアンデッドの一種。

『指輪物語』に登場する指輪の幽鬼「ナズグル」が多くの場合元になっています。元々は高潔で有能な王でしたが、指輪に囚われて生きたまま不死の怪物と化した存在です。影のような姿だったり、武装した人型だったりと作品によって姿は一定しません。

 魔術師が、幽体離脱に失敗した結果、肉体と魂が分離したままになった末に、変貌してしまった姿であるとされており、その点からアンデッドというより生霊に近い存在です。

 同じく魔術師がアンデッド化した存在ではリッチが挙げられますが、レイスがすでに人間としての肉体を失っているのに対し、リッチは肉体がゾンビ等に近い状態で残っている死霊という違いがあります。

 また死を間近にした人間が周囲の人間の元に幽霊の姿として現れるものや同じ魔術師によって無理やり肉体から魂を引き剥がされてしまったものも、このレイスに該当するとされているのです。

 レイスは魂の持ち主と同じ姿で現れ、見た者に呪いの魔術をかけて不幸をもたらすとされています。しかし異説では無闇に人に危害を加えるような真似はしないどころか、時には困っている人を助ける事さえもあると言われているのです。個体それぞれによって、人間への行ないが異なるようです。また、人間であった頃の記憶を持ったままであるレイスの場合は、魔法の研究を続けている者もいます。

 弱点は吸血鬼と同じく「太陽の光」であり、このためにレイスは基本的に夜にしか表立って活動しないとされます。



 TRPG『Dungeons & Dragons』第五版では、レイス(幽鬼)はすべての生命の灯を吹き消さんという悪意が、実体のない姿へと具現化した存在です。このクリーチャーは負のエネルギーで満たされており、単に通り過ぎるだけで、近くの植物は黒ずんで萎び、動物は逃げ出します。小さな炎ですら、レイスという恐ろしい存在がもたらす虚無により消えてしまうのです。

 堕落した生涯を送ったり、フィーンドと契約をしたりするのは、死後の魂を下方次元界での永劫の責め苦に委ねることです。ですがときにそうした魂は、負のエネルギーに満たされたあまり自滅し、存在をやめて、おぞましき死後の生から逃れることがあります。これにより霊魂なきレイス、自分が死んだ次元界に囚われた邪悪なる虚無となるのです。レイスの生前の様子を伝えるものはなにもなくなります。新たな姿は、ただ他の生命を滅却するためだけにある姿なのです。

 レイスは実体あるクリーチャーや物体を、生き物が霧の中を通り抜けるが如く、たやすく通り抜けます。

 生前の記憶を、曖昧なこだまのように、わずかながら残していることがあるのです。しかし、一番強烈な思い出や感情も、微かな印象にと変わってしまい、やがて目覚めた後の夢の如く消え去ってしまいます。もしかしたら、生前心を惹かれたなにかを前にレイスが動きを止めることがあるかもしれません。過去の友情の記憶にその怒りをしばしとどめるかも知れないのです。ですが、そんな瞬間が訪れるのは稀です。というのもレイスの多くにとって、自分が何者であったかを思い出すことは、自分がどのような姿に成り果てたのかを思い知らされることであり、それは忌まわしいことだからです。

 レイスは、最近惨い死を遂げた人型生物の霊魂から、アンデッドのしもべを作り出すことができます。そうした苦悩のかけらは、すべての命を憎むスペクターになるのです。

 死者の軍団を支配したレイスが、生ける者たちに破滅をもたらそうとすることもあるのです。闘いのため墓地から湧き出す彼らを前にすると、生も希望も怯えて萎えます。たとえ、レイスの軍団をどうにか退けたとしても、彼らが居座った土地は荒廃し衰えるため、その土地に生きる者たちはたいていの場合餓えて死にます。

 レイスは空気、飲食物、睡眠が不要です。



 TRPG『PATHFINDER RPG BESTIATY』では、レイス(幽鬼)は邪悪と闇から生み出されたアンデッド・クリーチャーです。レイスはかつての生とのつながりをほとんど失っているため、光と命あるものを嫌悪しています。

