705.事典篇:亜人族:スキュラ

 今回は「スキュラ」についてまとめました。

 本来「スキュラ」はギリシャ神話に登場するひとりの女性を指しているのです。

 そこから派生したクリーチャーなので、あなたの「剣と魔法のファンタジー」に登場させても著作権には抵触しません。





事典【亜人族:スキュラ】


 スキュラは人魚の姿で、腹部に犬や蛸足などが生えている魔物とされています。

 元々はギリシャ神話に登場する美女なので、あなたの「剣と魔法のファンタジー」にスキュラを登場させても、著作権に引っかかることはありません。




スキュラ

 スキュラはギリシャ神話に登場する怪物、あるいはメガラの王女の名。

 上半身は美しい女性で、下半身は魚、腹部からは三列に並んだ歯を持つ六つの犬の前半身(または首から上)が生えた、奇怪な姿をしているとされます。六つの頭で出来た帯をしているともいわれるのです。またかつては人間であったともされています。壺絵では剣を持った姿で表されることもあるのです。

 スキュラはシケリア島に暮らす一人の乙女(またはニュムペ)でした。ひじょうに美しい彼女に対し、大勢の男性が求婚を申し込んでいました。しかし彼女は結婚や恋愛に興味がなく、つねに拒み続けていました。岸辺や砂浜を散歩したり、人目に付かない場所で水浴びしたり、海のニュムペを訪ねたりするのが好きで、ニュムペたちも彼女のことをとても気に入っていたのです。その一人ガラテイアとは特に仲がよく、いつもたくさんの人につきまとわれて困っていると話すスキュラに対してガラテイアは、かつて自分に恋したキュクロプスのペリュペーモスに、恋人アーキスを殺された話を語りました。そのくらい仲がよかったのです。

 あるとき、スキュラが隠れた場所を見つけて水に浸っていると、そこに海の神の一柱グラウコスが現れました。偶然出会ったスキュラに恋心を抱く彼に対し、突然のことに驚いた彼女は逃げ出したのです。海に面した岩山の上まで来るとそこから改めてグラウコスを眺めてみました。しかし彼の長い髪、海のように真っ青な体の色、足の代わりに生えている魚の尾などといった人間離れした姿には、やはり驚きを隠せなかったのです。

 そんな彼女に対しグラウコスは、自分は海神であり決して怪物ではないこと、元々は普通の漁師であったが、とある草を噛んでみたら突然水が恋しくなったこと、陸での生活を捨て海に潜った先で、海神たちがオケアノスとテテュスの許しを得て自分を神の仲間へ加えたこと、そして今ではプロテウスやトリトンなど、他の海神たちにも劣らない存在になったことなど、彼女の心をつなぎ止めようと必死に語りかけ、熱烈に求愛したのです。しかし、他の求婚者と同様、グラウコスもスキュラの心を射止められません。彼がさらに話を続けようとしたのも虚しく、彼女は逃げてしまったのです。

 グラウコスは落胆したものの、それでもスキュラのことをあきらめきれず、魔術と薬学に深い知識を持つキルケを訪ね、その呪文や薬草の力を使って、どうかスキュラとの恋を成就させてほしいと頼みました。しかし、相談を受けたキルケ自身がグラウコスを気に入ってしまったのです。彼女は彼に何の興味も持たない相手を求めようなどとせず、彼に対して恋している相手をこそ求めるべきであると言います。スキュラよりも自分を選ぶよう暗に勧めましたが、グラウコスは頑として聞き入れようとはしなかったのです。このことに激昂したキルケは、グラウコスへの恋心が変わらなかったため、彼に対して危害を加えるような考えは起こらず、代わりに、恋敵であるスキュラに怒りの矛先を向けたのです。

 スキュラが特に気に入っていた場所の一つに、とある小さな入江がありました。人目につかず、海から波を防げる場所なので、波が高い日や日差しがとくに強いときには、この場所を訪れては水浴びをして楽しむのでした。そこでキルケは得意の魔術と薬学の知識で毒薬を作り、これを入江の水に流してから呪文を唱えました。

 何も知らないスキュラが入江にやってきて、いつものように水に入ったのです。そして腰まで水に浸かったとき、突然彼女の腹部を凶暴な犬の群れが取り巻きました。その恐怖に彼女は怯え、その場から逃げ出そうとしますが、犬たちはまったく離れようとしません。そして彼女が自分の脚に触れようとしても肝心の脚はなく、ただ暴れる犬たちの頭があるのみでした。スキュラを取り巻いていると見えた犬の姿は、実は彼女自身の身体の一部だったのです。

 こうしてスキュラは、キルケの毒薬により、上半身は美しい姿のまま、魚の尾の下半身、六つの犬の頭と12本の犬の足を持つ姿へと変わってしまいました。

 スキュラは自分の変わり果てた姿に嘆き悲しみ、凶暴な性格へと変貌してしまったのです。これは毒薬の影響だとも、一方的な仕打ちを加えたキルケへの復讐心からだとも言われています。グラウコスはそんな彼女を見て涙を流し、彼女にそのような仕打ちをしたキルケとの関係を絶ったそうです。

 こうして彼女は近くを通りかかる船に襲いかかり、乗組員を六人ずつ食い殺す怪物となってしまったのです。

 作品によって描かれ方が異なることもあり、たとえば犬の集まりが下半身でその背中の上に女性の上半身が付いていたり、犬ではなく蛸足になっていたり、蛇の群れである、などの場合があります。



 TRPG『ソード・ワールドRPG』完全版では、スキュラは上半身は美しい女性ですが、下半身からは六本の大蛇の頭と十二本のタコの触手が生えています。水陸両棲で、地上でも自由に動き回れますが、主に水中を好みます。性格はきわめて邪悪で、水面から上半身だけを出して男を誘い、水中に引きずり込んで殺します。戦闘のときにはスキュラは六本の頭部で同時に別々の目標を攻撃できます。ただしひとつの目標に対しては1ラウンドに三回までしか攻撃できません。またスキュラは精霊魔法を使えます。



 TRPG『ロードス島戦記RPG』では上半身は若く美しい女性ですが、下半身からは六本の大蛇の首と、十二本のタコのような触手が生えています。地上も歩きまわれますが、水辺を好んで棲息しています。性格は狡猾かつ邪悪で、水面から上半身だけを出して助けを求めたり誘惑を仕掛けて人間を油断させ、水中へ引きずり込んで捕食しようとします。蛇の首にも目があり多少は周囲を認識できますが、戦闘中には美女の視覚を中心に認識するため、死角はあります。



 TRPG『クリスタニアRPG』では、上半身が人間の美女、下半身が6本の大蛇の頭と12本のタコの触手という、恐ろしい姿の魔獣。水陸両棲で、水面から上半身だけを出して男性を誘惑し、近づいてきたところを水中に引きずり込むのです。シャーマン魔法を使います。



 TRPG『グランクレストRPG』では、呪いによって、下半身が六頭の狼になってしまった女性。水地に棲み、通りがかるものを引きずり込みます。





最後に

 今回は「亜人族:スキュラ」についてまとめました。

『SW』『ロードス島』などグループSNEのTRPGに登場しますから出現が偏っています。ですが、元はギリシャ神話の登場人物なので、外見を丸々用いなければ(ギリシャ神話の姿であれば)著作権を気にする必要はありません。



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