711.事典篇:亜人族:メドゥーサ

 今回は「メドゥーサ」についてまとめました。

 ギリシャ神話に登場する、見る者を石に変えてしまう人物です。

 アテナの怒りを買って醜い怪物にされてしまいました。

 ギリシャ神話が初出ですので、あなたの「剣と魔法のファンタジー」に登場させても著作権には触れません。





事典【亜人:メドゥーサ】


 石化能力を持つ怪物の中で最も有名なのが、ギリシャ神話に登場するメドゥーサではないでしょうか。バジリスク、コカトリスは次回説明いたしますので、今回はメドゥーサに触れます。




メドゥーサ

 メドゥーサはギリシャ神話に登場する怪物で、ゴルゴン三姉妹の一人です。名前は「女王」を意味します。

 姉はステンノ(「強い女」の意)、エウリュアレ(「広く彷徨う女」あるいは「遠くに飛ぶ女」の意)と呼ばれ、メドゥーサは三女に当たるのです。

 宝石のように輝く瞳を持ち、見たものを石に変える能力を持ちます。かつては見た者を恐怖で石のように硬直させてしまうとされていたが、途中から現在知られている形に解釈されます。頭髪は無数の毒蛇で、イノシシの歯、青銅の手、黄金の翼を持っています(腰に蛇を巻いた姿や、イノシシの胴体と馬の下半身になった姿で描かれることも)。

 元々美少女だったメドゥーサは海神ポセイドンと、アテナの神殿のひとつで交わったためアテナの怒りを買い、醜い怪物にされてしまいます。これに抗議したメドゥーサの姉たちも怪物に変えられてしまうのです。姉のステンノとエウリュアレは不死身でしたが、メドゥーサだけはそうではなかったとされます。

 海神であるポセイドンの愛人であり、ポセイドンとの間に天馬ペガサスと巨人クリュサオルをもうけています。

 メドゥーサは見るものを石にしてしまう力を持つため、これまで誰も退治できませんでした。しかしペルセウスは鏡のように磨き抜かれた盾を見ながら、曲刀(ハルペー:癒えない傷を与え、不死身殺しの武器とされる)で眠っているメドゥーサの首を掻き切ったのです。メドゥーサの首からあふれ出た血は空駆ける天馬ペガサスを生んだといいます(このあたりに神話の混同が見られます)。切り落とされたメドゥーサの首から滴り落ちた血はペルセウスによって二つの瓶に集められ、アテナに献上されました。右側の血管から流れて右の瓶に入った血には死者を復活させる効力が、左側の血管から流れて左の瓶に入った血には人を殺す力があったそうです。アテナは後に、死者を蘇生させるメドゥーサの血をアスクレピオスに授け、彼はこの血を混ぜた薬を使用しました。

 メドゥーサ討伐の帰路、ペルセウスは海から突き出た岩に縛りつけられた美女アンドロメダを見つけます。母カシオペアが娘アンドロメダのほうが海のニュンペより美しいと公言したため海神ポセイドンの怒りに触れ、海の怪物ケートス(海竜のような姿をした怪物)の生贄とされるため岩に磔になっているだとされます。

 美女を襲いに来た海の怪物に剣はまったく通じず、ペルセウスはメドゥーサの首を取り出して怪物を石に変えたのです。ペルセウスは無事に課題を終えたことの感謝の意を含め、加護してくれていたアテナにメドゥーサの首を贈ります。アテナは自分の山羊皮の盾である「アイギス(今ではイージスと読んだほうがわかりやすいかもしれませんね)」にメドゥーサの首をつけ、最強の盾としました。



 TRPG『Dungeons & Dragons』第五版では、蛇の髪を持つメドゥサは危険と魅惑を等しく備え、己の虚栄心のせいで受けた永遠の呪いに苦しんでいます。かつての自分の住居である崩れかけの廃墟でひっそりと孤独に暮らすメドゥサの周りには、もの言わぬ石像と化した昔の求婚者や英雄志願者たちが並んでいるのです。

