730.事典篇:不死:ゾンビ
今回は「ゾンビ」についてです。
マイケル・ジャクソン氏『スリラー』のMVで有名になりましたね。
TRPGでの「ゾンビ」は知能がほとんどなく、たとえ敵が激流の対岸にいようとまっすぐに向かっていき、そのまま流されてしまうのです。
事典【不死:ゾンビ】
ゾンビ
ゾンビとは何らかの力で死体のまま蘇った人間の総称です。
ホラーやファンタジー作品などに登場し、「腐った肉体が歩き回る」という描写が多くなされます。
ブードゥー教の司祭の一つであるボコにより行なわれます。ボコの生業は依頼を受けて人を貶めることです。ボコは死体が腐り始める前に墓から掘り出し、幾度も死者の名前を呼び続けます。やがて死体が墓から起き上がったところを、両手を縛り、使用人として農園に売り出すのです。死体の魂は壺の中に封じ込まれ、以後ゾンビは永劫に奴隷として働き続けます。死体の家族は死人をゾンビにさせまいと、埋葬後36時間見張る、死体に毒薬を施す、死体を切り裂くなどの方策を採ります。死体に刃物を握らせ、死体が起きだしたらボコを一刺しできるようにする場合もあるというのです。
実際にゾンビを作るにあたってゾンビ・パウダーというものが使用されます。ゾンビ・パウダーの起源はナイジェリアの少数民族にあるとされるのです。西アフリカ社会では伝統的な刑法としてこの毒が用いられており、これが奴隷たちにより西インド諸島に持ち込まれました。一般に「ゾンビ・パウダーにはテトロドトキシンが含まれている」と言われているのです。この毒物を対象者の傷口から浸透させることにより仮死状態を作り出し、パウダー全量に対する毒素の濃度がちょうどよければ薬と施術により蘇生し、濃度が高ければ死に至り、仮死状態にある脳(前頭葉)は酸欠によりダメージを負うため、自発的意思のない人間=ゾンビを作り出すことができるのです。
1968年アメリカ映画ジョージ・A・ロメロ氏『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』でブードゥー教のゾンビに吸血鬼の特徴を混ぜ込み、「生ける死体」を作り上げました。ロメロのゾンビには吸血鬼的要素の「ゾンビに殺された人間もゾンビ化する」という設定が追加されたため、「人類よりも増える一方のゾンビのほうが多いという終末的な状況下で、なんとか生き延びようともがく人々、そして人間同士の浅ましい争い」を描く作品となることが多い。
肉体が朽ち果て、腐敗の進行した死体がなんらかの要因によって活動を再開したもの(本来の意味でのゾンビとは異なる)。主に墓地など、実体を保有する生物の死体が多くある場所で登場します。何らかの毒や病原体を持つモンスターとしてデザインされることが多い。人間以外の生物もゾンビ化することがあり、ドラゴンがゾンビ化した「ドラゴンゾンビ」や巨人がゾンビ化した「ジャイアントゾンビ」などは強力なモンスターとして扱われます。「コープス」(本来は死体を意味する)や「リビングデッド」などと呼称する場合もあるのです。
TRPG『Dungeons & Dragons』第五版では、いずことも知れぬ闇の中から、喉を鳴らすような唸り声が聞こえてきます。よろめき歩くそのものは片足を引きずっており、振り上げる膨れた腕には折れた指がぶら下がっているのです。ゾンビから逃げられないのろまを皆殺しにするためにひたすら進んできます。
邪悪な死霊魔法が死骸を染め上げ、ゾンビとして甦らせるのです。ゾンビには恐怖もためらいもなく、ただ作成者の意に従います。傾いた姿勢でぎくしゃく動き、朽ちかけた死装束の残骸をまとい、腐敗臭を漂わせているのです。
ほとんどのゾンビは人型生物の死体から作られますが、生きていたクリーチャーの肉と骨さえあればどんな物にもまがいものの命を宿らせることが可能です。ゾンビを動かしているのは死霊術の魔力——その多くは呪文に由来する——です。また闇の魔力が染みついた土地ではゾンビが自然発生する場合もあります。ゾンビになったクリーチャーは、「リザレクション」呪文などの強力な魔法を用いないかぎり蘇生できません。
ゾンビに生前の名残は皆無で、その心は思考と想像力を欠いています。命令を受けていないゾンビは何もせずに立ち尽くし、殺せる相手がやってこないかぎりその場で腐っていくのです。ゾンビを動かしている魔力がゾンビを悪に染めているため、特に指示がない限り、ゾンビは出くわした生きているクリーチャーをすべて殺そうとします。
ゾンビの姿は生前に似ており、元の死体の死因となった傷がよく見えるのです。この不浄なるクリーチャーを生み出す魔力が死体に染みわたるまでには時間がかかることが多い。戦場から起き上がった死せる兵士は、臓物を食い荒らされ腐乱して腫れ上がっているのです。泥だらけの物乞いの死体は、爪で泥をかき分け、ウジ虫とミミズにまみれた姿で土中から現れます。岸辺に打ち上げられたり沼地に浮かんできた土左衛門は何週間も水に浸っていたせいで膨れ上がり、鼻の曲がるような臭いを放つのです。
