729.事典篇:不死:グール

 今回は「グール」です。

 死肉を食べる「食屍鬼」とも呼ばれ、攻撃がヒットすると麻痺してしまいます。

 次回の「ゾンビ」と混同しがちなので、じゅうぶん注意してください。





事典【不死:グール】


グール

 グールはアラブ人の伝承に登場する怪物の一種であり、ゴール、ゴリなどとも呼ばれます。日本では「屍食鬼」あるいは「食屍鬼」と訳されることが多い。

 伝承によると、砂漠に住み、体色と姿を変えられる悪魔であり、とくにハイエナを装います。墓を漁って人間の死体を食べたり、小さな子供を食べたりするのです。また旅行者を砂漠の奥まで誘い込み、彼らを殺して食べたりもします。

 民話ではグールが集団の誰かに化けていてこっそりと人間を食べるという話があります。女のグールは美女に化けて、その性的魅力によって魅了した男を食べると言われるのです。グールには雌雄があり、卵から生まれ、雌は子供に授乳して育てます。人間がグールの乳を吸うと乳兄弟になってグールと仲間になれるのです。アラブの民話では人間と会話ができる知能や社会性を持った存在として描かれており、民話にはグールとの会話も頻繁に登場します。

 その一方で、一部の民話では道義的な教えを説く存在として善良なグールも存在し、アッラーフによって生み出されたジンとされることもあるのです。

 イスラム教社会ではハディースの伝承にも登場する有名な怪物です。イスラム教誕生以前の時代からジンなどと並びアラビア半島社会に伝承されていた存在です。とくに二代目カリフはグールを倒したとされています。グールの変身能力は体色を自在に変える保護色と、姿形を自在に変えてあらゆる人間に化ける能力とされています。

 イスラム社会では実在の存在として恐れられることが多く、グール避けの伝承も数多くあるのです。預言者ムハンマドはグールから逃れるアザーンを繰り返し唱えるとよいと述べたとハディースに記されています。また、鉄を恐れるとも言われているため常に鉄剣を帯びていれば良いともされるのです。

 アラブ社会におけるグールはいわば犯罪者を怪物化したものであり、旅人を襲う盗賊、他人になりすます詐欺師、墓泥棒などの行為をモチーフとしています。このため、現代のイスラム社会のウラマーの見解ではグールは存在しないとする意見も多く、二代目カリフが倒したグールとは盗賊の比喩であったとされる意見があるのです。

 日本ではゲームや小説、漫画などではアンデッドモンスターとして扱われていますが、アラブの伝承では上記のように生物です。RPGなどではゾンビなどと類似の存在として登場することが多い。

 単に死体を食べるゾンビであったり、死体を食べる人間が怪物化したもの(『クトゥルフ神話』『D&D』など。ちなみに『クトゥルフ神話』ではアンデッドではありません)であったりと、位置づけはさまざまです。他のアンデッドたちと異なり、低い知性を持っている場合があります。



 TRPG『Dungeons & Dragons』第五版では、グール(食屍鬼)は人型生物の肉に対するやみがたい飢えに駆られ、群れをなして夜闇を徘徊します。

 ウジ虫のように、グールもまた、腐敗と死の臭いのするところに好んで巣食うのです。腐ってゆく肉、朽ちてゆく内臓を、腹いっぱい食べられる場所を徘徊します。死肉の見つからないときは、生き物を追いつめ襲って死体にするのです。彼らが死骸を貪り食うのは、栄養を取るためではなく、ただ永遠の飢えにとりつかれて喰わずにいられないからです。そしてアンデッドであるグール自身の肉は決して腐ることがありません。このため、グールは墓所や墓穴の中で何も食わないままでも長年存在し続けるのです。

 グールの起源はアビスにあります。世界最初のグールは、デーモン・プリンスを崇めるエルフでした。彼はエルフ族を裏切り、不死のデーモン・プリンスをたたえて人型生物の肉に舌鼓を打ちました。デーモン・プリンスはこれを愛でて彼を世界最初のグールに変えたのです。アビスでデーモン・プリンスに忠実なしもべとして仕え、他のしもべたちをもとに、さらなるグールを生み出していったのです。ですが、やがて強大なデーモンでありノールの王が攻めてきて、アビスにある彼の領域を奪いました。しかもこのときデーモン・プリンスは彼に力を貸さなかったのです。そこで彼は心変わりしてエルフの神々に救いを求めました。神々はこれを哀れに思って彼が滅びを逃れるのに力を貸したのです。以来、エルフはグールの接触を受けても体が麻痺することがありません。