 永遠に若く美しくありたい、皆の憧れであり続けたいと願う男や女が、邪心に祈ったり、ドラゴンに太古の魔法を請うたり、強大なる大魔道士を探し出したりして、なんとか願いを叶えてもらおうとします。またある者はデーモン・ロードやアーチデヴィルに生贄を捧げ、この願いが叶うなら他のすべてを差し出すと約束してしまうのです——その願いに伴う呪いのことには気づかぬままに。このような契約を交わした者は若く美しい肉体と永遠の命を獲得し、見る者すべてに称賛され求愛されるようになるのです。望むならば思うがままの影響力と権力を行使できます。しかし、定命の者たちの間で神のごとく崇められる歳月が続いた後、虚栄と傲慢の代価を強制的に取り立てられるときが訪れ、永遠にメドゥサへと変えられてしまうのです。髪は無数の毒蛇に変わります。メドゥサを見た者はみな石になり、メドゥサの堕落を象徴する石像へと変わるのです。

 メドゥサは永遠に独りで生きます。怪物化した姿と不安定な精神のせいで、世間から距離を置かざるをえないのです。メドゥサの住処は徐々に修繕が追いつかなくなり、やがてはイバラとツタに覆われた薄暗い廃墟に——障害物と隠れ場所に事欠かない場所に変わってしまいます。そういった場所に入り込んだ向こう見ずな盗掘屋や冒険者は、目の前にメドゥサが現れるまで、ここがメドゥサの住処だと気づかないことも多いのです。

 メドゥサの呪いはメドゥサ自身にも影響を及ぼしえます。鏡などに映った自分の姿を見てしまったが最後、定命の生者と同様にメドゥサ自身も石に変わるのです。それゆえメドゥサは自分の住居にある鏡及び反射面を持つ物体をすべて破壊するか捨て去ります。

(『D&D』ではメドゥサ自身を石化できると解釈されているのです)。

【ゴーゴン】

 魔牛ゴーゴンと出会って生き延びてその出会いの話をできる者はめったにいません。ゴーゴンの体は何枚もの鉄の板で覆われ、端からは緑色の蒸気が立ちのぼります。

 ゴーゴンの体を覆う鉄の板は、鋼のように黒いものもあれば、銀色にきらめくものもあるのです。いずれにせよ、この天然の装甲はゴーゴンの動きも機動性も妨げません。身体の油が鎧に油をさすのです。病気のゴーゴンや不活発なゴーゴンの身体には、まるできのこや疥癬(かいせん)のように錆が付きます。体の錆びたゴーゴンが動くと、鉄の板が擦れあって、ぎしぎしと音を立てるのです。

 ゴーゴンは餌食とすべき相手を見つけると、金属と金属を打ち合う轟音を立てて突進します。ゴーゴンが敵を打つと、その一撃は敵をずたずたにして大地に投げ出すのです。しかるのち、ゴーゴンは敵が死ぬまでひづめで踏みにじります。複数の敵と相対したときは恐るべき蒸気を吐いて敵を圧倒するのです。この蒸気に触れた敵は石と化します。ゴーゴンは腹が減ったなら石化した獲物を打ち砕いてばらばらにし、その石を強い歯でひきつぶして粉から養分を取るのです。ゴーゴンの巣の周りには、大地に踏みしだいた足跡と、引き裂かれた木々が縦横に交差し、そこに敵のバラバラになったまだ食われていない残骸が転々と転がっているのです。

(ゴーゴンは石化の特徴からギリシャ神話のゴルゴン三姉妹から生み出された『D&D』固有のクリーチャーです。人型ではなく牛のような姿をしている点も、創作されたことを物語っています)。



 TRPG『PATHFINDER RPG BESTIATY』では、メドゥサは髪の毛の代わりに蛇を生やした、人間に似たクリーチャーです。メドゥサは30フィート以上離れていれば、自分の蛇の髪をなにかで隠して簡単に美しい女性のふりができます。頭と顔を布で隠していればもっと近い距離でも人間と思わせることができるのです。メドゥサは石化の凝視を使える距離まで敵に接近するため、嘘と顔を隠す変装を使いますが、彼女たちは獲物をもて遊ぶことも好み、敵を罠に誘い込むため遠くから矢を射るかもしれません。一部のものは自らの湿地にある住処のアクセントとして、獲物の石化した体を使って複雑に飾り付けることを楽しみますが、ほとんどの者は新たな敵に自分たちの存在を警戒させないように、あらかじめ以前の戦いの痕跡を用心深く隠します。