 長きに渡って存在し続け、生命力を存分に貪ったレイスは不浄なる変貌を遂げ、ドレッド・レイスと呼ばれるクリーチャーになります。



 TRPG『ADVANCED FIGHTING FANTASY』第2版『モンスター事典――奈落の底から――』では、真に邪悪な者が死んだとき、その体は朽ちて地下墓地の塵になりますが、邪悪な意思はそこに残って取り憑き、白い亡霊となって自らの姿を現し、生者を食らうのです。こうしたデス・レイス(死霊)と出会うのは遺骸が残っている棺桶のそばのみで、遺骸との間に強いつながりが残り続けるからです。それは屍衣しいに身を包み、人型の輪郭を保ってぼんやりと現れます。顔には死をにじませる赤い目があり、一対の骨ばった手が古い布から突き出ているのです。

 デス・レイスは単に蒸気のような魂が、わずかに地上に残った遺骸と混ざりあったものだけに、ローブの下にはなにもない。ゆえに通常の武器による攻撃はすり抜けてしまうだけです。ただし、銀で作られた武器は普通にダメージを与えることができます。この金属は地上界と精霊界に同時に存在するためです。返礼として、幽体であるこのアンデッドの怪物も、実体のある儀礼用短剣や剣で攻撃してきます。それは数百年前に死んだ際に、遺骸とともに埋められた多数の財宝の一部であることもしばしばです。



 TRPG『ソード・ワールドRPG』完全版では、レイスは、古代語魔法の「レイス・フォーム」の呪文によって肉体から遊離した幽体が、呪文の持続時間内に戻れなかったためにアンデッドとなってしまった存在です。外見はスペクターと同じように、ぼうっと透き通った生前の姿をしています。

 肉体を持たないレイスに対しては、武器やダメージ魔法などによる攻撃をかけてもいっさい効果がなく、精神的な効果をあげる魔法だけが有効な対抗手段となります。レイスは、生前の肉体的な能力をまったく失っていますが、知識関係の能力やルーンマスター技能は有効で、魔法を使うことができます。ただし、神聖魔法は使えません(暗黒魔法は可です)。スペクターと違い、レイスには「憑依」能力はありません。「メンタル・アタック」などで精神点が0になった場合、レイスは消滅します。太陽の光を直接浴びた場合にも、やはり消滅します。



 TRPG『クリスタニアRPG』では、魔法で幽体離脱した魂が、なんらかの理由で肉体に戻れなくなり、生霊となったもの。生前と同じ姿で現れるが、身体は透けています。実体がないので通常武器は効果がありません。



 TRPG『ゴブリンスレイヤーTRPG』では、幽鬼レイスは、主に魔術師が不完全な不死の儀式による失敗、あるいは未練や憎悪を残して怨念と化したものです。





ワイト

 J.R.R.トールキン氏『指輪物語』に登場する、いわゆる|不死の怪物(アンデッドクリーチャー)の一種です。中つ国においては、死体や死者の骨に憑依して操る悪霊です。

『指輪物語』ではバロウ・ワイトとも表記します。塚山丘陵にてアングマールの魔王の手によって召喚され、そこに葬られていたおそらくカルドランの死者に憑依し、目覚めたものと思われます。塚人の「塚」がバロウで、「人」が「ワイト」の意とされるのです。彼らはその冷たい低い声と霧でもってフロド・バギンズらホビット四人組を惑わせ、塚山丘陵に誘い込むことに成功します。そしてその青白い眼光と氷のように冷たい手で獲物を麻痺させ、墓室に横たえさせると、呪いの詩を唄いながら彼らにとどめを刺そうとしたのです。が、間一髪のところで勇気を取り戻したフロドによってその手を切り落とされます。ワイトたちは怒りに唸ったが、フロドが助けを求めた強力な精霊トム・ボンバディルがやってきたことによって塚から追い払われました。

 その後塚に埋葬されていた品からホビットたちは「塚山出土の剣」を受け取り、トムはブローチを手に入れたのです。この剣(とくにメリアドク・ブランディバックが受け取ったもの)は後に大きな役目を果たすこととなります。

