708.事典篇:亜人族:ミノタウロス

 今回は「ミノタウロス」についてまとめました。

 牛頭の大きくて筋肉質というイメージですよね。

 スキュラと一緒で、ギリシャ神話ではひとりしかいないはずなのに、RPGでは群れで現れることがあります。





事典【亜人族:ミノタウロス】


 ギリシャ神話でも異彩を放つ牛頭人身の怪物です。ミノス王の息子のタウロスだから「ミノタウロス」と呼ばれます。だから、本来はこの一体だけしか存在しないはずなのです。

 しかし「剣と魔法のファンタジー」では何体も出てきます。

 見た目のインパクトが大きい点も、ファンタジー映えするのでしょう。




ミノタウロス

 ミノタウロスはギリシャ神話に登場する牛頭人身の怪物です。クレタ島のミノス王の妻パシパエの子。

 神話によるとミノス王は、後で生贄に捧げるという約束で、ポセイドンから美しい白い雄牛(一説では黄金)を得ます。しかし雄牛の美しさに夢中になった王は、ポセイドンとの約束を違え、別の雄牛を生贄として捧げ、白い雄牛は自分の物にしてしまったのです。これに激怒したポセイドンはミノス王の后パシパエに呪いをかけ、后が白い雄牛に性的な欲望を抱くように仕向けました。悩んだパシパエは名工ダイダロスに命じ、密かに雌牛の模型を作らせたのです。そして彼女は自ら模型の中へと入って雄牛に接近し、思いを遂げました。結果パシパエは牛の頭をした子ども「ミノタウロス」を産むこととなったのです。

 星、雷光を意味するアステリオスと名付けられるのですが、のちに「ミノス王の牛」を意味するミノタウロスと呼ばれるようになります。

 ミノタウロスは成長するにしたがい乱暴になり、手に負えなくなったのです。ミノス王はダイダロスに命じて迷宮を建造し、そこに彼を閉じ込めました。そしてミノタウロスの食料としてアテナイから九年ごとに七人の少年と七人の少女を送らせることとしたのです。アテナイの英雄テセウスは三度目の生贄として自ら志願し、迷宮に侵入してミノタウロスを倒しました。脱出不可能と言われた迷宮ですが、ミノス王の娘アリアドネからもらった糸玉を使うことで脱出できたのです。

 ダンテの『神曲』では「地獄篇」に登場し、地獄の第六圏である異端者の地獄においてあらゆる異端者を痛めつける役割を持ちます。



 TRPG『Dungeons & Dragons』第五版では、ミノタウロスの咆哮はすべての文明種族を震撼させる野蛮な戦いの叫びです。ミノタウロスはデーモンの祭儀によって定命の者の土地に生まれ、野蛮な征服者、狩りのために生きる肉食獣となりました。黒や茶色の毛皮は返り血で汚れ、死臭を漂わせているのです。

 ほとんどのミノタウロスは独り暮らしの肉食獣で、迷宮じみたダンジョン、曲がりくねった洞窟、原生林、あるいは迷路のような廃墟の街路や路地を徘徊しています。ミノタウロスは獲物に近づくことのできるあらゆるルートを脳内に思い描くことができるのです。

 血の臭いが、肉を引き裂く感触が、骨の折れる音が、ミノタウロスの殺戮衝動を掻き立て、思考と理性をすべて塗りつぶします。血の憤怒に駆られたミノタウロスは何であれ目に映るものに突撃し、破壊槌のごとく角で突き刺し叩き伏せ、倒れた相手を斧で真っ二つにするのです。

 迷路に迷い込んできたクリーチャーの不意を討つこと以外、ミノタウロスは戦略や戦術などほとんど気にもしません。彼らはめったに集団を作らず、権威や組織構造に敬意を払わないのです。ミノタウロスを奴隷にするのが難しいのは広く知られた事実であり、ましてこれを制御するなど不可能に近い。

 ミノタウロスは、自然に帰ることで権威の抑圧に抗おうとするカルト教団の儀式によって変化させられた人型生物の昏き子孫とされているのです。このカルトに勧誘された者は、儀礼的な動物の仮面を被って迷宮に入るという祭儀を行なうこの教団を、ドルイドの集いやトーテム崇拝と勘違いしていることが多い。