 自分自身を隠蔽するのが常であるため、都市に住むメドゥサは通常はローグですが、荒野ではレンジャーや追跡者として過ごすことが多い。しかし、最も悪名高い伝説のメドゥサは、バードやクレリックのレベルを得た者です。魅力的で知的な都市のメドゥサは、盗賊ギルドなどの犯罪者の裏世界に関わっていることが多い。メドゥサは石化の凝視に完全な耐性を持つ盲目のクリーチャーや知性のあるアンデッドと同盟を結ぶこともあります。呪文を使うメドゥサはしばしば巫女や預言者となり、通常は伝説的な力や忌まわしい歴史のある人里離れた土地に住んでいるのです。このようなメドゥサの巫女は自分たちの役割を喜んで勤め、適切な貢物とへつらいで喜ばせれば、彼女らが明かす預言は有益な物となりえます。もちろん、このような力あるクリーチャーの住処は、彼女たちを怒らせた者の石像がたくさん飾られており、知識を求めるものはそのような会合の際には用心することが推奨されます。

 知られている限りすべてのメドゥサは女性です。稀にメドゥサは「エリクサー・オヴ・ラヴ」や同種の魔法の力を利用して男性の人型生物を夫にすることがあります。その際には彼女に心囚われた男を石に変えてしまわないよう細心の注意を払うのです――少なくとも、彼との付き合いに飽きるまでは。

【ゴルゴン】

 ゴルゴンは気性の荒い魔法的なクリーチャーです。一見したところ人造のようにも見えますが、人工的な見かけの装甲板の下には肉と骨で出来た体があります。攻撃的な雄牛のようなゴルゴンは、遭遇したあらゆる見慣れぬクリーチャーに挑み、しばしば判別できなくなるほど相手の死骸を蹂躙し、あるいは石と化した残骸を粉砕するのです。雌も雄と同じくらい危険で、見た目では性別はわかりません。典型的なゴルゴンは体高6フィート(約1,8m)、体調8フィート(約2.4m)、体重は4,000ポンド(約1,8t)。

 ゴルゴンは鉱物、特に自分が石化させた犠牲者で出来た石を消化して栄養としており、ゴルゴンが作り出した石像はどれも存分にかじられているでしょう。ゴルゴンは金属や宝石は消化できないため、ふん(苦い臭いのする灰色の粉状である)には小さな水晶の原石や金属の塊が混じっていることも多い。ゴルゴンの攻撃性が他のすべてのクリーチャーに向いているということは、ゴルゴンのえさ場には捕食動物やその獲物はほとんど、あるいはまったくいないということを意味います。群れは雄のボスに率いられており、単体でいるゴルゴンは普通、雄のボスに群れから追放された若い雄です。

 ゴルゴンの肉は固いが、いったん鎧のような皮を剥いでしまえば牛肉のようで、その味を覚えた者にとっては実に食べごたえのあるものです。ストーム・ジャイアントの部族の多くは、ゴルゴンの肉を食べると自分の外皮が厚くなると信じています。

 粉にしたゴルゴンの角は、「スタチュー」「ストーンスキン」「ブルズ・ストレンクス」「フレッシュ・トゥ・ストーン」及び類似の魔法を使用する魔法のアイテムのための素材の代替品として250GP相当の価値があります。



 TRPG『ADVANCED FIGHTING FANTASY』第2版『モンスター事典――奈落の底から――』では、メデューサは、多く不運な冒険者は、腰が曲がり、頭に分厚いショールをかぶった老婆を危険なものとは考えませんでした。ほとんどの者が手助けしようと思い、その力強い腕を貸そうと近づいて、しわだらけでよぼよぼの体を支えようとします。途端に彼女はショールを脱ぎ捨て、赤い眼で冒険者たちを見つめ、釘づけにする。彼らは帰らぬ人となった……。

 メデューサはぼろぼろの衣服を着た、しわだらけの老婆によく似た異様な人型モンスターです。しかし、通常の髪が生えているところに、無数ののたうつ蛇が生えています。この生き物は通常は隔絶された遺跡や洞窟に住んでおり、他の生物から遠いところで暮らしていますが、ときおり獲物を求めてさまよい出るのです。メデューサがこれと思う獲物に出会ったなら、その赤い瞳を覗き込ませるように相手を欺こうとします。〈運だめし〉に失敗したものは誰であれ、その瞳に捕らえられてしまい、目をそらせなくなるのです。手足は硬直し始め、数秒のうちに堅い石以外の何物でもなくなってしまいます。狙われた犠牲者が素早く目を覆う事ができたとしても、メデューサは接近して蛇たちに襲わせ、噛みつかせるのです。目を閉じたままメデューサと戦うのは困難です。偶然、鏡や磨き抜かれた盾のように光を反射する道具を持っていたなら、メデューサはそれを覗き込んでしまうかもしれません。そのような偶然を狙った作戦には〈運だめし〉が必要で、成功したらこの悪しき生き物は石と化し、すぐに塵へと還ってしまうでしょう。