ゾンビは障害物や戦術や危険な地形というものを理解できず、敵めがけてまっすぐに突き進みます。ゾンビが対岸の敵をつかもうとして激流に呑まれ、水面にむなしく爪を突き出しながら岩に叩きつけられて破壊されていくこともありえます。下に見える敵に掴みかかるために、開いた窓から飛び降りることもあるのです。燃え盛る地獄の業火にも、酸の池にも、まきびしが大量散布された地面にも、ゾンビはためらいなく踏み込みます。
ゾンビは単純な命令に従うことができ、敵と味方の区別ぐらいはつけられるのです。ですがゾンビの理解力でできることは、指定された方角にのろのろ進み、立ちふさがる敵を殴りつけるのが関の山。武器を持つゾンビはそれを使いますが、落ちた武器を拾ったり武器以外の道具を活用したりはしません(そうしろと命令されない限りは)。
ゾンビは空気、飲食物、睡眠が不要です。
TRPG『PATHFINDER RPG BESTIATY』では、ゾンビは「アニメイト・デッド」のような死霊術によって邪悪な偽りの命を吹き込まれた、自律行動能力を持つクリーチャーの死体です。よく見られるゾンビは動きが鈍く頑強ですが、病気を広めたり速度を増大されるなどさまざまな特性を持つものもいます。
ゾンビは思考能力を持たない自動人形であり、命令に従う以外のことはほとんどできない。放置された場合、ゾンビは生者を探し、殺して貪り食おうとうろつきまわることが多い。ゾンビは破壊されるまで攻撃し、自らの安全にはまったく頓着しない。
命令に従うことはできるが、ゾンビは生きたクリーチャーを殺すように命令されるよりは、なんの命令もされずにある地域に放たれることの方が多い。そのため、しばしば獲物を求めて生者が多い地域をうろつきまわっているゾンビの群れと遭遇します。ほとんどのゾンビは「アニメイト・デッド」を使って作られます。そのようなゾンビは常に通常の種類です。作成者がファスト・ゾンビを作ろうとするには「ヘイスト」か「リムーヴ・パラリシス」を、またプレイグ・ゾンビを作るには「コンテイジョン」をあわせて発動します。
【ファスト・ゾンビ】
普通によろめき歩くゾンビとは違い、ファスト・ゾンビは超自然的な素早さで移動します。
【プレイグ・ゾンビ】
このゾンビは自身のアンデッドの系譜を永続させることができる、恐るべき病気を媒介します。プレイグ・ゾンビに感染させられた者は、死ねばプレイグ・ゾンビとして蘇るのです。
TRPG『ADVANCED FIGHTING FANTASY』第2版『モンスター事典――奈落の底から――』では、おぞましいゾンビは、病的な青白い顔で空っぽの眼窩からうつろな視線で見つめ、カビ臭い霊廟やダンジョンをさまよい、死人使いの主のために働いてくれます。多くのアンデッドとは異なり、ゾンビは強い生命力によって死後も動き続けているわけではありません。長く複雑な儀式の末、主の魔術師によって動かされているのです。その結果、肉体が蘇っても、魂の一部を失ったかのように鈍重で愚かになってしまいます。ゾンビは自ら思考する力がないため、主が命令を与えなければならない。そうしなければ、ただ部屋の隅に突っ立ったまま朽ち果てていくでしょう。
ゾンビは見るからに不健康で、青白い皮膚は傷だらけであちこち剥がれており、衣服もボロボロです。ですが戦闘になると力は強く、鉤爪の生えた手で相手を切りつけたり絡みついてきたりします。とはいえ、他者の命令に逐一従って行動するので、動きは鈍く、ぎこちない。主が殺されれば、あてもなくさまようか、最後に与えられた命令を続けるかでしょう。
司祭に祝福された聖水を適切に使えばどのようなゾンビであれ、重傷を負わせられます。聖水は邪悪なものを酸のように侵すのです。ゾンビは宝物庫や城の要所を護っているところをよく見かけます。邪悪な主の召使いとして機敏に傍らで仕えるには、鈍重すぎるからです。
【リビング・コープス(生け
暴力に満ちた使徒であるカーカバードとアランシアで戦場跡を通りかかれば、新鮮な死体が朽ちたところに散らばるのに出くわすのも珍しくはありません。しかし、その死体のいくつかが自力で起き上がってきたら、賢い者ならその場所では普通の戦いが起きたのではないと気づくでしょう。リビング・コープスが新たな獲物を襲う準備を整えているのです。
リビング・コープスは動き方を除けば、見た目はまさにぞっとするゾンビであり、半分腐った死体の血肉はところどころ剥げ落ち、内臓やむき出しの骨があらわになっています。腐った状態によって明らかに脆そうに見えますが、死体としては驚くべき速さで動くのです。ぎょっとした相手にたちまち飛びかかり、肉の剥がれた骨の見える指で絞め殺そうとしてきます。