 その後『指輪物語』で使用されたことでバロウ・ワイトが有名になり、『D&D』などを始めとしたファンタジー作品やゲームなどで、ワイトというアンデッド・モンスターが広く認知されるようになりました。

 王族など人物の死体に悪霊が取り憑いたもので、触れた者を昏倒させるなどの力を備えているのです。『D&D』などのRPGにおいては「不浄な黄色い光」に包まれているとされます(『SW』でアンデッドが黄色いオーラを放つと誤解されることが多いのはこれに由来します)。またエナジードレインというレベルを吸収する能力を持つことが多く、ワイトに殺された者はワイトになって蘇るとされているのです。



 TRPG『Dungeons & Dragons』第五版では、「ワイト」という言葉は、太古の昔には「人」という意味で使われていました。ですが今では、昏き望みと虚栄に駆り立てられていた定命の存在が邪悪なアンデッドと化したものを意味するのです。死神がその者の心臓の鼓動を止め、命の炎を吹き消そうとするその瞬間、死を逃れようとする魂がデーモン・ロードに(あるいは死後の世界を司る邪悪な神々の一柱に)泣きつきました。そしてアンデッドとして「生き続ける」ことと引き換えに、生者との永遠との戦いに身を置くことになったのです。闇の諸力が魂の願いを聞き入れ、その者の邪悪な計画を続行するためにアンデッド化させてやる場合もあります。

 ワイトは生前の記憶と欲求をそのまま保持しているのです。自分をワイトに変えた暗黒の存在からの命令に喜んで従い、この新たな主人の機嫌を取るために誓いを立てつつ、自由意志は維持しようとします。ワイトは疲れを知らず、飽くことを知らず、脇目もふらずに、己の目的を目指して突き進むのです。

 ワイトは死んでおらず生きてもいないため、この世とあの世の中間の狭間に位置しています。生前の身に宿していた輝かしい光は失われ、あらゆる生命の輝きを喰らおうとする渇望に取って代わられたのです。ワイトが攻撃する際、相手の生命の精髄はワイトの暗い両目に白熱の熾火おきびのごとく輝いて映り、ワイトの冷たい手は肉や衣服や鎧を通じて生命の輝きを吸い取ります。

 ワイトは憎むべき太陽の光を避けるため、日中はこの世界に姿を現さず、己のねぐらである塚山や納骨堂や墳墓に引きこもっています。ワイトの住処は荒れ果てて静かな場所です。周囲に並ぶ枯れ木は明らかに黒ずんでいて、鳥や獣は決して近寄りません。

 ワイトに殺された人型生物が、ワイトの支配下にあるゾンビとして蘇ることがあります。生者の魂に飢え、力に飢えるあまり——そもそもワイトがアンデッドになったのも、力に飢えたからなのですが——襲撃部隊として邪悪な指導者(たとえばレイス)に仕えるワイトたちもいるのです。兵士としてのワイトは計画を立てる能力はありますが実際に計画を立てることは稀で、破壊衝動に身を任せ眼前に立ちふさがるあらゆる相手を蹂躙しようとします。

 ワイトは空気、飲食物、睡眠が不要です。

 ワイトの攻撃により最大ヒット・ポイントが0になったらただちに死亡し、24時間後にこのワイトの制御下にあるゾンビとして蘇るのです(ゾンビ化する前に蘇生させるか死体が破壊されない限り)。このワイトが同時に制御下におけるゾンビの数の上限は12体です。



 TRPG『PATHFINDER RPG BESTIATY』では、ワイトは死霊術、暴力による死、もしくはとてつもなく悪意に満ちた人格のために、アンデッドとして復活した人型生物です。邪悪なアンデッドの霊が屍――たいていは殺された戦士――と結びつくことでワイトが生じます。生きていた頃の知り合いがワイトを見てその素性に気づくことは滅多にありません。ワイトの肉は悪と不死によってねじくれており、その目は憎悪に燃え、その歯は獣のように変じています。ある意味、ワイトはグールとスペクターの間を埋める存在である――接触によって生命力をかすめ取る、歪められ、操られた屍です。