 爪攻撃がヒットしたエルフでもアンデッドでもないクリーチャーは1分間麻痺状態になります。

【ガスト】

 ときとして、デーモン・プリンスがグールの体に普通より強いアビスの力を注ぎ込み、ガスト(「ぞっとしするような恐ろしいもの」の意)を生み出すことがあります。グールの行動は獰猛な野獣とたいして変わりませんが、ガストは一味違ってずる賢いのです。グールの群れを従えて命令も下します。グールの特徴に「ターン・アンデッド」耐性と、至近での毒効果を持つ悪臭を放つ能力が加わっているのです。



 TRPG『PATHFINDER RPG BESTIATY』では、グールは墓地に出没し、死体を喰らうアンデッドです。言い伝えによれば、最初のグールは、尋常ならざる飢えによって死から引き戻された人食いの人間か、あるいは生前親族の腐肉を口にして穢れた病により死亡し、その復活した人間のいずれかであったというが、本当のところは明らかになっていません。

 グールは大好物の食料が豊富に見つけられる文明の外れ(共同墓地の中か近く、もしくは都市の下水道)に潜みます。グールは腐った遺体を好み、殺した者の味をよくするためにしばしの間埋めておくこともありますが、あまりに飢えている場合は殺したての肉でも食らうのです。地表にいるグールのほとんどは原始的な暮らしをしていますが、噂によれば、古代の残酷な神々や奇妙な飢餓のデーモン・ロードを崇める神官に率いられたグールの都市が地底深くにあるとされます。しかし、この種の“文明化された”グールであっても食性のおぞましさは変わっていません。棺桶から死体を取り出して行なう食事と比べても、準備万端整ったグールの晩餐会のテーブルは、おそらくずっとおぞましく映るでしょう。

【ガスト】

 ガストはアドヴァンス・テンプレートの付いたグールです。ガストの麻痺はエルフさえも効果が及びます。ガストは同族同士で群れをなしてさまようか、通常のグールのグループを率いているのです。この種のクリーチャーを取り巻く死と腐敗の悪臭は圧倒的なもので、ガストは“悪臭”の変則的能力を有します。

【ラケドン】

 このグールの同族は〈水棲〉の副種別を有します。暗礁など、船が最期を迎える公算の高い場所に潜んでいるのです。ラケドンは基本移動速度30フィート、水泳移動速度30フィートを持ちます。



 TRPG『ADVANCED FIGHTING FANTASY』第2版『モンスター事典――奈落の底から――』では、かつて彼らは人間だったかもしれませんが、今はそうではない。グールはおぞましいアンデッド(亡者)で、その魂は生と死の間をさまよい、墳墓や地下室に住みます。死体――とくに人間のもの――を食べるためにです。彼ら自身も死んでいるように見えます。腐りゆくウジまみれの皮膚は、朽ちゆく内臓を半分ほど覆っているだけです。笑みを浮かべた口からは舌がだらりと垂れ下がり、新鮮な肉が手に入ると思うだけで、こするような喜びの息を吐きます。

 攻撃には鉤爪のついた手を用い、敵が持つ剣は恐れないらしく、やたらに引っ掻こうとします。グールの手は麻痺させる力があるため、ひじょうに危険です。獲物は動けなくされ、貪り食われる下ごしらえが出来あがります。グールの攻撃が4回成功したら、相手は動いたり話したりするどころか、まったくなにもできなくなります。全身の感覚がなくなり、呼吸はしだいに困難になり、食べられるのを待つばかりになるのです。



 TRPG『Tunnels & Trolls』完全版では、グールになるのは病気にかかった結果です。感染の多くはグールに噛まれたり引っかかれることで発生します。火を通さない腐肉を食べて感染することもあるでしょう。治癒魔法でも治せますが、この病気は肉体だけでなく精神をも冒します。「有利な」副作用を手放すのが嫌で、グールは治癒を拒むのです。長くグールでいれば、それだけ恩恵も大きくなります。

 グールは他の種族より素早い再生能力を備えており、決して老衰で死ぬことはありません。病気が進行するにつれて、肉体はヒヒのようになり、肌の色はくすみ、緑がかって、かさぶただらけになります。顎が長くなり、歯は伸びて、鉤爪はどんどん固く鋭くなります。全員がヴァンパイアを憎んでいます(というより妬んでいます)。なぜならヴァンパイアは一般市民のみならず上流階級にさえ混じって、その特異な病気を感染させられるからです。グールの場合、空腹を満たし、新たな獲物に病気をうつして同族を増やすという願いを叶えるためには、獲物を誘拐するしかありません。