相手の攻撃がうまく成功したなら、リビング・コープスは6つの部位に分かれて、それぞれが標的に襲いかかり、噛みつき、引っかき、ぶつかり、蹴りつけ、殴りかかるを休みなく繰り返すのです。相手は6つの部位のうち1つに攻撃できます。
1体のリビング・コープスが2体以上の相手に対する場合は、部位をそれぞれに振り分けます。最終的にすべての部位が敗北したら、それらは意味もなくくるくる回り、そのまま合わさって再び本来の殴り潰された(そして本当に死んでいる)死体に戻るのです。
TRPG『Tunnels & Trolls』完全版『MONSTERS! MONSTERS!』では、ゾンビは魔法で動かされている死体で、破壊は困難です。ゾンビは黄泉の世界のしもべとして働きます。自分でものを考えたり、武器を使ったりはできません。口に塩を詰めなければ殺すことはできませんが、バラバラに砕いてしまえばなにもできなくなります。バラバラになっても大きな塊は最後に与えられた命令を実行しようとします。ゾンビはゲーム途中で自分の主人を変更することはできません。
ゾンビは腐乱した死体が与えた命令にとって動いている存在です。口に塩を詰めなければ、完全に動きを止めることはできないので、たんにMR/耐久度をゼロにするだけでは、ゾンビを「殺した」ことにはなりません。しかし、MR/耐久度がゼロになってしまったゾンビはもはやバラバラで、なんの実行能力もありません。ゾンビの腐乱した肉体にはなんらかの病原菌が巣食っている可能性もあります。
【ウォリアー・オブ・ジ・アンデッド(死霊戦士)】
ウォリアー・オブ・ジ・アンデッドは元戦士で、魔法の力によって、動き続ける存在です。体全体がぼうっと光っています。
武器を使って攻撃してきます。防具を使っていることもありますが、このときには、元「戦士」ということで、防御点は二倍にします。
【エンチャンテッド・ウォリアー(妖魔戦士)】
エンチャンテッド・ウォリアーはウォリアー・オブ・ジ・アンデッドとほとんど変わりありません。しかし、唯一の違いとして、各戦闘ターンごとに、自動的にMR/耐久度を2点ずつ再生回復します。ただし、MR/耐久度がいったん0になってしまえば、二度と動くことはありません。
TRPG『ソード・ワールドRPG』完全版では、ゾンビはスケルトンと並んで代表的なアンデッドであり、やはり古代語魔法や暗黒魔法によって死体から作り出されています。ですが、スケルトンとは異なり、武器、防具は使用しません。知性がないため精神的な攻撃はまったく効果がありません。
【ブアウ・ゾンビ】
遺失呪文「クリエイト・ブアウ・ゾンビ」によって作り出されるアンデッドです。通常のゾンビとは異なり、低いながらも知能を有し、独自に判断して、作成者の命令に従います。ですから、抽象的な命令(たとえば、ある家に忍び込み、物を盗んでくるなど)にも可能なかぎり従います。武器や鎧など、道具を使いこなすこともできます。
ゾンビと異なり、腐敗は遅く、数十年から数百年は稼働できます。筋力、生命力はそのままの数値で保存されますが、器用度、敏捷度、知力は生前の半分になり、精神力は失われます。あらゆる魔法及びバード技能の呪歌の能力は、ブアウ・ゾンビになってしまったら使えません。攻撃、防御などは生前の(ファイター、シーフなどの)レベルで行ないます。モンスター・レベルは生前の冒険者レベルと同じです。
ブアウ・ゾンビは精神を持たない存在であるため、これらに精神的な効果をあげる呪文は無効です。
TRPG『ロードス島戦記RPG』では、主として人間の死体を使って暗黒魔法で創り出されたアンデッドで、死体の腐敗が進み続け、悪臭を放ちます。
TRPG『クリスタニアRPG』では、死体から魔法によって生み出されたアンデッド。腐敗臭を漂わせながら徘徊し、生きている者に襲いかかります。身体が腐っているので動きは遅いが耐久力は高い。創造主の命令には、従順に従うが、難しい内容は理解できません。
TRPG『ログ・ホライズンTRPG』では、
【
紺色の制服をまとい、伸縮する金属の棍棒を手にした
【
膨れ上がった水死体の姿を思わせる
TRPG『この素晴らしい世界に祝福を!TRPG』では、生前の未練などから動く死体。
TRPG『ゴブリンスレイヤーTRPG』では、
最後に
今回は「ゾンビ」についてまとめました。
ゾンビに殺されたらゾンビになる。まるでヴァンパイアのようですね。
ヴードゥー教由来の魔物なので、ゾンビとヴァンパイアが一緒に登場することは本来ならありえないのですが、現在では多くの「剣と魔法のファンタジー」で一緒に登場しています。
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