 アンデッドであるワイトは呼吸を必要としないため、水中で目にすることもありますが、元となるのがアクアティック・エルフやマーフォークなどの水泳速度を持つクリーチャーでなければ水泳が巧みではありません。水中で暮らすワイトは、その低い水泳能力が大きなハンデとならない天井の低い洞窟を好みます。

 ここに挙げたワイトは典型例ですが、ときとしてワイトが珍しい人型生物から同族を作り出すこともあります。その結果生まれるワイトは以下の3つの亜種のように、まったく異なる能力を持つのです。

【ブルート・ワイト】

 ワイトに殺された巨人は、思考の単純なせむしのアンデッドとなります。ブルート・ワイトはジャイアント・アドヴァンス・ワイトだが、独力で同族を作れません。

【ケルン・ワイト】

 一部の社会では、塚山などの埋葬墓地の番人役として、それ専用のワイトを作り出します。ケルン・ワイトは生命力吸収攻撃を伝達させる武器(通常は剣)で戦うアドヴァンス・ワイトです。その武器によってダメージを受けたクリーチャーは、ワイトの叩きつけ攻撃を受けたとき同様に生命力吸収の効果を受けます。

【フロスト・ワイト】

 寒冷な環境で作り出されたワイトは、時折青白い両目と凍りついた髪を持つ青褪めたアンデッドとなります。フロスト・ワイトは〈冷気〉の副種別を持ち、その叩きつけ攻撃は通常の効果に加えて[氷雪]ダメージを与えるのです。



 TRPG『ADVANCED FIGHTING FANTASY』第2版『モンスター事典――奈落の底から――』では、民から愛された偉大な領主が死んだとき、主君を敬愛してやまない従者がその死を受け入れられず、霊廟を警護して秩序を守り、奉仕を続けることがあります。やがて彼らも息を引き取りますが、妄執じみた献身のために、死してなお主君に仕え続けるのです。そうして蘇ったものがワイトとなります。獣じみたその人ならざる者はぼさぼさの髪、狂気を湛えた目、鉤爪の生えた手足をし、なおも腐ったお仕着せをまとっています。ワイトは死者を守るアンデッドの番人で、純粋な銀の武器でしか傷つけることができないため、手強いモンスターです。通常の武器でも攻撃できると思えるが、この嫌らしいモンスターには痛くも痒くもないとすぐにわかるでしょう。

 なお悪いことに、ワイトに触れられたものは冷気によってひどいダメージを受けます。攻撃を3度命中させるたびに、相手から技術点を1点奪うのです。ワイトは相手を倒したなら、その死体に儀礼用の服を着せ、死んだ主君の蘇生を祈りつつ、死体から奪った生命力を捧げるでしょう。



 TRPG『ソード・ワールドRPG』完全版では、ワイトは人に取り憑き、他人のエネルギーをすするアンデッドです。この怪物に対しては、通常の武器は効果がありません。ワイトを傷つけるには、銀か魔法の武器が必要です。ワイトの武器となるのは鋭くとがった爪で、ダメージを受けたものは、同時に生命エネルギーを吸い取られることになります。ワイトの攻撃が命中したら、生命力と同時に精神力にもダメージが及ぼされます。この攻撃で精神力が0になったものはただちに死亡し、そして24時間後に新しいワイトとして「蘇生」します。



 TRPG『ロードス島戦記RPG』では、ワイトは人の生命エネルギーを吸収しながら取り憑くアンデッドで、完全に取り憑かれた者も死んでワイトと化してしまいます。生前の記憶をそのまま残していますが、他者の生命エネルギーを吸収することに思考が支配されてしまっています。



 TRPG『クリスタニアRPG』では、淡い黄色い光に包まれた、動く死体。ミストが死体に憑依すると、このモンスターになります。姿はグールに似ていますが、こちらは生きた肉しか食べません。攻撃が命中するとドレインされる。





最後に

 レイスとワイトは『指輪物語』に登場します。肉体を持たないアンデッドの中では有力な存在ですので、アンデッドとしてあなたの「剣と魔法のファンタジー」に登場させる場合は形態を少し変えたほうがよいでしょう。



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