 グールはしばしば地下に埋葬地や墓地を作ります。ぎらぎらまぶしい光は彼らの目を傷め、視力を弱めます。そのため、彼らは燐光を発する苔やキノコを地下の光源として利用しています。光の乏しい環境では、ひじょうに優れた視力を発揮します。

 グールは不快な腐臭を漂わせています。浄化の力を持つ火を嫌うのです。グールは炎ダメージから再生することができません。


 TRPG『Tunnels & Trolls』完全版『MONSTERS! MONSTERS!』では、外見は人型生物といえなくもありません。別の世界の住人で、青白く、よろよろと歩き、腐った死体を食べることで有名です。武器は使いませんが、獲物はバラバラに引き裂いてしまいます。グールは身になにもまといません。ヒヒのような顔、大きな犬歯と、独特の髪の毛が特徴です。

 死体の腐肉を喰らうのが好きな、限られた知性を持つ青いサルのような生き物です。言語を持つくらいの知性はあります。恐るべき鉤爪と牙をそなえていますが、木そのままの棍棒で戦うのを好むのです。しばしば群れをなして移動します。

 グールはヒヒのような顔をした、人型の生き物です。顔は青白く、よろよろと歩きます。

 グールはもともと別の世界の住人ですが、われわれの世界にも姿を見せます。死肉が好物で、墓場を漁って生きているのです。しかし、ときには生きている人間にも襲いかかります。

 武器は使いませんが、獲物の大腿骨を武器として構えていることもあります。

【グール(変成種)】

 グールには人間を自分たちと同じように変えてしまう能力があります。子供のうちにグールにさらわれて育てられたり、グールと付き合うようになった人間は、人間としての特徴を失い、グールに变化していくのです。

 外見・性癖などはふつうのグールとなんら変わりません。



 TRPG『ソード・ワールドRPG』完全版では、グールは、死体を漁り喰らうアンデッドです。ですが「殺して食えば同じ」ということか、生きているものも頻繁に襲います。グールは爪と牙に麻痺性の毒があり、ダメージ受けたキャラクターは次のラウンドの終わりに麻痺します。この麻痺は1日間持続します。



 TRPG『ロードス島戦記RPG』では、強欲な者や邪悪な者が蘇ったアンデッドです。常に飢え、死肉を探して彷徨っており、死肉がなければ生者を襲い始めます。身体の腐敗は一定で止まっていますが、それでも腐臭は止められません。生前の記憶はあやふやでしょう。



 TRPG『クリスタニアRPG』では、動物や人間などの腐肉を貪り食うモンスター。5センチほどにも伸びた長い爪が特徴です。この爪には麻痺性の毒があり、効果は1時間ほど続きます。日の当たらない湿った場所に棲んでいて、夜になると地上に現れ死体を漁るのです。



 TRPG『ログ・ホライズンTRPG』では、屍食鬼グールは灰色の皮膚に黄色い目、異常に発達した牙が口元からのぞく人型のアンデッドモンスター。爪に毒が含まれており、戦闘になった際は注意を払う必要があります。大地人たちの間では、この世に強い未練と恨みが残ったまま死ぬと屍食鬼グールになると言われていますが、真偽を確かめたものはいません。闇に紛れて徘徊し、『大災害』以後は屍肉を求めて家畜などを襲うことがあります。

屍食少女グーラー

 幼い少女の姿をした屍食鬼グールの亜種。同族より外見が人間に近く、それゆえに戦う相手に躊躇を抱かせます。爪や牙には麻痺毒が含まれており、かじりつかれると引き離すのは困難です。『大災害』後は自分の外見を利用する邪悪な習性を身につけたようで、孤児や迷子のフリをして犠牲者を誘い込みます。



 TRPG『ゴブリンスレイヤーTRPG』では、食屍鬼グールは、墓地の死体を掘り返して喰らう怪物です。死体しか口にできないため、ときに人のふりをして旅人を騙し、殺すこともあります。厳密な意味でのアンデッドではなく、意思疎通可能な者もいますが、吸血鬼の被害者が理性なき食屍鬼と化すことがあります。





最後に

 今回は「グール」についてまとめました。

 死肉・腐肉を食べるクリーチャーですが、元々はアラブ人の伝承の存在ですので、ヴァンパイアのしもべとしてグールを出すのは、世界観からすれば誤りです。



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