 カルト教団員たちは迷宮という閉鎖的な環境の中で己の最も原始的な衝動に身を委ね、野の獣を狩り、殺し、喰らうのです。ですが祭儀の終わり頃には、生贄は動物ではなく人間に代わります——教団の真の姿を知って脱出しようとした新規入信者が生贄となることも珍しくないのです。迷宮は血に染まった虐殺の殿堂となり、カルト教団員の凶暴な声がこだまし続ける場となりました。

 この謎めいたカルトの創始者がアビスの広大な迷宮の階層を治める「有角の魔王」ことデーモン・ロードであることは、教団の最高位の指導者しか知りません。信徒の中には、ただひたすらに力と権力を請い願う者もいます。社会秩序の鎖に縛られない自由な生き方を求めてカルトに加わる者もいるのです——そして秩序のみならず人間性からも解き放たれ、デーモン・ロード自身の凶暴な姿を真似たミノタウロスへと変えられてしまうのです。

 初めは有角の魔王の被造物として生まれたミノタウロスですが、同族同士で子を産むこともできるため、野蛮な落とし仔たちは独立した種族としてこの世界で隆盛するに至りました。



 TRPG『PATHFINDER RPG BESTIATY』では、ミノタウロスほど執念深いものはいません。文明化された種族から何世紀ものあいだ見下されてきた、神の呪いによって生まれたミノタウロスは、人が記憶に残っている最古から、彼らが実際に、あるいは想像上で受けた侮辱の報復として自分よりも弱い人型種族を狩り立てては貪り食ってきました。多くの文化では、原初のミノタウロスは復讐心が強い神や侮辱を受けた神が、人間を罰するためその姿を歪め、知性と美しさを奪い、雄牛の頭をつけて作り出したという伝説を持っているのです。しかし、現代のミノタウロスのほとんどはこのような伝説を軽蔑し、自分たちは嘲りの対象ではなく、残酷にして強きデーモン・ロードによって作り出された神の似姿であると信じています。

 伝説的なミノタウロスは、それが彼らを迷わせ混乱させるために建設されたまっとうな迷宮にせよ、都市の下水網のように偶然生み出されたものにせよ、複雑な洞窟など地下の経路のように自然にできたものにせよ、迷路に棲み着いています。ミノタウロスは生来の狡知を用い、彼らを探しにきた不注意な敵や、単にねぐらに迷い込んでしまった者たちを迷路を使って悩ませ、出口を探して空しい努力を重ねる侵入者をゆっくりと狩っていくのです。真に絶望が訪れた時にのみ、ミノタウロスは行き惑っている獲物に襲いかかります。集団を相手にする場合は、ミノタウロスはしばしばひとりを見逃して恐怖を話し広めさせ、この獣たちを殺そうと望む他の者を迷路に呼び込もうとするのです。ミノタウロスにとってこのような英雄志願者はおいしい食料なのです。

 また、ミノタウロスはより強力なモンスターや邪悪な生物に雇われていることもあり、自由に狩りと食事ができる限りは仕え続けます。通常は強力な品物や重要な場所を守る任に就くが、主の敵を狩りたてる、ある種の傭兵の場合もあるのです。

 ミノタウロスは比較的シンプルな戦い方をし、戦闘が始まれば角を使った恐ろしい突き刺しを手近なクリーチャーに振るいます。



 TRPG『ADVANCED FIGHTING FANTASY』第2版『モンスター事典――奈落の底から――』では、伝統に沿えば、良く出来た迷宮の中心部には必ずミノタウロスがいます。この危険な獣は、半分が人間で半分が雄牛という恐るべき組み合わせによる存在です。頭は毛むくじゃらで牛のようであり、頭頂部からは一対の巨大な角が湾曲しながら生えています。体は筋肉質で短い毛に覆われており、全身は砂っぽい茶色だが、ほこりと汚物にまみれています。この生き物は所持しているなら武器も使えますが、好みの戦法は頭を下げ、息を荒げながら雄牛のように突進することです。ミノタウロスは主の宝物庫の護衛として配置されることがありまする、むしろきわめて危険な迷宮心臓部の最後の罠としていることのほうが多い。