 TRPG『Tunnels & Trolls』完全版『MONSTERS! MONSTERS!』では、ゴーゴンは、髪の毛が蛇で、人間を石に変えるメデューサは知っていますね。当たり前ながら、ゴーゴンとはそれのことです。ゴーゴンが仲間を組めるのは、生きている像と岩男だけです。そのほかのモンスターは石になってしまうでしょう。

 ゴーゴンは髪の毛が蛇の、恐ろしい顔をしたモンスターです。あまりの恐ろしさ故に、その顔を直接見たものは石と化してしまいます。ゴーゴンは自分の領域に足を踏み入れたものは容赦なく殺すか、石と化さねば満足しません。しかし、ゴーゴンはその恐ろしい顔を恥じており、なるべくなら人に見られたくないと思っています。ですから、ゴーゴンは他人の姿を認めるとすぐに隠れ、卑劣な計略で相手を倒そうとするのです。鏡に映せば、ゴーゴンの顔を見て石化されることはありませんが、ゴーゴンに鏡を突きつけてもムダなことです。



 TRPG『ソード・ワールドRPG』完全版では、メデューサは人間の女性の姿をした魔獣で、頭部からは髪の毛ではなく数十匹の蛇が生えており、その顔には人間を石化する魔力があります。主に廃墟や地下迷宮に棲んでおり、訪れた人間を石像に変えることに邪悪な喜びを見出しているのです。メデューサに出会った者は抵抗ロールに失敗するとただちに石像になってしまいます。目を閉じたり、顔を背けたりして戦えば石化は免れられますが、攻撃力及び回避力にペナルティーが課されます。またこれらの状態でメデューサに対して魔法をかけることはできません。鏡はメデューサの魔力を反射することはありません。鏡に映ったメデューサの姿を見ながら、戦うことはできます。この場合はペナルティーを軽減できます。逆に鏡をメデューサに突きつけてもまったく無効です(『SW』ではメデューサ自身を石化することはできません)。

 メデューサは頭部の蛇を使って攻撃を仕掛けます。メデューサの蛇(髪)は無数にあり、メデューサと接近戦闘を行なうものは、すべてこの蛇の攻撃にさらされます。この蛇は毒を持っています。

 たとえメデューサを殺しても、その首には魔力がしばらく残っています。切り落としたメデューサの首を袋にいれておき、戦闘のときに敵に見せて相手を石に変えるということは可能ですが、一緒にいる味方まで石にしてしまう危険があるので、注意深く扱わなくてはなりません。首の魔力はおよそ一週間で失われます。



 TRPG『ロードス島戦記RPG』では、メデューサは頭髪の代わりに数十匹の蛇が生えている女性、といった姿をしています。その女性部分の瞳も蛇のそれで、見るものを石像に変える力を宿しています。冷酷で歪んだ性格をしており、廃墟や迷宮に潜んで人間の石像を増やすことに喜びを感じています。



 TRPG『ログ・ホライズンTRPG』では、蛇目童女プチ・メデューサは頭髪の一房ごとが一匹の蛇という魔獣。蛇目魔女メデューサの幼体。青白い肌に真紅の瞳の童女の姿は一見愛らしいが、無数に蠢く頭の蛇は魔獣に相応しい異様さを見せます。その視線は強い魔力を帯びており、見つめられた相手はまるで全身が石になったかのように、身動きが取れなくなるのです。





最後に

 今回は「メドゥーサ」についてまとめました。

 ギリシャ神話のゴルゴン三姉妹の一人です。それで『D&D』『PF』の「ゴーゴン」もまとめたのですが、設定が『D&D』創作であるため、あなたの「剣と魔法のファンタジー」には『D&D』由来の(『D&D』を下敷きにした『PF』も含めて)「ゴーゴン」を出してはなりません。

「メドゥーサ」についてはギリシャ神話に由来したとおりの姿をしているTRPGがほとんどなので、あなたの「剣と魔法のファンタジー」に「メドゥーサ」を登場させても著作権には触れません。



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