 TRPG『Tunnels & Trolls』完全版では、この種族はたくましい人間の男性または女性の胴体に牛の頭部を持っています。怒りっぽい肉食性の生き物です。聡明さには欠けますが、雄牛のように屈強なので、獰猛な戦士になれます。

 普通は単独で行動し、両刃のアックスなどの大きく重い武器をとくに好みます。皮膚には牛と同じような模様を描いたり、戦化粧を施したりしています。頑丈な鎧を身に着けることはめったにありません(皮膚が分厚いため、自然のレザー・アーマーを着ているのと同等になります)。彼らは洞窟その他の地下構造物を好んで探索し、住み着くことさえあるため、そうした場所でよく遭遇します。しかし、本来の住処は有蹄類の遠い親戚と同様、広大な草原です。基本的に単独行を好む種族です。


 TRPG『Tunnels & Trolls』完全版『MONSTERS! MONSTERS!』では、屈強な男(あるいは女)の体に牛の頭をつけたものを想像してください。肉食で、つねに怒っています。あまり賢くはありませんが、牛のように強い力を持っています。

 牛の頭に筋骨隆々とした人間の体をつけたミノタウロスは洞穴の奥に潜む、肉食の生き物です。性格はきわめて狂暴で、出会うもののほとんどを「敵」だと思って攻撃してきます。

 ミノタウロスは両刃ブロード・アックスのような両手用の斧を武器として使うことがあります。ときとしてミノタウロスはバーサークします。

【ミノタウロス(ウィルダネス種)】

 やや大柄なこの種のミノタウロスは洞穴ではなく、荒野に住んでいます。しかし、その点を除けば洞穴に住む種族と外見、性格ともほとんど変わりありません。



 TRPG『ソード・ワールドRPG』完全版では、屈強な人間の体に牛の頭を持つミノタウロスは、きわめて残忍な生き物です。肉食性、特に人間の肉が好物で、腹を減らすと外に出てきて、近くの村を襲うこともあります。そうした災厄を防ぐため、田舎の村では、若い娘をミノタウロスの生贄に捧げる儀式がしばしば行なわれています。ミノタウロスは、空腹ならば生贄をすぐに食べてしまいますが、他に食料があるなら、しばらく生かしておいて別の楽しみに使います。というのも、ミノタウロスはすべて雄なので、子孫を残すには人間の女性を利用しなければならないのです。

 ミノタウロスは主に巨大な斧を武器として用いますが、素手で戦う場合には相手を両腕で絞め殺そうとします。



 TRPG『ロードス島戦記RPG』では身長2m数十cmにも達する屈強で巨大な人間の身体に、雄牛の頭と蹄を持つモンスターです。残忍で肉食性であるため、しばしば人間を襲います。



 TRPG『クリスタニアRPG』では、頭が牛、身体が人間の魔獣。知能は低く、性格はきわめて狂暴。普段は洞窟の奥深くに棲んでいるが、食料となる人間を求めて人里に姿を現すこともあります。たいへんな怪力の持ち主で、大型の戦斧で武装していることが多い。



 TRPG『グランクレストRPG』では、牛頭人身の巨大な怪物で、オリンポスでは迷宮の番人とも呼ばれています。その性質は投影体となった今でも変わりなく、魔境に迷い込んだ者を見つけては嬲り殺しにするというのです。



 TRPG『ログ・ホライズンTRPG』では、牛頭大鬼ミノタウロスは魁偉な牛の頭部に、約4メートルの巨体を誇る巨人族の一種。赤銅色や漆黒の肌をしており、筋骨隆々な人間の上半身を持ち、下半身は牛が直立したような姿を持ちます。その体躯に相応しい巨大で無骨な槌や斧を振るうが、角を前面に構えた突進も得意とするのです。『大災害』以前から洞窟や遺跡などに出現することが多かったのです。『大災害』後では大地人の村の近郊に居座り、人身御供を差し出させていた例なども報告されています。





最後に

 今回は「亜人族:ミノタウロス」についてまとめました。

 屈強な体に牛頭という不思議な組み合わせは、ひと目で「これは剣と魔法のファンタジーだ」と読み手に思わせられます。

 元がギリシャ神話ですから、あなたの「剣と魔法のファンタジー」にも登場させることができるのです。



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